(422)ジュリアン・ケーニグ氏[名誉の殿堂]入り(2)
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【用法】このクスリ(ブログ)は、「長」とか「務」とか「役」がついている部位から効いてこないと、下は通りが悪くて苦しみます。「長」とは「怪腸」「瀉腸」じゃなく「会長」「社長」「営業本部長」などなど。でも、通りをよくするには、うんと上の「長」の前に、とりあえず、すぐ上の「長」へ、これの服用をすすめることからはじめてみましょう。
ケーニグ氏の令名は、DDBでのVWビートルのキャンペーンでにわかに喧伝されました。ご当人もいうとおり、DDBへはそれまでのボツ・ラフで入社できたのです。DDB流の採用試験法---「前の会社で採用された広告は持参におよばない。ボツになったアイデアを見せてくれ」
ところで、ケーニグ氏のVWビートルでもっとも有名なのが、"Think small" と"Lemon"で、それまでの広告クリエイティブ・フィロソフィを一変させたと評価されています。しかし、どちらも、安産ではなく、超難産でした。その難産ぶりを知れば、われわれ、DDBerでないクリエイターにも勇気が湧いてきます。
【種あかし】 広告クリエイター志望のデザイン学生なら、知ってないと恥ずかしい "Lemon"誕生秘話。←クリック
ジュリアン・ケーニグ氏[名誉の殿堂]入り(2)
創造性、野球、競馬がケーニグを[名誉の殿堂]へ駆け込ます(抄訳2)
『アド・エイジ』誌 1966.4.18号
パハート氏のケーニグ評「すべての広告が、それまでの伝統を破っていく。これがケーニグ氏の広告アプローチであり、トリビューンの方針でもある。『良い広告は退屈だ、なんていうのは誰だ』」
VWビートルでケーニグ氏と組んだことのあるDDBのVP(副社長)兼チーフ・アートディレクターのヘルムート・クローン氏は次のように言っている。「ある時、われわれはフォーチュン誌のためのVWの広告を創らればならなまくなった。フォーチュン誌だけのためであった。ある朝、クーニグ君がやってきて、”Think small (小さいことが理想)という考えを出した」
クローン氏はこのことに夢中になって、次のように付け加えた。
「ケーニグ君は驚くべき人間です。かの人は人生をこの上なく愛しています。それがあの人のすべてなのです。かの君のすべてなのです。DDBへ突然飛びこんで来、そして出ていったのです---大きな、爽快な風をまき起こして」
【chuukyuu注】あるときまで、ぼくは当事者の一人であるクローン氏のこの言葉を信じきっていました。ところいが、40年後にこれは事実ではないことを知りました。
その1.ただ1誌だけのための広告であったことは事実です。が、『フォーチュン』誌ではありませんでした。当時のアカウント部にいたエドワード・T・ラッセル氏によると、媒体は『ジャーナル・オブ・コンマース Jounal of Commerce 』の「米国製」という特集号に参加するためにもので、ビートルには米国製のものがどれだけ使われているかを盛りこんだ広告であったというのです。
たしかに、『ジャーナル・オブ・コンマース』に掲載された”Think small (小さいことが理想)"のボディ・コピー(本文)には、
(ずんぐり鼻のフォルクスワーゲンは、いまでは米国名物のりんごストルーデル(デザート菓子)同様、50州すべてで見かけられますが、その鉄鋼はピッツバーグ製でシカゴでプレスされています(工場の動力源すら米国からの輸入石炭です)。
という、ふだんのビートルの広告には見られない一節があります。これは、クローン氏の記憶より、ラッセル氏の手記が正しいことを証明しています。
その2. 朝、ケーニグ氏から、当時の米国人の常識"Think big"に反した”Think small (小さいことが理想)"というコンセプトを示されたクローン氏は、即座に反対し、まわりのなだめと助言によってしぶしぶレイアウトに手をつけた経緯は→"こちら。
ケーニグ氏のよき理解者であるジョージ・ロイス氏(写真)の評言「長打者である。散漫かとおもえば神経質でもある、まったくすばらしい奴です。人生を愛する人です。誰かがあるとき、ケーニグ氏のことをアイビー・リーグのビート族だと言ったのです。彼はそういわれるのが嫌いなんです。でもね、それはそれなりに的を衝いているんじゃないかな。彼はスポーツ、賭け、カードが好きです。彼はこれらが好きなクレージィな友だちを持っています。その連中はロールスを借りて試合を箕に行くんですよ。デーモンのような気質です。ケーニグ氏はすばらしい知性と洞察力ーの持ち主です。インテリですが悩ますようにエゴの持ち主ではない。
それがいいもので、クライアントの助けになるものであれば、誰かがやってきてアイデアを出そうと、ちっとも気にしません」
「エピソード? そうですね、ぼくたちがいっしょにVW社の工場で説オリエンテイションを受けるためにドイツへ行ったときのことです。(写真:VW工場見学中の左端ケーニグ氏、右端はクローン氏)
VW社の人たちが、あるドイツ風のビヤホールで夕食パーティを開いてくれました。そこでケーニグ氏はスライディングの方法を教えようとしたんです。いいですか、サッカーならともかく、野球を知らないドイツの人たちにですよ。
だれも酔ってなんかいませんでしたよ。彼は、ぼくにサードベース役を押しつけ、ホームプレートに目指して走り、フックスライドをやってみせたんです。彼はヨンカーズ(郊外町)でセミ・プロのチームを編成していたんですよ。
すごいスライディングでした。ぼくたちは、いまのはセーフかアウトがわいわいやりなすがらこのショー(?)を終えましたがね。
200人いたVWのドイツ人たちはきゃっきゃっ言って笑っていました。なんでそんなに笑っているかも自覚しないでね」
(フレッド・ダンツィグ記者 Fred Danzig 抄訳
>>続く
【再録】
ジュリアンが[名誉の殿堂]入りに値すると評価された過去の業績は、以下の広告の諸作品を含む。
VWビートルのための「小さいことが理想」(→作品を見る)
ナショナル・エアラインの「これが飛行機を飛ばす別の方法ですか?」
ヘラルド・トリビューンの「よい新聞は退屈なはずがない」(→作品を見る)
↓ウルフシュミッツの「ボトルとオレンジとの会話」
「きみは、たいしたトマトだよ。2人で美味しいブラディ・マリーがつくれるよ。ぼくは、その辺の連中とはできが違うんだからね」 「あなたって好さよ、ウルフシュミット。あなたって、あれがいかすんだもの」
ウルフシュミット・ウォッカは、純正でよき時代のウォッカ特有の微妙な味わいを持っています。ブラディ・マリーに使ったウルフシュミットは、勝ち誇ったトマトの味です。ウルフシュミットはひとロごとに最高の味わいです。
「かわいいお嬢さん。ほんとにカワイ子ちゃん。ぼくの趣味にピンとくるね。ぼくがきみのいいところをひき出して有名にしてあげよう。こっちに転がってきて、キスしようよ」 「先週ごいっしょだったトマトさんとは、どうだったの?」
ウルフシュミッツ・ウォッカは、純正でよき時代のウォッカ特有の微妙な味わいを持っています。スクリュー・ドライバーに使われたウルフシュミットは、オレンジを恍惚とさせます。ウルフシュミッツは、ひと口ごとに最高です。
何かをもっているウオッカがいいですか? 何ももっていないのがいいですか?
ティナ・ルイスは質問します。「もしウォッカに味がなくて、なんの特徴もなかったら、何が残るの? アルコールじゃない!と。しかしウルフシュミッツ・ウォッカは芸術です。アルコールではありません。純粋に古い世界のウオッカを思い起こさせる味覚をもっています。それは、すべての飲物のいちばんいところを高め、ひきだします。スクリュードライバー、プラディ・マリー、マティニー、トニック, ペパーウォッカなどで、そうなんです。あなたの唇に残る言葉は一つ---- 「ウルフシュミッツ」だけ。ウルフシュミッツ・ウォッカは何かをもっています。
おわかり、ティナさん?
もし、ウォッカに味がなかったら、ウルフシュミッツがどれなのかを、どうやっていいあてることができましょうか?
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