創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[6分間の道草](906)ベスト・セレクション(96)

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今の★数累計です。

マンハッタンの下町のオーバックス(衣料品中心の廉価が売り物のデパート)の新聞広告
(オーバックスはDDBの創業以来のクライアント)


1958年某月某日……モノクロ写真の修整技術が一般に知られていなかった時期であったので、
バーンバック夫人が「どうやって猫にホルダーをくわえさせたの?」と不思議がったらしい。
それほど、見手を驚嘆させ、バーンバックさんを語るときにはかならず引きあいに出される。


ジョーンの秘密がわかりましてよ。


彼女の話すのをお聞きになったら、あなただってきっと、この人ったら名士録に載るほどの人だなってお思いになってよ。
でも、私、彼女の秘密をつかみましたことよ。ご主人が銀行家だろう……ですって? とんでもございません。
銀行口座すらありませんわ。それに彼女の住んでいるあの邸宅だって抵当に入ってるのよ! 想像できて?
それなのにあんなにたくさんの衣装! ええ、もちろん、彼女は着こなし上手ですわ。
でも、ほんとうのところ、ミンクのストールやパリ製のスーツや、あんなにたくさんの衣装が、ご主人の収入で買えるとお思いになれる? 
そこなの、私の発見は---ジェーンを尾行しましたのよ、そしたら彼女、オーバックスから出てきましたわ!


C/W ビル・バーンバック ジュティ・プロタス Bii Bernbach Judy Protas
A/D ボブ・ゲイジ Bob Gage
Foto


この広告でオーバックスの名は一挙に、ニューヨーク市およびその商圏にとどろいたと。
それに気をよくして、つづいて犬の写真が使われた。



ぼくは、オーバックスが憎い。


ほんとうのはなし、ぼくはもううんざりしているんだ! オーバックス、オーバックス、オーバックスって、
畜生! 彼女にはもうぼくのための時間なんかないんだ。ほくが公園を散歩したいっていうと、「ご免
なさい、坊や、ママはオーバックスにすてきな帽子を買いに行かなくっちゃいけないのよ!」 ぼくが鎖に
つながれている友だちに会いたくって仕方がないってせがむと「今日じゃなくね、いい子。ママオーバック
スへ急がなくっちゃならないの、みんながつま先のとんがった靴を買ってるのよ!」木のぼりしたいっていう
と」「待ってね。いい子ちゃん。オーバックスにとってもすてきなドレスが出ているのよ。とにかくいそ
いで行かなくっちゃ!」 きっとママは節約できたお金の分だけぼくに骨を買ってきてくれるんだ。骨です
よ……愛情に飢えてるってのに。お分かりになりますか、これが犬にとってどのような人生であるか!
ぼくの結論をいいます、オーバックスは猫の発明品です。


C/W ポーラ・グリーン Paula Green
A/D ボブ・ゲイジ Bob Gage
Foto