当時---DDBクリエイティブ・マネージメント・スーパバイザー兼副社長
（1969年退社し、ハーパー・ローゼンフェルド・シローイッツ社の共同経営者）
"My Graphic Concept" Lecture by Leonard Sirowitz in Zurich 1967 Spring
1967年春、チューリッヒでの「マイ・グラフィック・コンセプト」と題するスピーチ。氏の快諾を得て『DDBドキュメント』（誠文堂新光社 ブレーンブックス 1970.11.10）に翻訳掲載したものの転載。
Mobil のキャンペーン作品例（3）
死が2人を別つまで
詩の中でなら、愛のために死ぬのは美しいことかも知れません。
しかし、車の中で、愛の行為のために死ぬのは、醜く愚かしいことです。
それなのに、車に乗ること自体にではなく、車の中での恋愛に夢中になっているカップルを、どんなに多く見てきたことか。あなたご自身も恋を楽しんできたことか？ 死と肩を並べいる生活に慣れっこになってとまったからでしょうか？
私たちは、若者を鋼鉄の山の中に埋葬することを暗黙のうちに認めている国民なのです。しかも、向こう見ずな若者だけでなく、純粋無垢な子どもたちまでも。
だれもがこの事実に驚くばかりで、どうしていいか分からないでいるのです。しかも、信じる信じないはともかく、15歳から25歳までの若者の死因の筆頭は自動車事故だというのに。年に14,450人の若者が車の中で死んでいるのです。
親たちは心配して、強引に車のキーを採り上げます。
保険会社も警戒して、高い保険料を請求します。ドライヴァーのたれひとりとして思いとどまらせることができないのに。
（冷静な心をもった）統計学者でさえ、1970年までに毎年14,450人の若者が車の中で死んでいくという数字を明らかにして警告を発しています。
もし、毎年14,450人の若者が交通事故で死んでいくとしたら、これはベトナムでの若い犠牲者の数をはるかに上回っていることになるのです。
私たちが国に納めている税金は、小児麻痺一掃のためだけにしか使われていないということなのでしょうか？
あるいはジフテリアや天然痘を根絶するための医療科学のためだけに？
ハイウェイでの若い犠牲者を出さない社会とは、いったいどんなものなのでしょうか？
これこそ現在の米国がかかえている大きな問題なのです。
信じられないことですが。
若者はベスト・ドライヴァーであるべきです。悪質なドライヴァーでなく。
彼らは鋭い視覚、すばらしい反射神経を持ち、細かく神経を配れるのです。多分、車の機能にも精通しています。
だからなんだというのです。
彼らは大バカ者で勉強できないというのですか？ 利口すぎて分かりきったルールに従うことができないというのですか？ 自信過剰になるのでしょうか？ なさすぎるのでしょうか？ それとも、単に未熟な若者だからなのでしょうか？
遅すぎたという事態を招く前に、思慮分別をらきまえた若者になってもらにはどうすればいいのでしょうか？
よりよいドライヴァーになってもらうために、学校に講座を設けてみっちり教育するというのもひとつの方法です。それは、放課後でも、仕事が終わってからでも、夏の間でもいいのです。
免許交付をきびしくする。悪質なドライヴァーを罰するかわりに優良ドライヴァーを表彰する。交通法規を全国統一にする（現在は州によって異なっています）。ラジオやテレビ、新聞などを通じて交通問題をとりあげさせる。独りよがりを少なくする。
以上は私たちが提案かるさほど難しくない解決策の一例です。
若者に運転を止めさせることはできません。また、そうすべきでもありません。
安全運転技術を身につけたドライヴァーという仮定の上に立って彼らを教えれば、それだけ彼らはそうなろうとするはずです（この教え方は医学や法律に用いられているのに、なぜドライヴァー教育には適用しないのでしょうか）。
私たちモービルは、宣教師でも教師でもありません。私たちは生活に必要なガソリンとオイルを売っているのです。私たちはあなたに可能性のある顧客になっていただきたいのです。
きょうの顧客でなく、明日のお客さまに…。私たちは、若者からお年寄りまですべての方々に、万人平等の与えられた明日を自分のものにしていただきたいだけです。
Mobil 私たちはあなたに生きていていただきたいのです。
TV-コマーシャル
夜の街路をドライヴする若いカップル。
カーラジオからはビートのきいた音楽。
フロント・ガラスに流れる光線。女性は、運転している彼をしきり愛撫。
頬や首筋にキス。（ここまで45秒）
ついに、彼が答えて唇を合わせた瞬間、停止した音楽。
フロント・ガラスは血のような赤。
驚きいて上げた女性の腕と頭部がシルエットなってゆつくり回転。
それにかぶせて、アナ。私たちはオイルとガソリンを売るのが商売です。恋にもドライブにも反対ではありません。
でも、それをいっしょにやっては困ります。
モービルはあなたに生きていていただきたいのです。
>>この広告について、コピー担当のボブ・レブンソン氏のコメント
