創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(374)エド・マケイブ(Edward McCabe)氏とのインタヴュー (5)

〔サラダ紅茶〕のCMは、マケイブ氏がヤング&ルビカム社時代に制作したもの。このCMで一挙に名をあげたのです。1本の作品で認められるのは、どの世界にもあることですが、Y&Rのような大組織の中でこれをつくりえたのも驚異です。


スカリ・マケイブ・スローブス(Scali,McCavbe,Sloves,Inc.)社
副社長兼コピー・ディレクター(1968年)

気に入っている2つの作品(つづき)


ケイブ「もう一つの気に入っている広告は、サラダ紅茶のためのコマーシャルでジャック・ウィルバーと数年前につくったものです。
おばあさんたちがオートバイに乗ってドライブインに乗りつける、あのコマーシャルです。
これが好きな理由は、広告に一つの流行をもたらしたからです。今でも、多くの人がコピーしていますからね。これは、裏を返せば、私がこのコマーシャルを嫌う理由にも通じます」


一つの流行をもたらしたというのは、こういう意味だと思います、つまり、コマーシャルにおけるドンデン返しの手法のことでしょう。
このコマーシャルはあまりにも有名ですから、今さら詳述するのも気がひけますが、夜道を10台ばかりのカミナリ族が走ってくる---と思いきや、ドライ・インに入ってへルメットをとると、60〜70歳代のおばあさん連で、元気のいい女性の飲む紅茶ということを見せる趣向のものです。

ライターにとって、自分の創案になるものが流行するのは、面白くもあり、ニガニガしくもあるというのは、実感でしょう。


chuukyuu注】このCMフィルムも、所蔵していましたが、米国ほかの広告に関する研究から手をひくことを決めたとき、海外TV-CM研究家のK氏に寄託してしまいました。1990年ごろまでの多摩美術大学のクラスでは映写していまたから、そのころまでの卒業生は覚えているはず。一度見たら、忘れられない映像だったから---。

(映像)爆走するバイクの一団。ライトの矢ぶすま。ドライブンで休憩。入ってきた黒革ジャンのドライバーたちは---ヘルメットを脱ぐと、白髪の老婆たち。紅茶を注文してくつろぐ。

(アナウンサー)「紅茶を年寄りの飲みものとお考えの方、サラダ紅茶は違います。濃く入れても苦くならない紅茶なのです。ティーバックを、2,3分入れておくだけで、できあがり。サラダ紅茶は選ばれたインド葉のブレンドです。一度試してみませんか」