創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(464)シーヴァス・リーガルの広告(11)


ケチ坊 miser は、落語のコメディ・リリーフです。とはいえ、合理的な生活信条をしっかり貫いている人でもあります。
アリとキリギリスでいえば、アリ型の人。地味だけど、尊敬すべき人種です。
ただ、友人にはしたくないだけ。隣の大国の聖人ものたまってます、「いい友は、モノくれる友」と。
自分の中にも、ケチの小人が棲んでいることを誰だって自認してます。とくに酒好きは。
DDBは、この隠しておきたい小人にライトをあて、モノの価値を知り尽くしている愛すべき人物として描いています。
製品の高品質、高価値を、広告のタブーを破り、miser に仮託したのです。


2,3日、つづけてみます。


シーヴァス・リーガルでもてなす時には、急に
氷の大盤振るまいなりませんか?



1969.4.19 『ニューヨーカー』


その家の主人がシーヴァス・リーガルを
出さないからといって、
一本も持っていないと
いうことではありません。


ケチる人だっていますよ。
親しい友人を、そしてすばらしいスコッチを愛してはいても、
わずかなお金に対する愛着でケチな人たち。
シーヴァス・リーガルが他のウイスキーより高いというだけで、
パーティに出すのをためらっているのです。
そして暗い片すみに隠しているわけ。
霧につつまれた陽光のストランスラ・グレンリベットの谷間で、
12年も眠りつづけた栄光で、乾いた喉をうるおす機会を与えることなく。
たったの2ドル節約したいがために。
愚かです。でもどうしようもありません。ホストに恥をかかすことは
しますまい。たとえケチで、小心で、守銭奴であろうと。
寛大にいきましょう。
泰然と微笑んで、彼の注いでくれるものは何でも飲み干すのです。


1965.12.4 『ニューヨーカー』





If your host
doesn't serve
Chivas Regal,
it doesn't mean
he has none.


There are misers among us.
Men whose love of dear friends and fine Scotch is not so great as their passion for pennies.
The mere fact that Chivas Regal cost more than other whiskies puts tbem off serVing it.
So they hide it in some dark corner, there to languish in all its 12-years-aged glory never to grace a thirsty thoat with the misted sunshine of the Strathisla-Gelenlivet vales.
And only to save a paltry $2.
Pity. But what's to do? We wouldn't stop to embarrassing a host. Men, petty, miser though he be.
So be gracious.
Smile bravelv and toss down whatever he serves you.


December 4, 1965 The New Yorker

2009年5月29日紹介ずみ分



もう半分も飲んだのか、と主人側。
まだ、半分もあるじゃない、と客。


1975.5.26『ニューヨーカー』


スコッチの中のスコッチ---シーヴァス・リーガル