(726)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(16)
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坂本 登さん訳『科学的広告法』(1966.10.05 誠文堂新光社)より
クロード・ホプキンズの名言(10)
第13章 サンプル(試供品)の効用――から
「製品は、それ自体が最良のセールスマンでなければならない」
「製品だけでなく、製品に付随する印象とか雰囲気といったものもそう
である。その限りにおいて、サンプルはきわめて重要な存在となる」
「経費がかかろうとも、サンプリング(試供品提供)は一番安上がりの
販売方法となるのが普通である。セールスマンが、わざわざサンプル・
ケースをさげて家庭を訪問する必要もない」
「サンプリングは、食品や医薬品のように、小物商品だけに限ったもの
ではない。やり方しだいではどんな製品にも適用できる」
「サンプルは、多くの貴重な役目を果たしてくれる。広告に「無料」と
いう魅惑的な言葉を使わしてくれるのもサンプルで、これによって読者
をふやすことができる」
「無料提供というと、たいていの人は、食指を動かす。テストの結果は、
約5〜6倍は読者をふやすということになっている」
「サンプルは、行動を起こさせる。諸君の広告を読んだ消費者はまだ買
ってみようという段階までには動かされていないかもしれないが、諸君
の提供する製品についてもっと詳しいことを知ろうという用意はあるだ
ろう」
「読者はクーポンを切り抜き、あとでこれを郵送するなり、小売店に提
示する。このクーポンが広告に刷り込んでなかったとしたら、彼は間も
なく、いま読んだ広告を忘れてしまうだろう」
「クーポンによって、製品に興味を覚えた見込客の姓名と住所がわかる。
この見込客リストをもとにして、製品を利用した働きかけに着手するこ
とができる」
「サンプルの効果を高めるもう一つの方法は、広告にカギ(Key)を入れ
ることである。サンプル請求のクーポンの数は、諸君がかり立てた読者
の反響率である。そこでヘッドライン、企画、方法などについて、いく
つかの広告を互いに比較検討してみるのである」
「どんな業種でも、こうすることによって著しく経費が節約できる。な
ぜかといえば、どんなコピーが最もアピールするかは、いかに聡明かつ
経験豊かな人間でも予言できないからである」
「もしこのようなカギをつけなかったとすると、戻ってきたクーポンは
軽く経費を2倍にはね上げてしまうだろう。全く同じ製品の広告で、カ
ギをつけなかったほうのコストが、カギをつけたほうの10倍になったと
いう例もある。カギをつけると正確なチェックができ、何倍もの経費節
約になって、サンプルにカネをかけても引き合うことになる」
「広告主の中には、一文を惜しんで多くを失うものがたくさんいる」
「サンプルに定価を入れるのも、反響を著しく阻害するものである。ま
た、広告に「無料」という言葉を使えなくしてしまう。この「無料」と
いう言葉こそ、前にも述べたように、サンプルの効用を著しく高める要
素であったはずである」
「諸君は売り手なのである。これを忘れてはならない。売り手である以
上、消費者の興味を誘わなければならない。したがって、この興味の表
示方法をことさらむずかしくしたり、見込客に対して諸君の販売努力の
代償を払わせようなどという不手際を演じてはならない。4人のうち3
人、いや10人中の9人は、そんなものが払えるか、と拒否するだろう」
「サンプル請求のコストは商品によって違ってくる。これは訴求の広が
りによって決まるものである。あるものは万人に訴え、あるものは少数
者に訴える。すべて訴求の幅によって決まるものなのである」
「"グレーター・ニューヨーク″紙に濃縮ミルク1缶をサンプルとして無
料進呈と広告したら、1回の広告でなんと146万通の反響があった」
「ココア入り飲み物の場合には、発行したクーポン総数の5分の1がサン
プル請求として戻ってきた。サンプルをあまり利用しない商品でも、これ
らの数字の何分の一かは戻ってくるはずである」
「問合せをしてくるというのは、その見込客が広告を読み、興味を覚えた
からなので、製品を使ってみたい、そしてどんな具合かを試してみたいと
いう希望があるからだ。このような客を現実に目の前にしたとき、諸君な
らどうするか。サンプルもその気持でやればよいのである」
「小売店でクーポンとサンプルの引き換えを行なうと、希望者は郵送の場
合の4倍に達することがよくある」
「手紙を書くということは一つの努力だから、たいていの人はこれをめん
どうくさがる。たまたま、家に切手の買いおきがなかったということもあ
るだろう。だが、たいていの人は2セントの郵便切手を買うよりも、電車
賃を払ってもサンプルをもらいに小売店へ出かけてしまう。したがってサ
ンプルは、どんな場合でも、小売店で引き換えるようにするのが最善の方
法である」
「ーつのサンプルを提供するのに、同時に三つの引換え方法を与えたもの
があった。郵便で請求するか、電話で申し込むか、小売店で引き換えるか、
そのどちらでもよいということだったのである。請求の70%は電話によ
るものだった。この例でもわかるように、電話の利用は郵便よりも便利で
あり、大衆性があるということになる」
【chuuyuu註】90年後の現代であれば、電話、emailの率はもっと高かろ
う。
{サンプルを業者全部にもれなく配給することができないときはサンプル
引換えの中心となるべき店をいくつか指定し、これを消費者に周知させるわ
けだが、指定された店では、このために来店客がふえるので大いに歓迎する。
しかし指定されなかった店でも、これによって商売の分け前にあずかるわけ
だから反対はしない」
「回収されたクーポンは、それを遅滞なく広告主へ送り届けさせることが大
切である。広告主はこれらのクーポンをもとに見込客の興味が薄れないうち
にファローアップ(追い打ち)する」
「サンプルを請求者の中には常習者がいる、とよくいわれる。ある程度はそ
ういう常習者もいるだろうが、比率からいったら、たいした数ではない。こ
の程度は経費にあらかじめ見込んでおけばよい」
「常習者を締め出す一つの方法として、「1家庭1個に限り」という但し書
きをする手もある」
「ある地域を対象に、サンプル集めの常習者を調べてみたところ、サンプル
代の損失は調査費以下であることがわかった」
「商品によっては、子供たちのサンプル集めの対象にされることもよくある。
このような場合には「大人に限ります」という但し書きをすればよい。そう
すれば、小売店でも子供のサンプル引換えには応じないだろうし、また郵便
で請求してくることもめったにない」
「実物見本がどこの店でも自由に引き換えられるというクーポンを発行する
とき、注意しなければならぬことが一つある。それは一部の消費者だけでな
く、一部の業者までが新聞をある程度まとまった部数買い占めることがある
という点である。これを防止するには、発行日をあらかじめ公表するのを避
け、抜き打ち的に発表するのがよい。われわれは、こうした買い占めができ
にくい日曜新聞を利用して発表するという手をよく用いている」
「サンプルは関心を持つ人びとにだけ与えることである。何らかの方法で興
味を示した人、諸君がストーリーを伝えた相手方、そういう人たちだけに与
えるべきである。与えたら、まずその商品を尊重する気持をいだかせ、欲求、
期待をかり立てるのである。人びとがこのようなムードにはまったときには
じめて、提供したサンプルが諸君の主張の内容を確認してくれるのである」
「サンプリングに対する反対論は、偏見に基づくことが多い。特に、広告の
いっさいを印刷媒体に振り向けたがる広告代理業から強い反対の声が上がる
かもしれない。このような反対論には、テストの結果で立ち向かえばよい」
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