創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(188)フォルクスワーゲンの広告(90)

製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ・シリーズ---第31弾。滅多にお目にかかれない腹部をそっくり。

「どうやって撮影?」 「腹部も珍妙---まったく!」 「funnyをVW語化」 「逆説得法=ツバメ返し」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ をお忘れなく。

2007.7.1に掲出分の再録。



フォルクスワーゲンは、腹底部も珍妙ですよ。


私たちは今、フォルクスワーゲンの下部から語りかけています。
あんまり見られた図ではありませんね。
大きな鋼板が邪魔していて残念です。さもなければ、フォルクスワーゲンのすべての仕組みをお見せできるのですが---。
でもペテンにかけたわけではありませんから。
この鋼板がVWの腹底部です。ほかの車は絶対にこうなっていません。
これがすべてものからVWの中枢部分を守っているのです。時間も含めてね。そして、VWの長命さの最大の理由の一つが、この鋼板なのです。
VWの腹底部は、あとで考えてつけ足したものではありません。これもデザインのうちなのです。車は腹底部を密封され、腹底部は車に密封されています。
だから、VWは本当に気密なのです。水に浮くフォルクスワーゲンについてのうわさも、ただのうわさではありません。
VWの珍妙な上部と珍妙な腹底部には、共通点があります。両者ともフォルクスワーゲンがその真価を発揮できるようにしているのです。
この二つを変えてしまうのは簡単でしょう。
けれども、私たちはわが道を行くつもりです。




Even the bottom of a Volkswagen looks funny.


We are speaking to you under-neath a Volkswagen.
Not much to look at, is there?
Too bad that big seet of steel is in the way. Otherwise, you could see all of the Volkswagen's works.
But don't feel cheated.
That seet of steel is the VW's bottom. No other car has anything quite like it.
It protects the VW's vital parts against everything. Including time. And it's one of the big reasons why VW'slast so long.
The VW's bottom was no afterthought. It's a part of design. The car is sealed to the bottom and the bottom is sealed to the car.
Which is why a VW is practically air-tight. And why some of the rumors about floating Volkswagens aren't just rumors.
The VW's funny-looking top and funny-looking bottom have one thing common: they both work to make the Volkswagenas good as it is.
It would be easy enough to change them.
But we think we'll leave bad enough alone.


このブログから、とりあえず、
「ビートルの広告を選んで、絵本として新書化したい」
こんなお話を、某出版社からいただいています。
すでに72冊もの編著書をもち、「本は---もう」とバチあたりなことをおもっていましたが、「では、これが最後---」とふんぎったのは、VWの広告の文体です。

バーンバックさんが、主語・述語・目的語と表現された、短い、そして未亡人(文節の末尾の空白)を多くした文体---これこそ、ウェブ時代の文体とおもっていたので、車の絵本というより、ブログをやっている人のために文体見本として意味がありそうと---。

11月に書店に並ぶように、スケジュールしています。その節はよろしく。