創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(471)レオ・バーネットが語った(了)

これで、TCC訳/編5人の広告作家』(誠文堂新光社 1966.3.25のうち、3人のアッブが終わりました。
ジョージ・グリビン(ヤング&ルビカム社)訳者・秦 順士氏 解説・近藤 朔さん、ロッサー・リーブス(テッド・ベイツ社)訳者・岡田 耕氏 解説・上野壮夫さんが残りました。
この2人ともアップしたほうがいい---とお思いの方は、訳者、解説者の許可をとって、その旨、コメント欄へお知らせください。もっとも、解説者はお2人とも故人なので、ご家族のO.K.を。
訳者のお2人も引退していらっしゃるとおもうので、TCCのメンバーに連絡先をお聞きください。


あすは、ぼくの解説バーンバックさんとDDBをアップします。


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 みじかい質問をもう一つおねがいしす。デビッド・オグルビーがいっていたのですが、方言や「ウィンストンはほんとにタバコらしい味がすると」いうような表現について話していたときですが、あなたが机の中に小な箱をもっていらして、なにか新しいいい方や珍しいいいまわし、スマートないい方を耳にすると、すぐにメモなさるということでしたが……。


バーネット 私か机の左下に入れている大きな書類入れがあります。
これは代理店にはいって以来のものだと思いますが、いつも中味がふえています。
私はこれを「悪趣味な言語」と呼んでいます。
会話中や、いろいろなところで、なにか特別なアイデアを含んでいたり、生活の匂いや様子がうかがえたりで、ひきつけられた文句をすぐ書きつけて、そこに保存しておくのです。


そして、年に三度か四度、中をひととおり見て、いま扱っている仕事に応用できるようなものをひっぱりだしてメモする。
私の耳は、いつも当り前のことに注意を寄せ、アイデアを表現する特別な関係にもっていけるように、つねに、調律させているわけです。


もう一つ「保存の価値ある広告」というファイルもあります。もう、かれこれ25年つづけていますが、それも目を通すことにしています。


 あなた自身のですか? 他の人のですか?


バーネット 他の人の作品です。

毎週、雑誌に目を通すことにしています。シカゴの新聞「ストリート・ジャーナル」や「ニューヨーク・タイムズ」も毎朝読んでいます。
なにかの理由、たとえば提示の仕方、へッドライン、または、なにかほかの観点で効果的なコミュニケーションとして感銘した広告を切りとるのです。

年に二度、このファイルをめくることにしています。
なにかコピーをつくろうという考えで見るわけではなく、いま、会社でやっていることに応用できる発火点になるようなものが、あることがあるからです。(了)


いれずみをした男

レオ・バーネット氏のマルボロのための有名なキャンペーン(初めての広告は、カウボーイの絵)。これは二番目のものですが、やっぱりその男(今では有名になったいれずみをしている)の絵を描いています。しかし今回は、燕尾服に白いタイというかっこうです。
バーネット氏はこういっています。
 「私たちはシカゴ派の広告をやろうと思っています。私たちは、ストレートな表現をしようと努めています。感傷的にならずに暖かみのあるものにしようとしています」


これも、カラー版だったら、もっと強烈でしょうね。

菊川淳子・訳



東京コビーライターズクラブ訳/編『5人の広告作家』(誠文堂新光社 1966.3.23)より