創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(411)アル・ハンぺル氏とのインタビュー(5)

       ベントン & ボウルズ社 取締役副社長兼クリエイティブ・ディレクター


前回のジェロー・チーズケーキのCMフィルムは、ビデオに移して手持ちしていたが、この回のレイのポテト・チップスのフィルムは手元にありません。著書に収録したコマ起こしの紙焼き写真があるのだから、フィルムもあったハズなのに残っていないのです。30数年前に広告に関する発言をやめようと決心したときに、膨大に集めていた広告作品とともに処分したらしい。ブログとかYoutube なんて新媒体が出てくるんだったら、フィルムを残しておくんでした。先見の明のなさがつくづく悔しい。


<<アル・ハンぺル氏とのインタビュー(1)


好きな自作は、たくさん受賞したもの (つづき)


ハンペル「ニ番目に傑作なのは---そうですねえ、ガルフ石油会社のためにつくったキャンペーンがとても気に入っています。
とても成功したものです。

オイル会社が、お客さまと話すもっともよい方法は、製品を通じてお話しするということです。ガルフ・オイル会社


でも二番目に満足のいく仕事といえば、映画スターたちといっしょにやったものでしょうね。
ジャック・べ二一・ショーで、ジャック・ペニーがコマーシャルをやる時に私がそのライターをつとめました。
ダニ一・トーマスのためにも書きましたし、キャロル・チャ二ング、アンディ・グリフイス、ジム・ネイバーズ、シール・ボールなどの人たちのためにも書きました。
そういったショーのために、私はわざわざカリフォルニアまで出むいて、有名なコメディアンのためにコマーシャルを書いたものです。
そういった仕事が私にとって第二に満足のいく仕事でした。というのはそういったスターたちといっしょに働き、彼らが私のユーモアを使ってくれ、私が彼らのコメディを書いたのですから、とても満足感がありました。
私はいわゆるキャスト・コマーシャルというもののライターをつとめたわけです。キャスト・コマーシャルのことを説明しましょう。そうですね、たとえばアンディ・グリフィス・ショーの場合を例にとりましょう。そのショーで店についてのショーをやっているとして、ちょうどショーの真中あたりにグリフィスがサンカコーヒーをわかす場面があり、彼女がサンカコーヒーのことを話すわけです。グリフィスがショーの場面で演じるので、テレビを見ている人びとはそれもショーの一部と思ってしまうわけですよ。それがこのキャスト・コマーシャルのいい点です。


俳優のために書いたもので、もう一つ好きなコマーシャルをあげさせてください。


Y&R時代の最後の仕事でしたが、バディ・ハケットとレイのポテト・チップスのコマーシャルをやりました。
このコマーシャルは私のとても気に入っているものです。バディ・ハケットが火星人を演じました。火星から宇宙船に乗ってやってきて、自分がどこにいるかわからないでいる時に、そのポテト・チップを見つけますが、それをどう扱っていいものやら見当がつかないわけです。それで彼はポテト・チップを目にくっつけてみたり、耳にくっつけたりしてみますが、それが何であるかわからないのです。
最後に口にもっていき、そこであらゆる種類の変テコな音声(火星語)を発するのです。
あれは、いいコマーシャルでした」

レイのポテト・チップス

字幕レイのポテト・チップス---底抜けに食べることはできても、1ヶだけですますなんて、誰にもできっこないんです。


>>(了)


備考DDBの創業者の一人---ネッド・ドイル氏の2007年6月12日の[DDBのクライアントを語る (了)に引用した、ローラ・スカダ・ポテト・チップスの「世界一、音のうるさいポテト・チップス」のセリング・メッセージと比較してみてください。