創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(193)大もの---ジョージ・ロイス氏(25)

Great art director Mr.George Lois

ジョージ・ロイスへの道(5)

ジョージ・ロイス氏は、1978年、第57回目のニューヨーク・アートディレクターズ・クラブから「名誉の殿堂入り」の指名を受けた。この制度は始まって7年目で、翌年がヘルムート・クローン氏、1年置いてウィリアム・トウビン氏、次の年が写真家のリチャード・アヴェドン氏、さらに3年後がレン・シローイッツ氏だから、いかに早かったかわかる。
指名された年の『ニョーヨークADC年鑑』に、表題の文章が載った。大要を数回にわたって紹介している。

野心満々のギリシア系の青年、サドラー&ヘネシー社が主要アカウント(得意先)である薬品の広告だけでは飽き足らなくかった。 ロイスは一般消費者へ語りかけたかったのである。1年後、彼はドイル・デー・バーンバック社でボブ・ゲイジに会い、採用が決まった。


chuukyuu注;ロイス氏がぼくに語ったこと---
グレイ広告代理店から離れて、バーンバックDDBを設立した1949年、アートディレクターとして当時まだ青年だったボブ・ゲイジを選んだことが成功の基だったんだよ。仲良しのポール・ランドではなくてね。
ポール・ランドからは高校時代に影響を受けた。彼は広告界にある貢献をしたからね。彼がつくった広告を振り返ってみてご覧。たいした広告はつくってないよ。でも、そんなことは問題じゃないだ。彼は、広告に対するアティチュード(取り組み方)を育てあげたんだ。彼は、アートディレクターというものに対して人びとの目をさましたんだから。
ぼくがポール・ランドと最初に会ったときは、少年がジョー・ディマジオを見るように、彼を見上げて握手しながら手がふるえたものだった。)
参考
2007年2月23日[DDBの誕生---選ばれたのは、ゲイジだった]
2007年2月21日[DDBの誕生---考える友人---ポール・ランド]


ビル・バーンバックの創造的な天国に1年間在籍していたあいだにロイスは、ニューヨーク・アートディレクターズ・クラブでの例年の審査会で、3個の金メダルを獲得している。フォルクスワーゲン、ケムストランド・ナイロン、グッドマン社のマツォスがそれである。
彼の自信たっぷりの信念にしたがっての叫び声が、DDBの廊下にひびきわたるのはしょっちゅうだった。それがクライマックスに達したのは、マツォスのポスターをめぐってグッドマン社へのりこみ、「あなたはマツォスを作りなさい。ぼくは広告を作る!」と叫んだときであろう。

1960年---28歳、ロイスはバーンバックの許を、コピーライターのジュリアン・ケーニグとともに飛びだし、パパート・ケーニッグ・ロイス(P.K.L)社の共同設立者になった。 DDBはその時までにポラロイド・ランド・カメラ、フォルクスワーゲン、ケムストランド・ナイロン、その他の質のいい広告主のための広告代理店となっており、最初の「クリエイティブ・エージェンシー」として、DDBはマディソン街では、経営面でもすでにしっかりとあゆんでいた。ロイスがDDBを去ってPKLを設立・始動させるや、彼らが直面したのは頑固な懐疑の石垣だった。1960年当時のマディソン街での一般通念は、米国で「創造的な」広告代理店といえばDDBだけを指していたからである。ロイスたちは、まず、その通念に挑戦しなければならなかった。

DDBによるケムストランド・ナイロン・ストッキングの広告
『ニューヨーカー』誌1958年3月22日号より

いまや、脚こそファッションの総仕上げ
脚、見せないで
ショーじゃ、ないのよ


20世紀の潮流! スカートはどんどん短くなってきてます、視線がぜんぶ脚に集まります! あなた自身を演出してますか? ストッキングを変えて自分の魅力を高め、世界を幻惑しましょう。 あなたの洋服を引き立てる色のストッキングをはきましょう。ディテールをちょぴり外す。時と場所に合わせてはきかえる…ダンス向きのとか、昼間用のメッシュとか。 スマートに選んで、あなたの脚がもっともすてきに映るファッション・ショーを演じましょう。ナイロン・ストッキング! 長年にわたる開発の結果のこの「素材」こそ、すばらしい普及をみた唯一の製品。一貫生産プラントで生まれます、研究組織も充実。産業界でもとりわけビチビチしている企業---ケムストランド社。

『ニューヨーカー』誌1958年9月6日号より

ハチャメチャお祭り
何色をはいてます? ナイロン・カラー・ストッキング!  パッチョグーからパサディナまであらゆる土地で! カラー・ストッキングは幻惑の色。女性として生き方を充実させます。踊るときも、デートのときも、ショッピング・センターでカートを押してるときでさえも。着ているものにあわせてコーディネイトさせましよう。あなたの脚をもっとも魅力的に演出します。なぜ? 長年にわたる開発の結果のこの「素材」こそ、すばらしい普及をみた唯一の製品。一貫生産プラントで生まれます、研究組織も充実。産業界でもとりわけビチビチしている企業---ケムストランド社。


続く >>