創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(158)『コピーライターの歴史』(番外−5-7)

かつて『タイム』誌が、ダヴィッド・オグルビー氏を評して「今日の広告業界で、もっとも人気のある魔術師」と書いていた。イングランドのウェスト・ホーズレーで1911年に生まれ、オクスフォード大学で教育を受けた氏は、パリの超高級ホテル---マジェスティークの調理場で見習いコック、ストーブのセールス、移民農民などを経て、プリンストンにあるジョージ・ギャラップ博士のオーディエンス調査研究所の副部長となった。第2次大戦中は英国防衛協力機関のスタッフとして働き、大戦後1948年にオグルビー・ベンソン&メイサーとして知られる広告代理店を設立。氏の代理店の理念と発展の歴史については、その著書『ある広告人の告白』(ダビッド社 1965年刊 西尾・松岡共訳)にくわしい。これは、同社で配布されていた広告制作ルールである。


>>『コピーライターの歴史』目次
『調査から導き出されたコピーライター、AD、TVプロデューサーのための97の心得』(その3)
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ポスター

(67) サビニャックが呼ぶところの「ビジュアル・スキャンダル」で、ポスターを力強くつくれ。
(68) ポスターは、その内容のすぐれたアイデアをもっていないかぎり失敗する。
(69) ポスターは、5秒以内に売るべきだ。
(70) ポスターといえども、なにかの約束(プロミス)を伝えるべきだ。
(71) 写実的な、文学的なアートワークを使うこと。
(72) ポスターには、ヒューマンな、エモーショナルな内容を与えよ。
(73) 3つ以上の要素をもりこんではいけない。
(74) 6語以上書いてはいけない。
(75) 紙の大きさの17倍離れたところからでも読めるように、ロア・ケースのサンセリフ活字を使え。
(76) 重要な要素をきわだたせよ。
(77) 最大に対照(コントラスト)をもたらす、強い、純色を使え。ポスター
(67) サビニャックが呼ぶところの「ビジュアル・スキャンダル」で、ポスターを力強くつくれ。
(68) ポスターは、その内容のすぐれたアイデアをもっていないかぎり失敗する。
(69) ポスターは、5秒以内に売るべきだ。
(70) ポスターといえども、なにかの約束(プロミス)を伝えるべきだ。
(71) 写実的な、文学的なアートワークを使うこと。
(72) ポスターには、ヒューマンな、エモーショナルな内容を与えよ。
(73) 3つ以上の要素をもりこんではいけない。
(74) 6語以上書いてはいけない。
(75) 紙の大きさの17倍離れたところからでも読めるように、ロア・ケースのサンセリフ活字を使え。
(76) 重要な要素をきわだたせよ。
(77) 最大に対照(コントラスト)をもたらす、強い、純色を使え。


TVコマーシャル

(78) 番組の視聴率を2倍にするよりも、コマーシャルの販売力を2倍にするほうが、やさしい。
(79) 画面にストーリーを述べよ。なにをいうかよりも、なにを見せるかのほうが、より重要である。画面で見せていないもののことをいってはいけない。
(80) 音声を消してコマーシャルを流してみよ。音声がなければ売れないというのは、コマーシャルが弱いからだ。言葉と絵しは、たがいに協力しあってマーチを奏でるべきだ。言葉は、絵が表現しているものを述べるべきだ。また、タイトルにだした言葉は、話される言葉と同一であるべきだ。
(81) よいコマーシャルの中には、基(キー)になるアイデアが力強く表現されている。逆に、最低のコマーシャルは、アイデアが弱いか、実演(デモンストレーション)がないかだ。
(82) よいコマーシャルは、すぐれたアイデアである一つか二つのアイデアから成り立っている。混乱した小さなアイデアのごたまぜではない。すぐれたコマーシャルが、委員会(コミッティ)からはクリエイトされないわけはここにある。よいコマーシャルは、少ない場面変化でスムースである。
(83) ほとんどのコマーシャルは、もっとも説得力があり、記憶される方法で、その製品が消費者に与える約束(プロミス)を伝えることにある。約束を少なくとも2度ずつ、すべてのコマーシャルでのべよ。
(84) 平均して、消費者は1年に10,000のコマーシャルを見ている。諸君のコマーシャルで広告している製品の名前を消費者が記憶できるようにはっきりせよ。パッケージを大きく、はっきりと示せ。できるだけ多く、商品名をくりかえせ。少なくとも一つのタイトルに一つの商品名を入れよ。
(85) よいコマーシャルは、簡潔な約束(プロミス)によって成り立っており、それが強力に実演されている。しかし、その約束と実演があまりくどく行われると、退屈で、不消化になる。ことばの中に見込み客を溺れさせてはいけない。
(86) 商品名そのみのを、コマーシャルの主人公にせよ。
(87) 印刷広告では、諸君はまず見込み客の注意をひきつけることからスタートする。しかしTVでは、見込み客はすでに画面を見ている。だから、諸君にとっての問題は、見込み客の注意をひくことではなく、彼らにくっついて離れないようにすることだ。
(88) 最初の1コマから販売を開始せよ。「わがスポンサーから親愛なるコマーシャルを---」などという前置きで見込み客に警戒心を起こさせるな。諸君のコマーシャルを、見当ちがいな類推や、じゃまな技巧を凝らしてスタートさせてはいけない。
(89) ギャラップ博士の調査によると、まず、消費者の悩みをとりあげ、それをその製品によって解決し、さらにその優秀さを証明したコマーシャルは、ただ製品のことをお説教したコマーシャルよりも4倍もの売り上げが大きかったといわれる。
(90) ギャラップ博士は、またつぎのように報告している。ニュース性をもったコマーシャルは、ふつうのコーシャルにくらべて、より効果的である。
(91) すべての製品は、いつもおなじコマーシャルのテクニックでよいわけにはいかない。ときには、なんのニュースもないことがあるから、つねに消費者の悩みを解決するやり方を用いることはできない。場面によっては情感ムードに頼らなければならない。しかし、いずれの場合でも、高い内容をもつコマーシャルは、効果的なものだ。
(92) ヒューマンと親密にすることによって人びとを情感的な雰囲気の中にひきこめ。人びとは行儀の悪いセールスマンからは買わない。いんちきや、ウソからは買わない。彼らの正直さにつけこむことな。信頼されるようにやれ。
(93) 映画まのスクリーンは40フィートだが、TVスクリーンはわずかに2フィート。ロング・ショットより、クローズ・アップを用いよ。諸君のもっている小さなスクリーンに強烈なインパクトを与えなければならない。
(94) 諸君には人びとに製品を買わせることはできない。ただ買おうという関心をおこさせることができるだけだ。ギャラップ博士は報告している。たんに製品についてアナウンスする「お説教」コマーシャルは、視聴者を退屈させるだけだ、と。
(95) TVコマーシャルは、楽しますためにあるのではない。売るためのものだ。売るということは、容易ならぬピジネスだ。よきセールスマンは歌わない。話される言葉は、歌われる言葉よりも理解される。話される言葉は、歌われる言葉よりもたしから楽しくない。しかし説得的だ。説得するコマーシャルは歌わない。
(96) 消費者は平均してた1週間に200以上、1ヶ月に900以上、1年まに10,000以上のコマーシャルを見ている。なんとかしてコマーシャルに独自のタッチをもたせなければならない。視聴者の心にくいこんで離れないつなぎをもたせなければならない。しかし、そのつなぎは、あなたの製品の約束(プロミス)としっかり結びついたものでなければならない。
(97) コマーシャルを書くときは、つねに心せよ---それが、諸君の子どもや、細釧、そして諸君の良心に見られても好ましいものであるかことを。

(97ヶ条 おわり)(TCC編・訳『5人の広告作家』より この項、chuukyuu担当)