創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(422)ジュリアン・ケーニグ氏[名誉の殿堂]入り(1)


【用法】このブログ、クリエイティブ組織の中の一人だけが服用していると、その人にイライラ症状がでてきます。できるだけ全員で服用するように、声をかけあいましょう。


この4日間にわたって紹介した、ケーニグ氏のニューヨーク広告ライターズ協会でのスピーチは、もうお分かりでしょうが、当協会が毎年1名ずつ指名しているコピーライター[名誉の殿堂]入りに、1966年、氏が指名された、その感謝の記念スピーチでした。これまで[殿堂]入りしたのは、バーンバックさん、オグルビー氏、ロッサー・リーブス氏などにまじって、DDBのコピー・チーフを長年つとめたフィリス・ロビンソン夫人がいました。
ケーニグの[殿堂入り]の記事は、ニューヨーク・タイムス紙ほかに記事が載りました。ぼくがTCCから[殿堂入り」の名誉を受けたときは、どの新聞にも載りませんでした。(苦笑)


創造性、野球、競馬がケーニグを[名誉の殿堂]へ駆け込ます(抄訳1)


『アド・エイジ』誌 1966.4.18号



ホールデン・コウフィールド Holden Caufield という人がいる。
ジュリアン・ケーニグ Jilian Koenig という名のコピーライターとして知られている。

来週の火曜日(1966.4.18)ニューヨーク広告ライターズ協会の仲間たちによってコピーライターの[名誉の殿堂]入りさせられる。
その夕食会のー席で、『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』紙にヒューマン・インタレストに富んだ作品を書いていて、広告とは無縁の書き手---ジミー・ブレスリン氏 Jimmy Breslin は、のちにジュリアン・ケーニグを通称にした、親しみ深く、大げさな言葉を使わない広告、シンプルで宣言的文章を特徴とする金持ちのライターである、旧友ケーニグ氏のことを、紹介することになっている。
ほんとうのつながりをいうと、2人はいっしょに馬に賭けたのである。
馬に賭けたといえば、ケーニグ氏とフレッド・パパート氏 Fred Papert とのあいだも、そうだった。
(後者の2人は、そう、6年ほど前に、ある競馬場で会った。そのとき、ケーニグ氏はDDBのコピー・スーパバイザーで、一方のパパート氏は四苦八苦の自分の代理店をかかえていた。
ハパート氏はケーニグ氏に仲間に加わらないかと誘った。ケーニグ氏は、いともあっさりと、「いいとも」と返事した。ケーニグ氏はあとになったDDBの同僚にこのときのことをこう釈明している。
「パパート氏が悪人であるはずがない。あの人はバカ騒ぎが好きなんだよ)。
掛け金が支払われ、ケーニグはいまや、今年(1966)4,000万ドルの扱い高が期待されるPKL広告代理店の社長兼筆頭取締役である。
45歳になるケーニグ氏は、現在の実績に対してではなく、過去の業績によって[名誉の殿堂]入りをするのである。
氏は現在、経営面の統括の仕事をしている。
もっとも、いまも書いているクエーカー・オーツとパイルについては、替わってくれるコピーライターにまかすことにやぶさかではないと言っているが。
金持ち代理店の会長であるパパート氏はこう言っている。「クライアントに縛られない、はっきりと、新鮮に、思いもよらないふうに考える人---真実を告げ、それを面白く言うことができるコピーライターをケーニグ社長は捜している」と。


ケーニグ氏が[名誉の殿堂]入りに値すると評価された過去の業績は、以下の広告の諸作品を含む。


VWビートルのための「小さいことが理想」(→作品を見る)
ナショナル・エアラインの「これが飛行機を飛ばす別の方法ですか?
ウルフシュミッツの「ボトルとオレンジとの会話」(→作品を見る)
ヘラルド・トリビューンの「良い新聞ってのは、退屈なものだなんていうのはだれです?」(作品は下に↓)


フレッド・ダンツィグ記者 Fred Danzig 抄訳


>>続く

地下鉄の壁面ポスター


今朝の『ヘラルド・トリビューン』、ご覧になりましたか?


(良い新聞っていうのは、退屈なものだなんていうのはだれです?)




Did you see
this morning's
Herald Tribune?
(Who says a good newspaper has to be dull?)


良い新聞ってのは、退屈なものだなんていうのはだれです?


まじめな朝刊の新編乗法が誕生しました。へラルド・トリビューンが1月18日の事件をどのように扱ったかお見せしましょう


1. サント・ドミンゴで何が起こったかだけでなく、なぜ起こったかも書きました。まず、クーデターを導いた数々の事件を報じ、それから、ドミニカ共和国の危機の際の米国側の機動裏話、さらに、クーデター数時間後のサント・ドミンゴの模様を伝えました。


2. モロトフを非難したプラウダのことはどの新開も扱っていました。でも、他紙では推測の域を出ていませんでした。数日前の事件の真の意味を載せたのはトリビューンだけでした。


3. 「オレたちがどうやってお前らの牧師を殺そうとしているかわかったろう!」とコンゴ兵が叫びました。「クリスチャンの心の中に憎しみを見つけようとしてもそれは不可能です」とヨハネス23世は言いました。コンゴの大虐殺とそれに対するバチカン教皇庁の反応をそれぞれの側から述べました。


4. 忙しい読者のために、「今朝のニュース」でおもな事件を読みやすい簡素な文章でえぐり、それぞれにまれなる編集された原料−−潤察カ−−を加えました。
明朝は、朝食に何か新しいものをためしてみませんか。


真面目な新聞の朝刊は、
たいてい、
こんな紙面構成でした。
現在にいたるまで。

(ボディ・コピー略)

All serious morning newspapers
looked more or less like this.
Until now.


良い新聞ってのは、退屈なものだなんていうのはだれです?

                                        (ボディ・コピー略)


トリビューンはニューヨークのどの新聞よりも若い高収入家族の注目を保っているんだ。


ジョージ ジェンセン社は、トリビューンで2,200ドルのダイヤ・ブレスレットを広告しているんだって。


あたり前よ。最近の調査でジェンセンの客の63%がトリビューンを読んでるって出てるもの。


>>続く


参照
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