創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(369)ボルボの広告(24)

どなたもそうなのでしょうか、本を執筆しているときって、一種、神がかり的なヒラメキが降ってきます。40年前、11冊目の著書となった『ボルボ』のときもそうでした。次々と疑問が生まれ、その度にいろんな人に助けられました。このブログでも、「あとがき」を先にご覧にいれて、明日は「序にかえて」という前書きでこのボルボ・シリーズをしめる---なんて発想は、神がかり的としかいいようのないヒラメキです。空振りに終わるのかもしれませんが。 

 

>>『ボルボ〜スウェーデンの雪と悪路が生んだ名車』目次


第4章 「世界最高の安全車」といわれるために
主任テスト技師に安全性を聞く

安全性論議の前から


・ミニ・スカートで乗っても…
・ロードホルディング
・安全性---当然の結果



あとがき


いまはパリのユネスコで働いているらしい、
マチアス・デルミッツェル君−−−

 君がまだ東京にいたころ、私たちは「世界の名車」について語りあったことがあったね。

 君はもう覚えていないかもしれないが、そのとき、君は、ロールス・ロイスとメルセデス・ペン
ツ、そしてボルボの名をあげた。
 米国車を加えなかったのは、ドイツ青年の君らしいと、そのとき、私は感じたが、黙っていた。君の抑揚のはげしい英語でまくしたてられてはかなわないと思ったからだ。

「じゃあ、こんど書く本のタイトルを『名車ボルボ』ってつけてもいいかな?」
と言ったら、君は突然フランス語で、「ビアン・シュール」と答え、
「いつ、スウェーデンヘ行くの? パリヘもくる? ペニと待ってるよ」
と言ったね。

 君もベネディクト・ボハリバン嬢も、気軽に日本へきたりスペインヘ行ったりしているけれど、勤めをもっている私にとっては、ヨーロッパヘ出かけるというのは、たいへんきついことなんだよ。
でも、君の「スウェーデンヘ行くの?」という言葉で、私は、決心した、やっぱり行かなくちゃあって。

 だから、君に話した段階では、まだプランの域を出ていなかったのに、こうして、まあ、なんとか形になったのは、マチアス、まず君の一言のお蔭だと思う。
(せっかくスウェーデンまで行きながら、そのままトンボ返りで帰ってしまって、パリヘ寄らなくて、ごめんね)

マチアス・デルミッツェル君−−−
 君もベニも日本語が読めるんだから、読んでほしい。
そして、君が、ボルボを名車にあげたのと同じ理由で、私が『名車ボルボ』を解説しえているかどうか、採点してほしい。

 しかし、君も知ってのとおり、私は、いわゆるカー・マニ・アでもないし、専門家でもない。ましてや、ボルボを持ってもいなければ、義理もない。ここのところを考えのなかに入れて採点して
ほしい。

 君にも言ったと思うけど、私は、ハッキリした商品が好きなだけなのだ。

 まず、この本が生まれるにあたっての最初の感謝を君に述べるけれど、次の人たちの好意と協力にもお礼を言わせてほしいのだが---。

 というのは、不思議なことに、日本の自動車関係の本には、ボルボに関する記述がまったくと言っていいほど欠けているのだ(注:40年前の当時)。
だから、わずか半行分の事実を確認するために、実に多くの人の手をわずらわさなければならなかったのだから。

 イェーテボイではもちろん、帰国後も10度を越える問い合わせに答えてくれたボルボ本部PR部のハレンボルイ氏。昨年(1967)12月に母になったハレンボルイ夫人(彼女は、金髪碧眼スウェーデソ美人という私の固定観念をぶちこわして、質実堅固、そして教養豊かなスウェーデン女性の姿を示してくれた)。
 米国ボルボ社のラ・マール取締役と、ボルボの広告代理店であったカール・アリー社のアリー社長、および現在の代理店スカリ・マケイブ・スローブス社。
 VWの広告代理店DDBのVW担当マネジャー、ファイン氏。ルノーの広告代理店であるギルバート社のギルバート社長。

 ボルボの輸入元、北欧自動車の青木専務と土屋支配人と前田悦男氏。
 スウェーデソ大使館。
 イェーテボイで私をボルボ・アマゾンに乗せて案内してくれた中村一氏
 そして、資料整理の労をとってくれた中村道子嬢と栗原純子さん。

マチアス・デルミッツェル君−−−
 いつかこんど、君といっしょに、『名車ベンツ』を書こうよ。

追記 自動車用語の表記、訳は大須賀和助氏の『自動車用語辞典』(精文館書店)、
スウェーデンの地名は全国教育図書株式会社発行『ニュー・ワールドーアトラス』地図によった。

【付記】このシリーズのために、縦書きの原文を横書きに変換するソフト『読取革命』の存在を教えてくださったfuku33 さん。あなたのご教示を得なかったら、再タイピングに業を煮やして、3回ともたなかったでしよう。
atsushi さん。あなたの『読取革命』の使用法の指導と、体裁のバックアップにより、明日まで大過なく、つづけられます。
★★★をいつも献じてくださっているブログ友人のみなさん、お励ましにより、明日の[まえがき]までつづけられます。ありがとうございます。 


今年は、ネバネバ塗装の下にさらに
ベトベト塗装で保護を強化しました。


車の底部は一生涯、ほこりやよごれを吸って暮らします。
たいていの車は底部をむき出しにして走るので、いろんな好ましからぬ敵のえじきになってしまいます。
でもボルボの底部には、保護する物が2つもあります。
いちばん外側にあるのは、道路上の水、どろ、凹凸、その他自然の障害物の盾となる厚く硬く黒いネバネバ塗装。
襲いかかってくる狡猾な敵---たとえば塩分など---は突き破ることのできないワックスのようなネバネバで食い止めてしまいます。
今年はベトベトが初登場。ボルボの底部にしかありません。
もちろん、ボルボはすでに半永久的とも言えるほど長持ちするとの評判をとっているので、そんなのもは無用かもしれません。
米国で過去11年間に登録されたボルボの10台に9台が今だに道路を走っているくらいでから。
でもそこが私たちの偉大なところ。ベトベトは私たちが評判を保ちつづけるためのささやかな努力のひとつです。

ボルボ


掲載:『ライフ』誌 1969年4月11日号




Now. Under the special coating of glop
comes the added protection of gook.



The hottorn of a car spends its entire life wallowingin filth.
Since most cars run around with bare bottoms, they're easy prey for all kinds of undesirable elernents.
But the bottom of a Volvo has two things to protect it.
Outermost is a thick, hard, black, glop that shields against water, rnud, stones, humps in
driveways and other natural hazards.
Anything insidious enough to get past that---say, road salt---will he stopped by an inlpenetrable wax-like gook.
Gook is new this year. And available only under Volvos.
Of course, it may seem a bit unnecessary since Volvos already have a reputation for lasting practically forever. 9 out of every 10 Vo1vos registered here in the last eleven years are still on the road.
That's our big virtue.
And gook is just another little thing that keeps us from losing it.


Volvo


LIFE, April 11, 1969

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