創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(122)『繁栄を確約する広告代理店DDB』への推薦文

この著作をまとめたのは、1966年10月1日ですから、44年前です。『ブレーン』誌への1年間ほどの連載を補筆したものです。自分でも自信があったのでしよう、いろんな方に献本しました。礼状もいただきました。
その中から、お3方のものを選んで、誠文堂新光社が自社広告に使わせていただいるのを、つい、最近、当時の『アイデア』誌のページから見つけました。とりわけ、劇作家・飯沢 匡(ただす)さんの文章---業界の外の方からこんなふうに価値づけていただけたのがうれしかった。遊び仲間だった通産政務次官だった宇野宗佑さんは「通産省(当時)の上層部に配るから10冊ほどもってこい」と。亀倉雄策先生は、かつて勤めていた会社の上司でした。



推薦文を掲げた自社広告




驚くべき本
作家 飯沢匡


最近これくらい同感をもって読んだ本は珍しい。DDBの社長バーンバック氏の広告論は私の広告に対する不信を忽ち一掃した。彼の説くクリエイティビティという言葉は日本では一番ないがしろにされている。
私が日本の広告に絶望しかかっていたのは実にこのクリエイティビティのあるものにお目にかかることがあまりに少ないからだ。


バーンバック氏は、直観を重視する。広告は理論ではなくアートだと繰返えす。この場合、アートとは芸術ではなくむしろ表現の能力であろう。それが如何なるものかはこの広告会社の今までの数多くの素晴らしい作品を見る他ないが、西尾氏は氏独特の執拗さでよく博捜して驚くべき本にまとめた。


多分、本国のアメリカでも、これだけDDBを精細に調べ上げ、その全貌を浮かびあがらせた労作は見当らないだろう。


日本の広告に最も欠けていた一つのアナともいうべき方向を示唆してやまぬもので広告関係者はもちろん、すくなくとも近代文明に関心のある人は十分に興味の持てる懇切で、そして理解しやすい良書である。




はげしさの全貌
グラフィック・デザイナー 亀倉雄策


DDBの作品の立派さは今さら私が申上げる必要ない。
私はDDBの本当の魅力は作品よりも、作品を作る以前にあると思っている。


優れた創作活動をするためにDDBはきびしい思想を持っている。
この思想を「創造哲学」とよべるのはDDBだけだと思う。
私はDDBの広告哲学に心から感心し、尊敬している。


広告作家が「創造性」を守るための戦いは大変はげしいものだ。
この本はそのはげしさの全貌を見せてくれる。




広告の経済化を図る近道
通産政務次官 宇野宗佑


西尾君は数少ないコピーライタの中でもとくに稀少価値をもった人である。
そのくせ普段はナニも考えていなそうな顔をしていて、さながら保護色動物のように滅多と存在をしらせない。
が、時として人は、素晴らしい色彩に輝く彼を発見して驚くことがある。その時の彼は、たしかにハッとするような警戒色動物に変じている。


こんどの著書もその例だ。
西尾君はDDB社の本態をハッキリ知らせてくれた。


広告は説得である。説得は科学ではなくてアートである


大統領選挙のとき、ケネディさんもこの主張を貫くDDB社を始めフルに活用しようとしたゆえんがうなづける。


ひろく経営者が一読されるよう望んでやまない。
それが広告の経済化を図る近道と思うからである。