創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(51)VWビートルの広告(24)

もっとも信じられやすい広告は、テストモニアル(推薦広告)といわれてきました。しかし、このごろでは、人生経験の薄そうな若いタレントがTV−CMに出るので、「彼(彼女)は、いくら貰ってやってんだろう?」といった会話が、食卓をにぎわせています。

「ロバはいつまでもバカではない」という格言もありますからね。

これは、金を貰って推奨しているんじゃない---という感じがはっきりしているテストモニアル例です。
VWビートルは、よほどのことがないかぎり、カラー広告はしません。ここでは、カラー写真でいかにも正直者そうなリアリティを醸しだしています。


「ロバは死んだらおしまい、つぶしがききませんでのう」


3年前、ミズーリ州ドラに住むヒンズリー家では、ある決心をするのに迷っていました。
新しいロバを買うべきか。
中古のかぶと虫に出費すべきか。
一家は両者の可能性を比較検討しました。
第一の問題---地元オサーク丘陵地等のきびしい冬です。温血動物のロバにはきつい。しかし空冷式のVWにはさほどきつくない。
次---この競争者同士の食習慣。まぐさ対ガソリン。
ヒンズリー氏はいいました。「私は1ドルのガソリンで130km以上の距離を走り、はるかに速く目的地に着いた」
さらに、一家の山小屋へ行く道の問題。
荷車を引くロバや、従来の自動車では、泥道に足をとられ、着くまでに何時間もかかっていたのです。
またロバには雨露をしのぐ小屋が要りますが、かぶと虫には不要。<かぶと虫は1日中外に出しっぱなしにしておいても平気、色も全然さめません>
最後に、継続の点も考えねはなりません。ロバは倒れたらそれでおしまい、残念だがつぶしがきかない。
しかしかぶと虫は、万一倒れても大丈夫。ヒンズリー家にはわずか7リッターの距離のところにフォルクスワーゲンのディーラーがあるのですから。




"It was the only thing to do after the mule died."


Three years back, the Hinsleys of Dora, Missouri, had a tough decision to make.
To buy a new mule.
Or invest in a used bug.
They weighed the two possibililies.
First there was the problem of the bitter Ozark winters. Tough on a warmblooded mule. Not so tough on on air-cooled VW.
Then, what about the eating habits of the two contenders? Hay vs. gasoline.
As Mr. Hinsley puis it: "I get over eighty miles out of a dollar's worth of gas and I gel where I want to go a lot quicker."
Then there's the road leading to their cobin. Many a mule pulling a wogan and many a conventional automobile has spent many an hour stuck in the mud.
As for shelter, a mule needs a barn. A bug doesn't. "It jusl sets out there all day and the point job looks neor as good as the day we got it"
Finally, there was maintenance 10 think obout. When a mule breaks down, there's only one thing thing to do: Shoot it.
But if and when their bug breaks down, the Hinsleys have a Volkswagen dealer only two gollons away.