創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

あるDDBのコピーライターのクリエイティブ人生

ロン・ローゼンフェルド氏
業界専門誌『プリンターズ・インク』1965年7月23日号 ミズ・ヘレン・クルーガーの記事から抄訳



(あまりいじめられないかぎり)クライアントに悪態をついたりは決してしない、小じんまりとまとまったコピーライターは、いつの日かきっと天国への入口を見つけられるだろうと思っていますが、実はそこにはもう偉大なコピーライターなんてものがいるはずがないことは、案外知られていません。
一見、ロン・ローゼンフェルド氏は、おだやかな顔立ち(いかにもポチャポチャという感じとは違いますが)に黒ぶちの眼鏡、気楽そうな身のこなし、すばやい微笑、知的な話し方などから、ほかのマジソン街族と同類のように見えます。
しかし、この人は内部に稀な特質をもっています。仕事を楽しんでいるのです。


私たちは、この18の賞の受賞者(これには昨年(1960年?)のもっともすぐれた広告に与えられるニューヨーク・コピーライターズ・クラブからの銀賞も含まれています)に、DDBで仕事をするのはどんな感じかと尋ねてみました。
一瞬のためらいもなく、こんな答えがはねかえってきました。
「90%天国ですね---ぼくがいままで働いたところのうちで一番いい環境です」
「DDBには決められたルールは何もありません。拘束も、あなたの首をしめて息ができなくする人もいません。ライターやアーチストは仕事に責任を持たされています。自分の好きなやり方でやれる自由といっしょに。とても生産的に雰囲気です」
ちょっと考えて、氏はつけ加えた。
「DDBは、一種の大人のサマー・ヒル(青春の丘?)といってよいかもしれませんね」


人はこういう一種のlaissey faire(自由放任主義)の環境のときのほうが自分のもてる力をより一層発揮することができるし、それがひいては会社にとって価値あるものになることができるのです。
「クリエイティブ・ピープルは、できるだけ自由に新しいことを試みるのを許されるべきであり、同時に今考えている以上に自発的であるべきだと思います。たとえ少々野蛮でも、それがその人のやり方ならかまわないと思います。退屈な広告をもっとイマジナティブにするよりは、彼らをちょっと引き戻す方がずっと簡単なものです。もし、必要があればの話ですがね」
DDBでは、ロ−ゼンフェルド氏によると、ライターとアーチストは理想的な関係を楽しんでいるといいます。
「競争はほとんどない完全なるパートナーシップです。自分の方が名誉を得ようとして他を欺くなどということは決してありません。仕事のときは私たちはコー・ライターとコー・アートディレクターです。各々の腕をオーバーラップさせた2人のアド・メンです。決して<ぼくの>広告>ではなく、<ぼくたちの>広告です。実際、後になってしまえば、誰が何をしたのか思い出すのが難しくなっています」
一つの新クライアント、あるいは新製品がもちこまれると、2人は一緒に工場へ行って、そこでリサーチ、あるいは生産関係者と話しはじめます。カルヴァート(ウィスキー)のキャンペーンもこのようにして生まれました。
ローゼンフェルド氏とアートディレクターのレン・シローイッツ氏がカルヴァートの醸造所を回って歩くまでは、一語も、一枚のサムネイルも描かれませんでした。シローイッツ氏は写真を撮り、ローゼンフェルド氏はメモをとりました。
「私たちは、特ダネ記事を書いているリポーターのような観点からアプローチしました」
カルヴァートはウィスキーの新しいカテゴリー(よりマイルドでもしかもプルーフを低めない)を創造しているということを知った2人はついにこの製品から「ソフト・ウィスキー」というコンセプトを引きだしました。
 2人は、消費者の間にある不信の実体を克服しなければならないということに気がついたので、「広告らしい(addy)」広告を作らないように細心の努力を注ぎました。
ローゼンフェルド氏は説明しています。
「特に、ぼくたちは、それがプロダクト・アイデアでなく、広告アイデアに見られることを避けたかったのです。最初、ぼくたちは見た目をすごく新しくしました。しかし、やがて自分たち自身を検閲しなければにりませんでした。ぼくたちは注意深く、人工的なものは全部取り除き、コピーもレイアウトも純粋でアントリッキーになるようにしました。ぼくたちは、クラシックで簡潔なものにするのに大変苦労しました」
このキャンペーンの成功(カルヴァートは<ソフト・ウィスキー>を30%も多く売った)について語るとき、ローゼンフェルド氏はこのクライアントに非常な賛辞を述べています。「この工場は、この<ソフト・ウィスキー>というアイデアを受けいれてくれ、実際に一層そあうなるように磁力してくれたのです。それからあの人たちは前代未聞のことをやつてくれました。驚くべき犠牲をはらってカルヴァート・リザーヴの瓶を全部棚からおろし、新しいキャンペーンのあとで、コーディネイトなセールス努力をしてくれたのです」


最も満足すべき仕事


カルヴァートは、これまでローゼンフェルド氏のやった仕事のうちで最も満足すべきものの一つだと氏は思っています。もう一つはジャマイカ・キャンペーンです(これも賞をとりました)。
「そのコピーを書くことで、ぼくに個人的な喜びを与えてくれました」と氏は言う。「ぼくはただの観光的アトラクションとしてではなく、ほんとうのジャマイカについて書きたいと思いました」


ローゼンフェルド氏の誌面広告、あるいはTVの受賞作品のリスト(トム・マキャン靴、ローラ・スカダ・ポテト・チップス、バクストン皮革小物、レイヤー・ビールなど)をちょっと見渡してみると、そのどれもがDDBで創られたものだということに気づきます。「これだけがぼくがニューヨークで創った唯一のものです」と氏は解説。


ローゼンフェルド氏の経歴は謎につつまれたものでも、特に変わったものでもありませんでした。


氏の職歴の出発は、オフィス・ボーイでした。
ボルチモア・ハイスクールで美術を学んで卒業したばかりの16歳の氏は、地元の百貨店の広告部に入り、9ヶ月後にはクビになっていました(「ぼくはどうしようもないオフィス・ボーイだったのです」)。


氏の次の職場では「メイ広告制作社マネジャー」という肩書がつきましたが、ここもクビになりました。しかし、去る前にレイアウトとコピーの作法を習得していました。


ここで軍隊が間に入り、神のご意思により(適性検査をそういっていましたが)、ローゼンフェルド兵卒はエンジニアになる決心をしたが、幸いなことに、この決心はすぐにぐらつきました。


そしてこの少年工は、自分手に入れられるかぎりで最も広告に関係があると考えたTroop Information and Educationに再就職しました(主な仕事は、勤務時間中に掃除をすることでした)。


フリーランスと、ニューヨークの職捜し


復員した氏は、アップルスタイン・ルービンスタイン&ゴルニック社というボルチモアの広告代理店のライターとして採用されました。
しかし、1年半後にはここも辞めてフリーランスになり、これでニューヨークで月曜に職捜しをする暇ができたわけです。
6週間後、2つのオファーがきました。マイアミ・ビーチの広告代理店とDDBです(「決心するのに少なくとも3分はかかりましたね」)。


それは8年前のことでした。今、32歳のローゼンフェルド氏は、大勢のコピーライターたちのグループを監督しています。そして、初心者と一緒に働くのはかなりキツイとの告白を聞きました。
そこで、若いライターへの忠告を訊いてみました。


「自分自身に正直でありなさい。自分自身を喜ばすたために書きなさい。そして君の直感が少しでもいいとなったら、それを仕上げるのです。もし、上の人が君がやっていることを認めなかったら、できるだけ早くそこを飛びだしなさい。
俳優のようでありなさい。その製品におぼれこみなさい。いろんなやり方で可愛いがりなさい。たとえば、コンピュータは君に何の感情も与えないかも知れない。でも、そのモデル・チェンジが君の子どもだったら、そんなこと言ってられないよね。
広告のほとんどは、エキサイトメントがないために説得力を持たないものになっている。まず、君自身が製品の価値をなっとくすべきです。自分が確信していなくて、どうして他の人に納得させることができますか」


「どんなときに妥協し、どんなときに戦いますか?」


この質問に、ローゼンフェルド氏はしばらく考えてから、
「明らかに妥協と思われるときには、よしなさい。しかし、もし、それが隠されていたり、あるいは虫喰い程度のものだったら、そして君が効果的な広告をもっているんなら、それでいきなさい」


米国ソニーがDDBへやってきたのは、この取材の2年後で、ロン・ローゼンフェルド氏とレン・シローイッツ氏が手がけました。



ソニー・サイド・ショウ


私たちの5インチTVは、横にしてもひっくり返しても、観たいとおもう方向に向けて観ることができるんです(どんなふうにして観ても画像は鮮明)。ソニーのソリッド・ステート回路のおかげでテレビをどんなふうに置いても画面はゆれません(ただ、修理店で背中を見せてうつ伏せになっているソニー---なんて図は、めったにありませんよ)。AC電源プラグと嵌め込み式のバツテリ・パックの両用。非帯熱トランジスタ24石と非歪ブラウン管のおかげて、どんな位置でも完全な画面を観ることができるのです。ここにこのテレビの美点があります。1日中、何もしないであおむけに寝ているのに飽きたらたら、小さなソニーを横にして観ては---。5インチどんな向きでも観られるソニーTV




Sony Side Show


Our 5" TV. For right-side-up way-your-want-it viewing. (No matter how you look at it you're getting a great picture.) Thanks to the Sony's solid state circuitry you can place the set anywhichway and it still won't get all shook
up.(It's not very often you'll find a Sony flat on its back at the repair shop.) It works on an AC wall plug or clip-on battery pack. Its 24 non-heating transistors and flat faced non-distorting picture tube give you a perfect picture at the any position. And here's the beauty of a set lik this: when you get tired of lying around on your back doing nothing all day, you can always turn on the TV and catch a little Sony on the side. 5"anywhichway SONY TV


ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
(12345了)