創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(496)ライターは安易に妥協しては駄目 ジョージ・グリビン(3)


人には、だれだって、クセがあります。人に迷惑をおよぼさないクセ、嫌われるクセ。このブログに関してのぼくのクセの一つは、[・]でなく、<・>でなければ、見た目に間が抜けて見えると信じていること。つまり、半角の中グロでなければ日本語として美しくないと。だれも気がつきはしないだろうけど、自分が許せない。困ったクセですね。余計な手間ですね。


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 イデアを考えることについて、グリビンさん。アイデアを生む技術について多くの本が書かれ、いろいろなことがいわれていますが、これについてなにかご意見がおありですか? 
広告コピーの問題と取りくむときにお使いになるはっきりした技術をおもちですか?


グリビン 実際にコピーを書いていたころ、作法とまではいきませんでしたが、私にはある習慣がありました。


ひとつは、ライターは製品についていろいろなことを知るべきだと思います……広告している製品の物理的な特長だけでなく……それを買っているのはどんな人か、どんな動機で買っているのか、などということを知ることです。
見込み客を知り、製品を知ること……しかもどちらもかなり深く知ることです。
それからあとは、べつにきまったことはなかったと思います。


私はすぐれたアート・マンといっしょになって、どんな絵がほしいのか、どんなシチュエーションかを考えたものです。コピーから独立した絵ではなく、すっかりとけ合っていたのです。

何年もまえにアロー・シャツのために私か書いたひじょうに簡単な広告を例にひいて、この点をはっきりさせることができると思います。
まったく普通の青年……衣服の広告に使われるひじょうにいきな様子のモデルではなく、あなたや私のような人間がシャツを売る対象なのだ、と私は思ったのです。
この点を伝えることができれば、いい広告になるだろうと思いました。
それで私は「ぼくでもアロー・シャツを着ればすてきに見える」というヘッドラインをつくりました。
そして、ごく普通のスタイルの人間をだしたらいいと思いました。
さらに、ちょっと戯画化したらいいと。
アンソニイも、うん、いいアイデアだ、と同意しました。
でも彼のほうが優秀でした。
その青年はノーマン・ロックウェル・タイプにして顔にそばかすをつけたらどうだ、といったのです。
親近感はありますが、漫画ではありません。


広告のアイデアがきまり、絵かきまり、ヘッドラインがきまれば、すっかりひとつになるわけです。
これが広告をつくる方法だと思います。
ばらばらにしてはいけません。
ところで、広告ができたら、こんどは分析にとりかかります。
そうすれば改善できる場合がよくあります。
その作法についてはお話しできませんが、それがすんだあとの作法なら確信があります。
ヘッドラインはコピーの最初のセンテンスを読みたくさせるか? 
コピーの最初のセンテンスは、つぎのセンテンスを読みたくさせるか?
というぐあいに、コピー全体を調べるのです。
読者が読むのをやめようと思うのは、最後の一語まできたときでなければいけません。

お気に入りの作品


ジョージ・グリビンによって書かれた広告の中でも、自分で気に入っているもの。
彼の信条は、
「広告をつくりあげる作法に関してはお話しできませんが、それがすんだあとの作法なら確信があります。
ヘッドラインはコピーの最初のセンテンスを読みたくさせるか?
コピーの最初のセンテンスは、つぎのセンテンスを読みたくさせるか? 
という具合に、コピー全体を調ぺるのです。
読者が読むのをやめようと思うのは、最後の一語まできたときでなければいけません」


 コピーライターとしてのあなたが影響を受けたのはなんですか? 
だれですか?


グリビン おおぜいの、きわめてすぐれた広告人の影響を受けたと思います。
ロイ・ホイッチャー、レイモンド・ルビカム、シド・ウォード、テッドパ・トリック……そのほか多くの人たちです。


 その人たちから、なにを学ばれたのですか?


グリビン 彼らを見つめているということではありませんでした。
Y&Rにはつねにコピー・スーパービジョンというひとつのシステムがあります。
スーパバイザーの承認を得ずに社外にでるコピーは、ひとつもありません。
あなたの子どもをもっとも正しく判断するのがあなただとは私たちは思わないのです。


問 あなたが最高責任者だとしたら?


グリビン 最高責任者ではない人のところへもっていって、見てもらいます。
最高責任者ではなくても、判断力のすぐれた人はたくさんいます。


 あなたに影響を与える人びとは、あなたが説明できる形で影響を与えるのですか? 
それとも、いつのまにか影響を受けてしまうのですか?


グリビン いい例はレイモンド・ルビカムです。
彼はだれよりもすぐれていましたからね。
社員全部が知っていたことです。
レイモンド・ルビカムよりすぐれていると自負する人間は、社内にはいませんでした。


 コピーライターとしてですか?


グリビン ライターとして、広告人として。
レイといっしょに働いた人なら、彼が想像力に富んでいて、驚くほど視野が広いということだけでなく、ものすごく徹底していることがわかったはずです。


ある広告についてルビカムと討論して、彼がOKをだすまでに、少ないときでも2〜3回、多いときには15〜20回も書きなおしたものです。


いちど彼とシリーズ広告をつくったことを思いだします。
それは第一に新聞にすぐれていること、つぎに雑誌にすぐれていること、そして最後にラジオ・ネットワークにすぐれていることを指摘する広告でした(テレビの現われる以前のことです)
3回のシリーズ広告でした。
私はまず新聞のための広告を書きました。



 企業広告だったのですか? (訳・秦 順士




明日に、つづく。