創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(595)東京コピーライターズクラブ・ハウスでのスピーチ(5)

エイビスのつづき


これが、すごい。

No.2イズムというのが出てきたわけです。
No.2主義 エイビスのマニフェストって、
これは共産党宣言のもじりなんです




No.2主義
エイビス宣言


私たちは、レンタカー業界で、巨人の後塵を拝しています。
なかんずく、私たちは、生き残る方法について学ばねばなりませんでした(*)。
その闘争を通して、私たちは、この世における1位と2位の根本的な違いについても学びました。
1位の態度たるや「間違ってはいけない。失敗さえしなければ、それでいい」です。
2位の態度はこうです。「正しいことをやれ。新しい道を探せ。もっと一生懸命にやろう」
このNo.2主義が、エイビスの信条であり、実践もしています。
エイビスのお客さまは、ワイパーがちゃんと動き灰皿が空になっていて、ガソリンは満タンで、ぴっかぴかのプリムスの新車を、職分をよくわきまえたエイビス・ガールの微笑つきでお借りになれます。
そしてエイビスも赤字を脱して黒字に転じました。
エイビスは、このNo.2主義に特許をとってはおりません。どなたでも自由にお使いになれます。
万国のNo.2の同志よ、立ちあがれ!


マルクス、エンゲルが書いたと言われている共産党宣言
いま民主党共産党もやっているマニフェストというのは、
この共産党宣言からきています。
それをNo.2主義宣言といって、
車のハンマーとクランク棒、
それを組み合わせたんです。


ソビエト共産党は鎌などをつかってやってましたが、
それをもじったんですね。
これは恐らくね、アメリカ人はみんなびっくり仰天したと思いますよ。
共産主義嫌いのアメリカで、
ドーンとやったわけですからね。
しかし、読むと、「なるほど」と思っちゃうわけです。


次は苦情があったら社長に電話してくれと。
秘書ではなく、うちはいつでも社長が応対しますって。


ご苦情がおありの節は、
エイビスの社長を呼び出してください。
番号は、CH8−9150です。


社長をガードするための秘書など、一人もいません。彼がじかに電話に出ます。
彼は、お相手するのが大好きなのです。
彼は、それを小さな会社の偉大な特典と考えています。
どのことについての責任はだれにあると、きちんとわかっています。責任を転嫁する人もいません。
さて、当社の社長は、何もかもについて、だれにもかれにも対して責任があると思っています。彼には、スーパー・トルクのフォードをスーパーにするために死に物狂いで働いている私たちがついているのですが、それでも、ときどき、汚れた灰皿や、きちんと動かないワイパーなどがあるということを知っているのです。
もし、そういうのをお見つけになったら、私たちの社長をお呼びください。
彼は、あなたから苦情をいわれてもビクビクしません。それどころか、あなたに対して適切な処理をしてお返ししますよ。


電話応対しているのが社長か誰かは、本当のところは分からないですけど。


有名なアメリカの「ウィー・ウオント・ユー」のもじり。
「エイビスはあなたが求めていない、ということを
決して忘れはしません」


エイビスは、あなたが必要です。
あなたは、エイビスが必要じゃない。
エイビスは、このことを肝に銘じています。


私たちは、なお、少しばかり、空腹です。
業界で2位にしかすぎないのです。
お客さまを十把ひとからげなんかにはできません。
まあ、ビジネスがうまくいってると、つい、お客をはしょったり、粗略にあつかうことも、なきにしもあらず、です。
そんなとき、カウンターに近づいて行って、めんどくさがられたいなんて思いませんよね。
試してください。
エイビスのカウンターへいらっしゃって、生きのいいスーパー・トルクのフォードの新車を借りてみてください。エイビスは業界で2位なんです。だから、お客さまをお客さまとして遇するようにしっかりやってます。
カウンターには2つの側があります。
もちろん、どっち側が私たちのパンにバターを塗ってくださるのか、分かってます。


(訳:金丸 哲&chyuukyuu)    


ハーツが黒です。赤がエイビスです。
「まだ、強敵に食われようとしています。
だから、もうちょっとうちを使ってください」って。


エイビスは、より大きな軍団に
攻撃されています。


私たちの強敵手の一つは、「エイビスの強がり広告もどき」というのを連載しています。やりたいなら、やらせておきましょう。
でも、これだけはいっておかなくちゃぁ。向こうの大きさ、そして、エイビスが可愛らしいほど小さいって印象づけていることを。
最近、先方さん、あんまりかっこつけてられないみたい。
私たちが差をどんどん縮めてますからね。
先方さんの軍団は、トラック込みで104,000台。こちらは7万1,000台。
この数字についてつけ加えますと、プリムスのすてきな新車はまだ加えていません。
No.1は、私たちがどこまで追いあげてきているかを知ってるはずです。
私たちがかつての小軍団のままだとしたら、あんな広告を連載するはずがありませんもの。


日本でいう「判官びいき」と似たような言葉が
アメリカにもあるんですかねえ。
「負け犬びいき」?


ウイー・トライ・ハーダーのこのバッジを、
大学に行っている息子に送ってやろうと
思いませんかというんですね。



このエイビス・ボタン
大学生の息子さんへ送ってほしいと
お思いになりますか?


あるいは、お宅へ皿洗い機を設置にきた人に? または、あなたのシャツのボタンがとれたままで渡したクリーニング屋に?
この「もっと一生懸命にやりますボタン」は、あなたのお知り合いのだれかの目を覚まさせます。
私たちをそうしたように。
このボタンは、私たちをふるい立たせました。レンタカー業界で2位にすぎないということを私たちに思い出させました。あなたに、ぴかぴかのスーパー・トルクのフォードのような新車をお貸しするだけでなく、とてもたくさんしなければならないことがあったのです。
私たちは、あなたに、またいらしていただくようにするために、もっと一生懸命にやらないといけませんでした。
私たちのみんなが、です。
受付カウンターの女姓も、ガソリン・タンクを満タンにする従業員も、技術者も、そして事務所にいる者も。私たちは依然として2位にすぎないのです。けれども、目に見えて向上しています。
どこのエイビスのカウンターでもけっこう、ボタンをお取りください。
もし、スローガンが効力を発揮していなかったら、裏がえししてボタンのピンをお確かめください。


だいたい日本の学生と同じですね。
これはポーラ・グリーンの息子が大学へ行っていましたから、
こんなコピーができたんですね。
つまり親というのはいつでも息子は勉強をしないと思っている。
息子のほうは親というのはいつでもうるさいと思っている。
世界共通なんですね。
それと若いコピーライターも勉強しないね。


エイビスの持ち帰り自由のボタンは、
ほとんど
底をつきました。


左:古き良きボタン 右:簡素な新しいボタン


ボタン5,000,000個以上。
1個2.5セント、合計で125,000ドル。2位にすぎないということをいうための大出費。
だから、ボタンを補給する私たちの担当者は、簡素なバージョンに切り換えました。しかし効果は相変わらず誰にでもあることを保証します(担当教区の300人を良い行いへと導こうとするアフリカの司教さんでも)。
単にボタンをつけているだけで、世界は自然に住みよい場所になっていくかもしれません。
しかし、ボタンをつけるよりもっと肝心なこと。
エイビスは、受付の女性がボタンをつけたからといって、奇跡を期待してはいません。エイビスは、勝つ意志を持っており、それがみんなの胸に刷り込まれています。受付の女性にも、葉巻の吸い残しをフォードからつまみ出す男子従業員にも。
エイビスのボタンはお望みの方には差し上げています。
このボタンが効果を発揮するのは、書いてある言葉どおりに、身につけている人がしっかり働いているときにだけですから、念のため。


(訳:梅地沙史&chyuukyuu)


赤いほうがエイビスで、左が1位です。
どんどん売上がこっちへ来ています。


No.1がエイビスにこだわっている
その理由(わけ)---


最近、No.1の広告が大きく変わってきたことにお気づきのはずです。
ノー天気な男がクルマに飛び降りている広告をやめました。
それに代えて、エイビスの強がりキャンペーンへの対抗編というのを出してきています。
なぜでしょう?
No.1はレンタカーのシェアを減らしつつあります。
エイビスのシェアは伸びています(最近の主要26空港の統計です)。
「もっと一生懸命にやります」キャンペーンは着実に成果をあげています。
洗浄ずみのプリマス、満タンのガソリン、そして笑顔で迎えられたとき、あなたはNo.1のお客さまがエイビスへ移りつつあることを確信なさるでしょう。
その潮流は明らかです。
この調子で努力していけば、1970年、エイビスはNo.1になっているでしょう


(訳:梅地沙史 & chuukyuu)


世界中でも頑張っていますと。
日本語もありますというキャンペーンなんですね。
これもクローンだから、1つのフォーマットを作って
こうしたのかもしれません。


私たちは、世界中で一生懸命にやっています。


この広告で、レンタカー業界における私たちの負け犬のイメージはこわれてしまうかもしれません。
でもエイビスは38ヵ国で経営している・・・ということを秘密にしておけなかったのです。
私たちは依然として2位です。そしてやっぱり1位は私たちに勝っています。ということは、つまり、私たちがニースでお貸しするシムカは、ニューアークでお貸ししているブリマスと同じぐらいきちんとしているということ。
たしかに、エイビスのバッチを各国語に翻訳するときは大ごとでした。「私たちはもっと一生懸命やります」という意味に最も近いドイツ語は、「自然に頑張ってしまいます」となります。イタリア語では、「もっとたくさん、召してもっとよくやってみせます」
いずれも、いずれも。外国におけるエイビスの扱い店を忙しくたちまわらすのに十分な訳にはなっています。自分にもっと働くよう強いる(スペイン語の意味)と書いたバッチをつけていれば、自然と自分からそうしなければならない気分になってくるものです。
この中のどれかお気に召したのがおありでしたら、エイビスにいらしてください。車にご用はなくっても。


うちはだから、いまや1.5位。
2位じゃなくて1.5位です。
本当は1.3位ぐらいなんですね、まだね。


Would you belive Avis is No.1 1/2?


エイビスは1.5位って
信じられますか? 


マナーどおりに言うと、私たちはまだ2位です。
しかし4年間、一生懸命にやった甲斐あって、1位との差を約半分に縮め、数字的には1.556位です(最近の主要26空港の統計より)。
トップに接近するとどんなことが起こるでしょう。人はさらに努力するのです。
たとえば、アーニー・フートのように。
期限切れの州外免許証をお持ちのお客さまが来店された時のことです。アーニーは、免許試験のため、お客さまをハイウェイ・パトロールまでお連れしました。お客さまは免許証を取得され、ピッカピカのプリマスの新車で出発されました。
私たちのスタッフがスコアを伸ばしていることは明白です。
もう優勝旗の匂いを嗅ぎとっています。

明日は、ビルあなたに生きていていただきたいシリーズ