創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(727)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(17)

坂本 登さん訳『科学的広告法』(1966.10.05 誠文堂新光社)より
月曜〜金曜のウィーク・デイに、あと8日間ほど、プレゼントします。
 (アド・エンジニアーズのクリエイターには、社内研修用として全文を配信予定)



クロード・ホプキンズの名言(11)


第14章 配品の問題――から(上)



「広告主で、配品の問題に悩まされないものは少ない。この問題を抜き
にしては、全国的な広告などはとても考えられない。
買ってみようという気になって出かけて行っても、10人中の9人まで
が、どこにそんな商品があるのかわからずに帰ってしまったのでは商売
にならない」


「ディーラーに製品をなんとしても在庫させたいというときは、その製
品の反覆需要を高めるのが一番なのだが、これには膨大な経費がかかる。
全国に販売員をばらまくことは不可能に近いし、広告の力で名の知れぬ
製品をディーラーに仕入れさせることも容易ではない。そのために多く
の努力が失敗に帰し、多くの約束がこれまで反古にされてきた」


「製品を業者間に広く配品するのが理想とはいっても、その方法を残ら
ず説き尽くすことはできない。企業によっていろいろな方法がとられて
いるからである。メーカーによっては、一般の需要が高まって、ディー
ラーが進んでストックを希望するようになるまでは、直接販売――すな
わち通信販売――で出発するものもいる」


「メーカーによってはサンプルその他の提供によって見込客にアプロー
チし、次いでそのサンプルの引換え店を指示するという方法をとるもの
もいる」


「名の通ったメーカーなら、売上げ保証という手で多数のディーラーに
ストックさせることもできる」


「ディーラーがストックを希望するまで特定のディーラー名を広告に掲
載するという手を用いるものもいる」


「食品や医薬品のように訴求対象が広く、しかも反覆購入される品種に
ついて述べる。
この商品には雑誌による全国広告が最適だと思えるときでも、いちおう
地方広告で出発するのが普通である。そして、まず町から町へ製品を配
備し、次いで全国広告に切り換えている」


「製品をストックしている取扱店名を広告に掲出することもある。取扱
店がふえれば、それに応じて広告に入れる取扱店名を追加していく」


「取扱店名を掲げながら地方広告を行なえば、一般のディーラーもそれ
に一枚加えてもらいたがる。かくて、最初2〜3回の広告に店名を出し
ただけで、大多数のディーラーを傘下におさめることができたという例
がよくある」


「広告に掲示された取扱店名の多寡は問題でない。広告が成功していれ
ば、他のディーラーも急いでストックを希望するようになるだろう。そ
して、やがては全ディーラーに製品がストックされるようになる」


「前章で述べたいろいろなサンプリング活動は、配給を早める上での促
進剤となる。サンプルはこの点だけでも、十分にペイするのである」


「サンプルを地方に配給した場合は、クーポンにその取扱店名が入れら
れる。サンプルを希望する見込客は、近所の店がその指定店になってい
ないときは、わざわざ指定の店まで出向いてくれるから、そのために商
売のチャンスを逃がすことは少ない」


「サンプルの請求が広告主の手もとに届くと、まず最初に所定の引換え
店が請求主に知らされる。そしてこれらの引換え店がかなりの数量を仕
入れるように仕向けるため、需要を十分その店に集めてやる」


「たいていの店にサンプルを置くこともあるが、これはある程度の商品
を購入した反対給付として置かれることが多い。一ダースの仕入れに対
して1ダースのサンプルを供給するというやり方である」


「どこの店でも自由に実物見本が引き換えられるというクーポンにした
場合は、配給の問題は簡単になる。まず、クーポンを入れた広告のゲラ
刷りをディーラーあてに郵送し、同封のクーポンを持ったお客さんが大
勢あなたのお店に押し寄せることになります、と通知する。むろんこの
クーポンの一枚一枚は、もうけをビター文も犠牲とせずに即金売上げを
約束しているから、そんな面倒な客はよその店へ行ってもらいたいなど
という店は一軒もないだろう」


「実物見本の無料進呈は、このような面で、しばしば効力を発揮してい
る。製品の配給を広く行きわたらせる方法として、これが一番安上がり。
最も成功した広告主の中には、この方法を全国的な規模で行なってきた
ものもある」


明日に、つづく