創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(211) ボブ・ゲイジについて。そしてボブ・ゲイジとの会話(3)

   『CA(Communication Arts)』誌 1966年 Vol.2より

DDBのクリエイターのクリエイティヴ論は、誰に聞いても、ほとんど似ている。だから、一人にきけば、全部分かった---と思いがちだ。じっくり聞いていると、クリエイターごとに微妙に違うことがわかり、それがその人の肉体を通してでてきたDDB論だと察しがつく。人はみな違うのだ。「わかった!」なんてかっこうよく言うのは、自分の貧しいレベルでしかわかっていなことを証明しているにすぎない。その発言は、不遜としかいいようがない。

ゲイジのバーンバック

「ビル・バーンバックは、私の知るかぎり一番すばらしいセールスマンです。見込みのあるクライアントと話すときには、共通な点:2人のあいだに同意しあう点があるかどうか見つけるように会話をもっていきます。同意しあえる点を見つけると、腰を入れて始めるのです。ビルは自分がしていることをとても強く信じているので、ビルの熱意が相手を圧倒してしまいます。ビルは伝道師にもなれた人です。それも偉大な伝道師に。いま、ビルは広告の魂を救っています」

コピーのアート論

ここで、ゲイジについての会話にフィリス・ロビンソンに加わってもらった。この17年間にわたる2人のコピー=アート・チームで、彼女とゲイジは100以上のキャンペーンを一緒にやってきているのである。
「ボブと私は、お互いに大変長い間、親しく仕事をしてきたので、2人だけに通用する言葉を持つようになつたほどです。
私たちのうち、どちらかが、片方の眉を上げれば、もう一方は何も言わないでも、その意味を理解できます。今日では、ボブはあまりにもたくさんのアカウントに従事しているので、彼をとらえるのが大変なことがよくあります。でも、2人が寄れば、ブンブンとやにわに景気づきます」
「ボブと一緒に働くことで、一番刺激になるのは、彼がいつも変化を求めているということです。彼はきまって私たちがもうすでに仕上げてしまった作品には満足をいだきません。典型的なゲイジの言葉は『あれはもうやりあげた。何か変わったことをやろう!』です」
ロビンソン夫人は、現在ゲイジと組んでポラロイドの印刷媒体とTVをすべて(国際をのぞいて)やっている。
ゲイジとロビンソンのTV-CFの第1作は、いまでは古典ともなっている作品であった。これは「同じコピー=アート・チームが印刷媒体もTVも両方を手がけること」というDDBの理論の例外作品でもある。そう、ケムストランドの「足もドレス・アップしなければレディとは言えません」というジュディ・プロタスのヘッド・ラインを基にしていたものだ。
この違反が成功したにもかかわらず、ロビンソン夫人は、ワン・チーム理論の熱烈な支持者であることは無変わらない。ロビンソン夫人は言う。
「印刷媒体とTVのキャンペーンを創る時には、あなたはそれら感情的な投資をするはずです。つまり、あなたがそれを他の媒体に移入した時に感じる一種の著作者の誇りといったようなものです。もし、他の人が移入をしたら、その人はあなたのように感情的に熱中はできません。一級の印刷媒体のコビーライターやADなら、一級のTV-CMを創ることは、ほとんどの人が学べるはずです。TVにはドラマ性と動き、そしてショー的なある種のフィーリングが必要なことをのぞけば、要求されることは全く同じといっていいはずです」
「もし、私の言葉を引用なさるのでしたら、この事を言うのをお忘れなく、“ボブ・ゲイジがDDBとして広告業というものにしてきた貢献は、評価しかぜたいほどのものです。数え始めたら仰天するくらいのものです”」



(左)旧式の天輪はまだ手巻き、自動巻き、電気時計にも用いられています。アキュトロンは天輪が不要になりました。


(右)アキュトロンのチューニング・フォークが時間を完全に正確にしました。今までにない正確さの保証つきです。


私たちは、アキュトロンを時計とは呼んでいません。時計をすすわたり遅れさせたりすせるものはみんな取り去ってしまいました。アキュトロンは、チック、クックとはいいません。ブンプンいいます。耳のところへもっていってみてください。(不気味です)。
でも、まず重要な質問にお答えしましよう。どんな種類の時間を保つのでしょう?
どんな普通の時計でも、けっして成し遂げることのできなかったことを、私たちは二つ宣言できます。
1. 誤差は1日2秒以内(実際には1秒か、全然狂わないほうが多い)。
2. しかも、このタイムピースの動くかぎり、 この正確度を持続。
米国政府がどうして人工衛星に、普通の時間装置の代わりに、アキュトロンの機械装置を使うのかお分かりになったでしょう。
(そして空軍がなぜX−15の全パイロットにこれを支給しているかもお分かりですね。天文航法にこれを使っている人がたくさんいます)。
秘密は、このすばらしいチューニング・フォークの震動にあります。1秒につき360震動します。(普通の時計だと、1秒を5つにしか分割できません)。
この原理は、ただアキュトロンの刻む正確な時をもたらすだけではありません。このタイムピースが普通の時計によく起こる部品の取り替えをしなくてもいいようにしているのです。
たとえば、しみほどのほこりや固まった時計オイルが時計についただけで、日に数分の狂いが生じます。天輪や心棒、スクリュー、バネがすり切れても、同じようなことが起こります。
アキュトロンのタイムピースには、こういったことがまるで起こらないのです。
第一、このタイムピースには動く部品はたっの12しかないのです。 そして取り替えなければならないのは、ただ一つ、電池だけ(しかも電池の寿命は1年なのです)。
手短にいえば、いつもの掃除代や交換部品代ことは、まるっきり忘れてしまってけっこうなくらです。時間を合わせることも忘れていただいていいように。
(アキュトロンの持主の方は、こんなことも言ってもくださいました。「こんなにあることを確信していられるのは、なんか奇妙な感じですね」



アキュトロンが出て、35万人が時計をやめました。


時計ではたただ、4時30分ということしかわかりません。アキュトロンのタイムピースだと、4時19分13秒までわかります。(略)



あなたの時計は、狂うべき宿命をもっています。
アキュトロンは、違います。

旧式の天輪はまだ手巻き、自動巻き、電動時計にも用いられています。
アキュトロンには天輪が不要になりました。
アキュトロンのチューニング・フォークが時間を完全に正確にしました。
今までにない正確さの保証つきです。
遅かれ早かれ、あなたのお持ちの時計は、その生命を終えるまでに、24時間くらい遅れたり進んだりします。
時計は、相互に作用しあって時を進めるたくさんの部品からなる小さな機械装置だからです。
いまや電子で時をすすめるものと比べると、間の抜けた装置になりさがってしまいました。アキュトロンは、電子で動きます。
電池が小さな回路を通してチューニング・フォークを操作します。
時間はこの小さなチューニング・フォークの振動できざまれます。1秒に360回夜勤します。つまり1秒をとても小さく分割するわけ。
このおかげで、計時がどんなに正確になるか---想像以上です。
誤差は1日に2秒以内。これは私たちの保証つきです。たくさんの人がアキュトロンをお持ちですが、誤差はたったの1秒か、全然ないそうです。
そして、今では米国政府は人工衛星にアキュトロン装置を使い、Ⅹ-15の全パイロットにアキュトトロンを支給しています。みんなアキュトーロンを手にして上気嫌のようです。



アキュトロンは、チックタックとはいいません。
チックタックいってきたら、狂ってる証拠です。

時計は、チック、クッタいいます。
アキュトロンには、時計の部品は全然使われていません。
その代わり、毎秒360回の変わらない振動をするチューニング・フォークを利用しています。
(人工衛星のタイマーにも同じ装置が使われています)。
1ヶ月に1分の誤差しか出ないことを私たちは保証できます。
125ドルもしてるのに狂ってもいられませんからね。

日本デザインセンターでコピーチーフの1人だった30歳のころ、ライバルL社の人が、ブローバ社の機械部が透けてみえるアキュトロンをしているのを見せつけるのですね。
差をつけられたな---なんて思わされたのは、若かったんですね。くやしいけど、そう思わせるだけの魅力的な製品でしたよ。「買える身分になろう」って奮起しましたものね。