創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(165)フォルクスワーゲンの広告(67)


製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ・シリーズをやっています。〔全貌を見せない〕をどう受け取るかで取捨の範囲がことなろうが、ま、お手並み拝見。何点つづけられるか? あなたの予想は---5点? 7点? 9点?  (掲出分はキャンペーンが始まって1年半目ぐらい---つまり、1960年ごろの掲載)「へェッ。ピンポケ写真って技(テ)もありか」と驚嘆させた世界最初の広告。
「おもしろい」 「すばらしい」 「刺激になった」 「つづけろ」とお感じになったら、星マークの添付 ☆ をお忘れなく。hatenaブログの友好マナーとなりつつあります。 




フォルクワーゲン試験車X-93号


1台のフォルクスワーゲンを見れば、全部のフォルクスワーケンを見たことになると、お考えになっているでしょう。
これは違うんです。
この試験車をお見せできるのは、1年か2年先でしょう。
もっと先かも知れません。
この試験車が完ぺきでない限り、締切りに間に合わすために発表するようなことはありません。
一例を挙げますと、私たちは、悪路におけるハンドルまわりの振動を除くため最終嵌合部のダンパを改良しました。新型発表時期ではない、'60年3月のことです。
1つの改良が次の改良をよぶこともよくあります。
私たちは、'59年に北部スウェーデンで新しいキャブレタ---をテストし、それにあうデアイサ(霜取り装置)をつけ加えました。
この2つは現行のフォルクスワーゲンにもついています。
これらが特別オプションでない点に注目してください。ちゃんと装備されて1,675ドルの中に含まれているんです。
さて。?-93号にはどんな改良点があるか?
別にどうってことはありません。
VWは、実用面で、信頼の点で、満足性を改善するだけのことですから。
それらが実際に車につけられるまでには欠陥は1つもなくなっているでしょう。




The experimental X-93 Volkswagen


You may think that when you've seen one Volkswagen you've seen them all.
But this one is different.
It has some features that may not show up on production models for a year or two.
Or ever.
If ond when we add them, it will be only because they work perfectly, not because
We have to meet a deadline.
For example: We developed a damper that took the last bit of vibration out of the steering wheel on rough roads. We added it in mid-year: March of 1960.
Often, one refinement leads to another.
We tested a new carburetor in North Sweden in 1959 and added a de-icer to go with it. They are both on the current VW.
You'll notice that these are not extra-cost options. They are part of the car and so included in the price: $1,675.
What does the X-93 have?
Nothing earth-shaking.
Improvements that will make the VW even better. In performance. In reliability.
In comfort.
And by the time they're on the car, there won't be a bug in them.


この広告を初めて見たのは、48年前、日本デザインセンターでト○タ車の広告のコピーチーフをしていた時でした。
ピンボケの写真が、なにごともキレイキレイを旨とする広告写真として使えるなんて---頭をガーンと殴られた気がしました。

その後、米国VWの広告をつくったDDBチームのアートディレクターの一人---シローイッツ氏が、ベター・ビジョン協会(全米の眼鏡レンズとフレーム・メーカー、および眼鏡店の連合体)の社会奉仕広告で、右の---黒板の字がピンボケの写真を掲示ジョニーはなぜ読めないか---頭のいい子なのに、授業になるとボーッとしている。黒板の字が読み取れないのです。検眼して眼鏡をかけたら、読みとれるようになり、成績もあがった」という広告に転用しました。("LIFE" 1963)

いらい、どんな時にピンボケ写真がなんの広告に使えるか、考えています。 自動手ぶれ防止つきデジカメとか---。