創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(322)ボルボの広告(16)

あのころ---頼まれもしないのに、"creative philosophy 創造哲学" ということを、やたら、わめき散らしていた。日本語で「哲学」というと、なにやら深刻な思考のように思われるが、ニューヨークのクリエイターたちは、「本質的な考え方」といったくらいの意味で使っていた。もっとも、ぼくは、DDBやその他の広告代理店やスタジオの取材から、その組織のクリエイティションにあたっての考え方---と受け取っていた。それが企業になると「企業哲学」というか、「企業風土」「社風」ともいえようか。いまさら、大切にしたい言葉である。


>>『ボルボ〜スウェーデンの雪と悪路が生んだ名車』目次


第4章 「世界最高の安全車」といわれるために

主任テスト技師に安全性を聞く(3)


ボルボは11年もつ

chuukyuu 日本人の常識的ないい方だと、安全性も品質の良さの中に含めてしまいますが…
サリンジャー 品質の良い車でも、安全でないものもあります。
ハレンボルイ 良い品質といっても、安全性が豊富だとはいえないのです。私たちは、高度の良い品質と高度の安全性を、ボルボに織り込んでいます。どちらが大切かなどといえる問題ではないのです。同じぐらいに大切なのです。どちらも欠かせない要素です
サリンジャー 私たちの方針は、品質(quality)、安全性(safety)、経済性(economy)です。他の車よりもほんのすこし高い値段ですが、いちど買えば、持するのにあまりお金がかからない。ご存じのように、ボルポは(スウェーデン国内のみで)、特別の補償を行なっていますから---。ガソリンの消費も少ないし、修理もめったに必要としません。ボルボは長い長い間使えるんですから…。
chuukyuu アマゾンは11年でしたね。
ハレンボルイ この数字について説明しましょう。これは、スウェーデンの統計から出た数字です。スウェーデンの古い車の年式の統計をとってみれば、持ちぐあいがわかりますが、ボルボの場合は、たいていの車が11年かそれ以上、使われていたのです。しかし、この数字は、年によって違ってきます。というのは、ある年には新車がどっと買われたり、次の年にはそれほどでなかったりするからです。したがって、すごく複雑な計算方式なのです。でも、ボルボは、スウェーデンを走っている他の車よりも長持ちするというのは真実です。
現在の数字は、11年をちょっと割っています。毎年変わった数字になることはご理解いただけますね。これまでは、11〜13年の間を動いていました。つまり、人びとがこの新しい車144を、前の古い型のと同じやり方で維持していけば、同Uぐらいの数字が出るはずです。同じ構造、同じ品質なのですから---。
もっとも、最近では、人びとが新車に乗り替える率が高くなっていますから、この数字は小さくなる方向に向いていると思います。将来のことはいえません。でも、144も、古い型と同じぐらい長持ちする---ということは、はっきりいえます。


つづく



あなたのシンボルは
もうステイタスを失って
しまいました。


あなたの車も、かつては地位を象徴していたことでしょう。
でも1969年型車が出た今は事情が一変してしまいました。
あなたはもう先端をいってはいません。
今や100万人もの新型車のオーナーに先を越されてしまいました。
合衆国のぎっと200,000人のボルボのオーナーたちが、あなたのジレンマ横目に見て、内心ほくそ笑んでいることでしょう。
あなたが流行を追っかけながら貧乏になるのではないかという予感におののいているのに、彼らはボルボを持ち続ければ金持になれるという予感を楽しんでいるからです。ボルボは持ち続けられるようデザインされています。
毎年見かけを変えたりしません。だから去年の型を運転していても誰にも気ずかれません。
ボルボは持ち続けられるようにつくられてもいます。スウェーデンでは廃車になるまで平均11年は運転されています。
米国でもそんなにうまくいくどうかは保証できません。でも11年も長持ちさせこともないかもしれないのです。
ボルボを5年持ち続けてください。それをたとえば2年月賦にすると、3年間は月賦に追いまくられずにすみます。その分自分の貯金に回せるわけ。
そうなって初めて誰にも自慢できるステイタス・シンボルができたとわかるでしょう。
あなたを金持ちに見せかけるのではなく、実際の金持ちにする車。ボルボ




Your symbol
has just lost
its status.


Your car may have stood for something in its time.
But things are different now that the 1969s are out.
You are no longer the man to be kept up with.
You are now the man some ten million new car buyers will keep ahead of.
To the approximately 200,000 Volvo owners in the United States, your dilemma will probably be'met with a certain degree of amusement.
Because while you face the prospect of becoming poor trying to keep up, they face the prospect of becoming rich keeping their Volvos.
Volvos are designed to be kept.
They don't get a new look every year. So if you're driving last year's, nobody's the wiser.
Volvos are also built to be kept.
They're driven an average of eleven years in Sweden before people give up on them.
We don't guarantee Volvos will do that well here. But then, you don't have to keep one eleven years to do well by it.
Keep a Volvo just five years.
Pay it off in, say, two. That leaves three years without car payments.
Three years to make payments to yourself.
That's when you realize you've got the greatest status symbol of them all.
A car that makes you rich instead of merely making you look rich.


つづく