創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(581)ウルフシュミット・ウォッカのシリーズ(1)

ニューヨーカー・アーカイブ]より


       ☆     ☆     ☆


解説】拙編著『アンチ・マジソン街の広告代理店PKL』(ブレーン別冊 誠文堂新光社 1967.07.20より転載

ウルフシュミット・ウオッカ


このウオッカもロンリコ・ラムも、ともに有名なシーグラム傘下のゼネラル・ワイ&スピリッツ社から発売されている製品です。

ウオッカというのは、無味、無色、無臭が売りものの製品だけに、その個性づくりは困難をきわめます。
PKL社は、ウルフシミュットに、女と歌と冗談が好きで、ちょっぴりホラ吹きの男の人物を設定し、みごとに成功しました。

また、別のシリーズでは、ウルフシュミットにはテイスト(味、感度、もの、ナニ)がいいと強調し、ほかのウオッカとの差別化を企てています。

たとえば、明後日掲示するグラスだけの広告に対し、ほめ言葉をほとんど書いたことのない『アド・エイジ』誌の「クリエイティブ・マンズ・コーナー」も、

「広告に気のきいたものを要求する人びとにとって、このウルフシュミットの広告は、全く満足できるものであろう。
この広告は、人びとが予期する慣例的な広告とは、まるで違っている。パッケージは姿をみせず、ずばり製品そのものがのっている。しかも新しく買い求めたのではなくて、すでに使用中のものが・・・・さらにこの広告には、ほかの多くの広告に見られる誇大性はなく、写真は慣例を破ったもので、広告というよりもアートに近い」

広告界の常識人たちの目から見れば、今日の擬人化されたぴんのシリーズにしても、このグラスだけの広告にしても、「こんな広告が効くか?」とか「ユーモアは売らない」とかということになります。

PKLの人たちに言わせると、「十分に効果があった」という返事が返ってくるでしょうが、「クリエイティブ・マンズ・コーナー」の匿名氏は、
「累積効果を期待する広告になじんでいる人びとにとってみれば、しつこいほどコマーシャル・メッセージが書かれているほかの芸術的でない広告に比べて、この広告が効果的であるとは思えないであろうが、味についての説明があまりついていないほかの広告をみて、人びとは、どうして味を知ることができるというのか」と、この広告が、ウルフシュミットの味を際立たせている点を高く評価しています。 

同じ『アド・エイジ』誌で、広告コンサルタントのジェイムズ・D・ウルフ氏は、やはりグラスの広告を引き合いに出して、「オリジナリティが効果的な広告を判定する決め手だとすれば、この広告はブルー・リボン賞もの」といってから、「だが、オリジナリティは、良い広告の判定となるものであろうか? 変わっている広告が変わっているというだけの理由で必然的に説得力のある広告といえるだろうか?」と疑問を投げかけ、その点からこの広告を批判しています。
広告の評価は人さまざまですから、どんな珍説がでてきても驚きはしませんが、ぼくは、これらのシリーズが、ウルフシュミット・ウオッカの売上げをあげたこと、しかも人びとがこれらの広告を楽しみながら読んだことから、成功したキャンペーンであると判定しています。 


       ☆     ☆     ☆


     
「きみは、たいしたトマトだよ。2人で美味しいブラディ・マリーがつくれるよ。ぼくは、その辺の連中とはできが違うんだからね」  
  「あなたって好さよ、ウルフシュミット。あなたって、あれがいかすんだもの」


ウルフシュミット・ウォッカは、純正でよき時代のウォッカ特有の微妙な味わいを持っています。ブラディ・マリーに使ったウルフシュミットは、勝ち誇ったトマトの味です。ウルフシュミットはひとロごとに最高の味わいです。


"The NEWYORKER" 1962.08.19

  



     
"You're some tomato. We could make beautiful Bloody Marys together. l'm different from those other fellows."  
  "I like you, Wolfschmidt. You've got taste."


Wolfschmidt Vodka has the touch of taste that marks geunine old world vodka. Wolfscmidt in a Bloody Mary is a tomato in triumph. Wolfschmidt brings out the best in every drink.







「かわいいお嬢さん。ほんとにカワイ子ちゃん。ぼくの好みにピンとくるね。ぼくがきみのいいところをひき出して有名にしてあげよう。こっちに転がってきて、キスしようよ」 「先週ごいっしょだったトマトさんとは、どうだったの?」


ウルフシュミット・ウオッカは、純正でよき時代のウオッカ特有の微妙な味わいを持っています。スクリュー・ドライバーに使われたウルフシュミットは、オレンジを恍惚とさせます。ウルフシュミットは、ひと口ごとに最高です。


"The NEWYORKER" 1962.04 28



"You sweet doll, I appreciate you, I've got taste. I'll bring out your inner orange. I'll make you famous.Roll over here and kiss me." "Who was that tomato I saw you with last week?"


Wolfschmidt Vodka has the touch of taste that marks genuine old world vodka. Wolfschmidt in a Screwdriver is an oranle in ecstasy. Wolfschmidt brinlgs out the best in every drink.



      「ああ、お嬢さんたちよ。今晩は、あのレモンちゃんと呑む約束をしてなけりゃあね」
「トマトだなんて気やすく呼ばないで。ウルフシュミットはあたいのものよ。彼って味がいかすもの」 「そうよ、彼って味があるわ。彼はゆうべあたしと一緒だったんじゃなくって?」    
    「あたしを見て、ウルフシュミット。お忘れじゃないわよね。仲良く2人ですごいマティーニをつくりましょ」  


ウルフシュミット・ウオッカは、純正でよき時代のウオッカ特有の微妙な味わいを持っています。だから、すてきなスクリュードライライバー、プラディ・マリー、マテイニー、トニックなどなどがつくれるのです。

"The NEWYORKER" 1962.05.26



      "What dills. If only I wasn't having a drink with that lemon tonight."
"Who are you calling a lemon? Wolfshmidt is mine. He's got taste." "Of course he has tasrte, Wasn't the with me last night?"    
    "Look at me, Wolfschmidt. You know your onions. Let's make great Martinis together"  


Wolfschmidt Vodka has the touch of taste that marks genuine old world vodka. For the reason it makes better Screwdrivers,Bloody Marys, Martinis, Tonics, Etc.

"The NEWYORKR" 1962.05.26  


       
  (「そう言われるだけのことはあるさ。おれの味は、いかすんだから」)
       
       
ウルフシュミット。
あなたのオニオンを
ご存じでしょ。
2人でやりましょ。
今宵、
ギブソンを呼んで---
ネェ、ネェ、ネェ、ネェ
ツイストしましょ。
ウルフシュミット。
あんたは、その辺の
ウォッカとは違うわ。
いかしてるその味。
2人して
すてきなマティーニをつくらないこと?」
もう、手遅れよ。
みんな。
ウルフシュミットは、
あのトマトと、
行ってしまったわよ
 


ウルフシュミット・ウオッカは、純正でよき時代のウオッカ特有の微妙な味わいを持っています。だから、すてきなギブソン、ブラディ・マリーなどがつくれるのです。おいしくって---それから---。


"The NEWYORKER" 1962.11.24


       
    ("I've got to admit it. I do have taste.")
       
       
"Wolfschmidt,
you know
your onions,
Let's got together.
Call
Gibson Oh,
Oh,Oh,Oh,Ohh
tonight."
"Let's twist,
Wolfschmidt.
You're not
like those
other vodokas.
You've got taste.
We'll make
beautiful
Martinis
together."
"Don't
look now,
girls.
but Wolfschmidt
just took off
with that
tomato."
 


Wolfschmidt Vodka has the touch of taste that marks genuine old world vodka. For the reason it makes better Gibsons, Bloody Marys, Etc.Delicious Etcetera.

明日につづく