創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[6分間の道草](126)ジャック・ディロン氏とのインタヴュ(6)

     (DDB,副社長兼コピー・スーパバイザー)

DDBの雰囲気が意味するもの

chuukyuu「いまおっしゃったDDBの雰囲気を、ディロンさんはどうお考えですか?」
ディロン「このDDBの雰囲気を若いコピーライターやアートディレクターは気づいていても、本当にはどういう意味を持っているか知らない人が多いんじゃないでしょうか。

多くの広告代理店では大っぴらに、あるいは巧妙なすりかえでクリエイティブ・ワークがアカウント・エグゼクティブ(得意先担当責任者)の言いなりになっています。これはアカウント・エグゼクティブ(AE)というのが金の根拠であるクライアントと直接交渉しているのですから、当然な話なのです。
たとえば、AEが『こんなの、クライアントじゃあ買ってくれない』とか言ったとしますと、クリエイティブ部門の人間は彼と議論したり、説得したりするなんてことはとうていできないのです。というのは、AEは経営陣に直属していて特権というものを認められているからなのです。

ところがDDBでは、『こんなの、クライアントじゃあ買ってくれない』とか『望まない』といったようなことはめったに口にしません。そういったことが口にされる時は、広告の内容についての場合でなく、マーケティング条件などといったクリエイティブな面とは何ら関係のない場合しかありません。
たとえば、私たちがアメリカン航空の安い料金を広告に使おうと言った場合など、AEの気に入らなくても、彼には、最終的なクリエイティブな面に口を入れることはできません。最終的にクリエイティブな面の決定を下すのは、バーンバック会長です。その前にクリエイティブ・ディレクターであり、現在アメリカン航空のアート・スーパバイザーでもあるボブ・ゲイジの手を経ます。
ここがDDBがほかの多くの広告代理店と違う主な点でしょう。

でも、多くの広告代理店とは言えても、すべての広告代理店とは言えません。というのはクリエイティブ・ワークの決定がアカウント関係者ではなくクリエイティブ部門の人によってなされている、とてもクリエイティブな広告代理店が今日では少なからずありますからね。

たしかに、DDBのクライアントでもDDBがつくった広告にボツを出すこともあります。そういう場合には、私たちは引き返して他のをつくりにかかります。
でも、自分たちのつくったものがいいと信じている場合には、アカウント部門の人がそのためにクライアントと戦ってくれますよ。それがこの広告代理店でのアカウント・マンの仕事なのです。
それと、多くの広告代理店との違うもう一つの点は、もしクライアントが私たちのつくった広告を気に入らない場合、彼らはその理由をいってくれますから、私たちは引き返して、他のをつくる算段にかかります。決して、こうしろああしろなどとは言いませんよ。

他の広告代理店から来たライターやアートディレクターにとって、こういったことは救いになるでしょうね。いままでの広告代理店と比較することができますからね。

私たちは大学出たてとか、これまで広告代理店で働いたことがない人とかライティングやアート畑にいたことがない人をよく採用しますが、そういう人たちにはDDBはよそと違うということなどわかりませんからね。DDBが他の広告代理店と同じだなどと思っていて、よそに移ったら一体何がどうなっているのやらキョトンとしてしまうこともあるでしょう」

ファン・ジェット(のち独自のネーミングのアストロ・ジェットと改称)キャンペーンで他社と比較


What's the secore on fan-jet?
ファン・ジェットの所有機数は?
アメリカン航空のファン・ジェットのお話】
このごろでは、ファン・ジェットのことがかなり話題ににのぼるようです。別に驚きはしませんが。
ファン・ジェットは、普通のジェットより力が30%増しなのです。
より早く離陸し、より早く上昇します。
(ファン・ジェットは普通のジェットの2倍の空気をとり、2倍の力で機体を推進させます)。
ファン・ジェットのことで、も一つ。アメリカン航空ではわざわざファン・ジェットと指定なさらなくていいのです。
全米に24ある航空会社で、全機ファン・ジェットにしているのは、2社だけです。
1社はウェスタン。
もう1社がアメリカン(わが社は、ファン・ジェットをアストロ・ジェットと呼んでいます)。
上の図は、3大航空会社のファン・ジェットの所有機数を示しています。
これを見ていただけば、どの航空会社にすれば、いつもファン・ジェットで飛べるかおわかりになりますね。
(図の注:左=ユナイテッド、中=TWA、右=アメリカン)

ジャック・ディロン氏とのインタビュー
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