創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(303) [クリエイティブの核心](8) by Bill Bernbach

バーンバックさんのすばらしい、含蓄に富んだスピーチも、あと2日で終わります。ぼくの記憶では、あと1件、来日して、日本経済新聞社のホールでおこなわれたのがあります。『日経広告手帳』に収録されていましたから、いつか、許諾がとれたら、転載させていただきましょう。ご意見もありました---こんどのような分載でなく、1回にまとめよ---と。そうすると、読みとばされる危険も大きくなりましょう。1日に1項ずつ、6分間、そのことについて考えてみるのも、自分を高める一方法ではないでしょうか。生意気を言ってごめんなさい。

ソフト・ウイスキー

ソフト・ウィスキーはウイスキーにできることならどんなことだってできます。もっとソフトに。




Soft Whiskey


does anything any other whiskey can do. It just does it softer.

chuukyuu注】これはなんというほどのことのないブレンデッドの低価格ウイスキーです。それをDDB側が「ソフト・ウイスキー」と呼び名を変えて、知名度と愛飲度をあげました。シーヴァス・リーガルの「ライト」にあやかり、さらに一歩すすめたのですね。その主はコピーライターのロン・ローゼンフェルド氏でした。
>>ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー


「クリエイティブの核心」
ウィリアム・バーンバック氏 (坂本登 訳)
AAAA(全米広告代理業協会) 1971年 年次総会スピーチより


クリエイティビティを育てるには---


では、この技術をどのように導き、磨きをかけたらよいのか?
私は、ある一点については確信がある。クリエイティブの技術のない人にエディター役をやらせてはいけないということである。クリエイティブの経験のない人がエディターをやると、次のようなことが起こる。

(1) コピーライターやアートディレクターが、彼を自分の上司と認めない。
(2) エディターが彼らと同種の人間でない。そのために彼らが取り組んでいるスタイルやクリエイティブ技術の問題に敏感に反応しないという理由でエディターから学ぼうという気にならない。

したがって向上しない。
クリエイティブ・マンにとって方針、個性がはっきりしていて刺激になる環境ほど向上心をふるいたたせるものはない。目的と目標がはっきりしている雰囲気ほど向上心をふるいたたせるものはない。 これら目的と目標、刺激、指導方針は、人によって意見が異なったり、個性や見解の差が生じやすいクリエイティブ・チームからは得られない。
私は、現代のビジネス社会において、ある種の広告主と外部のクリエイティブ・マンの間に生じつつある新しい直接的な関係をアキレス腱だと見ている。
これらのクリエイティブ・マンがいかにすぐれていても、彼らは強力な代理店組織も名声も持たないから、生き残るため,、食っていくために、信用できない指導もあまんじて受け入れることになる。
結果は明らかである。
確信のない仕事、効果のない仕事、個性のない仕事、暖かい説得ではなく、冷たい計算の仕事になってしまう。


chuukyuuアナウンス】

明日は、
  叱っている時間はない