(152)レン・シローイッツ氏のスピーチ(12)
当時---DDBクリエイティブ・マネージメント・スーパバイザー兼副社長
(1969年退社し、ハーパー・ローゼンフェルド・シローイッツ社の共同経営者)
"My Graphic Concept" Lecture by Leonard Sirowitz in Zurich 1967 Spring
1967年春、チューリッヒでの「マイ・グラフィック・コンセプト」と題するスピーチ。氏の快諾を得て『DDBドキュメント』(誠文堂新光社 ブレーンブックス 1970.11.10)に翻訳掲載したものの転載。
レン・シローイッツ氏のスピーチ (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)
【レクチャー 承前】
SANE(核使用規制全国委員会)
SANE---セインはDDBにとって本当の意味でのアカウントとはいえませんし、現在はもう関係がありません。
彼らはDDBに助けを求めてきたのです。
それは世界が現在とは異なる種類の混乱の中にあった時代でした。
米ソは水爆の実験を行ない、これが続けば大気汚染が心配だといわれた時代でした。
中国が独自の核兵器を開発してその使用をほのめかした時期、フランスが彼らの爆弾の実験を始めた時期でした。
セインは健全な核政策に立ち、 ビジネスマンや数字者、知識人それから一般の人びとの集りでした。彼らはそのお金と時間をよりよい世界のために惜しみなく費やしている人びとの集まりでした。
彼らはDDBに助けを求め、DDBはそれを無料で提供ししました。
彼らは、広くキャンペーンを起こしたい、一般の人びとにこの件に対する関心を持たせたい、不戦主義があまりにはびこりすぎている。人びとに下院議貝に対して手紙を書かせたい。そして全世界を含む「核実験禁止条約」の成立に向かわせたい、といいました。
私たちは喜んで援助しようと伝えました。
皆さんがこれからごらんになるのは、時勢にのっとって制作されたいくつかの広告です。皆さんに製品のために働くことは,、製品そのものよりもずっと面白い仕事であると申し上げます。
世界に影響を与えるために、あなたの知識と技術を総動員するのです。
それは政府の高官でもなければ、よりよい世界のために、人びとを何かの目的に向って動かし、世界に影響を与えられるような地位にいるわけでもない個人にとっては、めったにない機会です。
これらの広告に関係したことは、ぼくの経歴のうちでも、またとない経験となるでしょう。
最初にお見せする広告は「スポック博士は憂慮しています」です。(スポック博士はスイスのべッヒャー博士と同じような人です)。
この広告の反響は信じがたいものでした。
『サタデー・レビュー』の編集長ノーマン・カズンズは、フルシチョフチとの会見の晩、米国民が核実験禁止条約についてどう考えているかを示すために、この広告を持参しました。ぼくは、この広告が条約の締籍に何らかの力を持ったものと考えたいのです。
スポック博士は憂慮しています
もし、あなたがスポック博士の本で子どもを育てたことがおありなら、博士があまり小さなことにはこだわらない方だということをご存じと思います。
博士は、勤め先のオハイオ大学から、大気圏内核実験の再開について、つぎのようなメッセージを送ってきました。
「私は憂慮しています。
過去の実験の影響だけでなく、果てしない将来の実験の見込みについてもです。
実験が重なるにつれて、子どもにたいする悪影響もふえます…米国でも、世界の国々でも。
こんなことをする権利がいったい誰にあるというのでしょう。
そんなことは政府に考えさせろ、という人もいるでしょう。その人たちは政府がこれまでの歴史の中で犯してた悲劇的な大間違いのことを忘れているのです。
また、よりすぐれた軍備が問題を解決してくれるという人もいます。その人たちは正義の強さを信じている人びとを軽蔑します。
その人たちは、あのかよわい理想主義たちが鉄の布となってインドからイギリス人を追い出したことを忘れているのです。
どの道をとっても、危険はあります。もし、将来に横たわる大きな危険をすこしでも少なくする希望があるならば、私はあえて今日の危険をとります。
もし、私が将来、何かの誤算で滅ぼされることがあるなら、私は、幻の要塞に座ってなすすべもなくただ敵を非難している時よりも、世界の協力を求めるリーダーシップをとっている時に殺されたいとおもいます。
モラルの問題としても、私はすべての国民が自分自身の考えを持つ権利だけでなく責任も持っていると信じます。
医学博士 ベンジャミン・スポック」スポック博士は、核使用規制全国委員会のスポンサーにーなりました。
以下、SANE(核使用規制全国委員会)が何を表すかという簡単な説明とほかのスポンサーを列記。
やがて、こうなるというのか?(大要)米ソの核実験によるアイオディン131の食物に対する危害を述べ、抗議文を大統領へ、あなたの議員へ、新聞社へ、フルシチョフへ送れと強調。さらに私たちはこの広告ほもっと多くの新聞に掲載したいから寄金をしてほしいと訴え、核使用規制全国委員会への入会をすすめる。
【参照】「スポック博士は憂慮しています」の広告で、スポック博士が実際にペンをとってコピーを手書きするようになった経緯を、コピーを担当したデイブ・ライダー氏が打ち明けています。もっとも、バーンバックさんの脇からの大きな手助けがあったためですが。
>>デビッド・ライダー氏 単独インタヴュー(2)
ぜひ、併読して、こういう抗議広告(プロテスト・アド)をつくるときのご参考になさってください。