創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(321)ボルボの広告(15)


41年前の1967年(昭和42年)10月17日---ぼくが、生まれて初めて、乗用車で安全ベルトを着用した日である。場所はスウェーデンのイェーテボイ。ボルボ本社のハレンボルイ広報担当係が運転する車ボルボに同乗しての、本社屋から工場までの往路。助手席に座って前を見ているぼくに、安全ベルトの装着を終えたハレンボルイ氏が、運転者席から「ベルトを着用してください」と命じた。そう、正しく、命令口調であった。「スウェーデンでは、同乗者の安全ベルトの装着が、義務づけられているのです」 日本車が安全ベルトを装備したのは、それから20年ほどあとだった。


>>『ボルボ〜スウェーデンの雪と悪路が生んだ名車』目次


第4章 「世界最高の安全車」といわれるために

主任テスト技師に安全性を聞く(2)


ムチうち症も100%防止

サリンジャー さて、頑強な車内構造の次には、ドライバー、同乗者の負傷防止です。(下掲の)事故表をごらんになっていただけば、3支点安全ペルトがどんなにに効果のあるものか、おわかりになりましょう。
でも、これだけで十分とは言えません。衝突の際にドアが開かないための装置、事故の時に伸びる安全ベルト---
chuukyuu むちうち症を防ぐことも---
サリンジャー そう、むちうち症は、たいへん危険な事故です。144の背もたれは、首が後へ打ちかえされる事故に備えて、後へしなうように設計されています。つまり、首にかかる圧力が最少ですむわけです。また、へッドレストも備えます。これで、むちうち症に対する安全性が100%保たれるわけです。
chuukyuu  でも、ヘッドレストは特注仕様でしょう?
サリンジャー 背もたれが後へしなう設計は、どの車にも適用されていますが…。
では、事故のときに伸びる安全ベルトにもどりましょう。まず、前面の衝突の際には、体が前へ投げ出されるような形になりますね。このとき、安全ベルトが伸びて体への衝撃を柔らげるので、ハンドルは、エネルギーを吸収するように設計されていなければなりません。と同時に、ハンドルが車の中へ押し上げられないようにもなっていなければなりません。そこで、ステアリング・コラムが2つに分れるようにしました。ですから、エンジン部が後ろー動いても、コラムが分れてすべり、ハンドルで胸を打つ---というようなことがないわけです。
chuukyuu さきほど、ドアのことをおっしゃいましたが---。
サリンジャー ええ。スウェーデンの冬期の気候に合わせて、ドアが、プレート・プッシュ式になつています。普通のノブだと、凍るついてしまって開けられなくなります。144の場合は、小さなプレートで、凍った氷でも打ちくだくことができるわけです。
とにかく、ひどい凍り方ですからね。今朝など、そのいい例でしたよ。まだ私はアマゾンに乗っているのですが、今朝は困りました。でも、ドアは2つありますから、左側のドアを開けることができなかったので、右側から入ったってわけ(笑)。
ハレンボルイ 特別のオイルで暖めなきゃあだめなんですよ。時間はかかるし、腹は立ってくるし、あげくの果てに遅刻してしまうんです。


品質が第一で、安全性は第二

chuukyuu  米国でも安全性が問題になり、各自動車会社ともこの方面の研究が進みはじめているようですが、ボルボの研究との違いは?
サリンジャー 私たちの車の改良点が、米国の安全基準以下だつて話は、聞いたこともありません。私たちがすでに解決してしまった数点のことが、米国で現在問題になっているという話は気聞きましたが---。
chuukyuu  安全性が購買動機につながるかどうかについて---。
サリンジャー 国によつて違うでしょうね。スウェーデンでは、人びとは安全性についてたいへん関心を抱いています。しかし、フランスやイタリアではそれほどではありません。ドイツ---というより、北へ向かうにつれて、安全性を重要視する度合いが高くなっています。でも、一般的に言って、どの国でも、関心は高まりつつあるのではないでしょうか。そう願いたいですよ(笑)。
安全な車は、軽い車よりも、より高価につきます。ジャガイモと同じですよ。もしも私たちの車が競争車よりも100Kg重かったら、数100万円以上高い値段になるでしょう。ですから、値段にふさわしい車にするためにには、それだけ安全性を強調していかなければなりません。安全性を売ることができなければなりません。人びとが、私たちの安全性に対する配慮を買ってくれないとしたら、私たちの立場は、競争車に比べて、良い状況下にあるとは言えないことになります。
chuukyuu  根本的には、性能よりも安全のほうが大切だとお考えですか?
サリンジャー 安全性も大切ですが、スタイルも良くなければなりません。これは。、当然のことですね。見てくれが悪ければ、だれでもホルボのディーラーへ行ってくれませんから。スタイルの問題は、私たちが第一にパスしなければならない門です。それから品質。これもやはり非常に大切な問題ですよ。
今日では、ボルボこそ世界一安全な車だと考えていますが、これだけでは十分ではありません。性能の良い車でなかったら、誰だって買おうとはしないのが当然でしょう? ですから、第一に大切なのが品質です。品質第一、そして安全性が第二



安全ベルトを着用していたものの中で、ベルトの着用を不完全に(ゆるくしていた)ものもあり、このためベルトの効果が発揮されずに負傷してしまった例も多いと報告されている。この場合、安全ベルトが正しく着用されていたら、負傷はもっと軽減したであろうと考えられる。したがって、ベルト着用の負傷者件数の中には、ベルト着用せずのケースとみなした方がよい例もあるということである。



安全ベルトを着用した場合の前座席同乗者の負傷の慶限度を、それぞれの時速段階で記すと、32kmg→63%、48kmg→60%、64km→57%、80km→56%、96km→55% と、いずれの場合にも半減している。
怪我をしたくなかったら安全ペルトを着用することだが、じっさいに着用していたのは、ドライバーが25%、同乗者が30%だという。命知らずのドライブマナーというべきか。


つづく


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久しぶりに、1960年代---カール・アリー広告代理店が扱っていた時代のモノクロの広告作品。このころは、アイデアさえ輝いていれば、性能の良さを訴えるには、モノクロで十分。塗の色なんて、デトロイトにまかせておけばいい。われわれは、アイデアで勝負。読み手の関心は、モノクロだった魅きつけられるさ---といわんばかりでした。

ゴー!


一斉にスタートしたのに10秒後はこのとおり。トップをきっているのがボルボです。ボルボは、いちばん遅れている2台のエコノミーカ-と同じようにリッターあたり10.5km走り、2番手についている3台の普及価格のコンパクトカーより早く走ります。ボルボ社は新発売のステーション・ワゴンも入れて4車種のコンパクトカーを作っています。性能の良さはみな同じです。


ストップ!


時速72kmでブレーキをかけたら、結果はごらんのとおり大差ありません。私たちボルボの仲間は、車は動かすものであると同時に止める必要のあるものであることを常に頭に入れています。ステアリング、ハンドリング、ブレーキング、時速160km出る車なら、これらの性能は良いものでなければならないのです。もし、いまお乗りの車に不満をお持ちでしたら、ニュージャージー州イングルウッド・ハドソンテラス 452番 ボルボ輸入社のマーケティング・マネジャーまでお便りをください。折り返しパンフレットと国内400ヶ所以上あるディーラーのリストをお送りします。私たちは、上の他の5台もあなたのお気に召さない車と考えています。ボルボ




GO!


They all started even, 10 seconds ago. That's Volvo out front. It gets over 25 miles per, gallon like those two little economy cars in the rear and runs away from the other popular-priced compacts in all speed ranges. Volvo makes four compact models, including a new station wagon. They an do thesame thing. Volvo


STOP!


They were neck and neck, doing 45 mph when the drivers hit the brakes. At Volvo, we believe if you make a car that goes, you should make a car that stops. Steering, handling, and braking are what they should be in a car that goes 100 mph. If you're less than enchanted with your present car write to: Marketing Manager, Volvo Import, Inc., 452 Hudson Terrace, Englewood Cliffs, New Jersey. We'll send you brochures and a complete dealer list (there are over 400 Volvo dealers throughout the U. S.). We'll also identify those other five cars. Volvo


つづく