(10)オーバックスの広告(7)
出たぱかり、茂木健一郎さん『脳と仮想 (新潮文庫)』(新潮文庫)は、「サンタクロースはほんとうにいるの?」と問う、5歳くらいの幼女の言葉から書き始められている。
つづいて、心は、1リットルほどしかない脳細胞の、1千億以上もあるニューロン(神経細胞)の働きで、数値化できないものと説く。そして、仮想論が展開される。
広告は、個人個人の心の仮想に訴えるアートだと思った。
で、ぼくは本から離れて、追憶の世界へ。
「トナカイが飛べるなんて証拠はないんだ。だいたい、1人の人間が1夜のうちに世界中の煙突を回るなんて話、バカげていると思うな」
とうそぶく賢げなお兄ちゃんのそばで、
「そうさ。お兄ちゃんのいうとおり」
って幼いなりのしたり顔でこっちを見ている弟。
オーバックの広告のコピーライターは、40年前に、タネあかし。
「いいえ、サンタはほんとうにいますよ。イヴのうんと前から、あなたたちへのプレゼントをオーバックスへ預けてます。
イブにはとても回りきれないから、お父さん・お母さんに手伝ってもらい、あなたたちのところへ届けるのです---」
茂木さんも思いもしなかったタネあかし。
コピーライターは、これぐらいのユーモア心を持ちたい。