創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(542)Logical---And Also Good  (了)

『DDB NEWS』1972年4月号の表紙です。
底部に、'DDB:A Three Niche Agency(3つの胸像のある広告代理店)'とあります。
左から、ビル・バーンバックさん、フィリス・ロビンソン夫人、ロバート・レブンソン氏で、レブンソン氏がこの年の3月28日にニューヨーク広告作家協会から「名誉の殿堂」入りの指名を受けたので、1964年のバーンバックさん、1968年のロビンソン夫人につづいて3人。
じつは、DDB育ちのジュリアン・ケーニグ氏の1966年(退社してPKLを創設)、前年1971のロナルド・ローゼンフェルドもDD時代の功績が認められたと見ると、これまでの15名の受勲者中、5名まで---と誇示したいところでしょう。DDBのほかの広告代理店では、それぞれ1名かぎりなのですからね。もっとも、「名誉の殿堂」入りの指名がどのようにして決まるのかは、明らかではありませんが、なんにしても偉業であり、めでたいかぎりです。


エンゼルがささげているのが、なんと、電働タイプライター。パソコンは未登場てした。芸がこまかい。


chuukyuu注】『DDBニュース』の表紙で、シーヴァス・リーガルの瓶を柱頭に載せた広告をおもいだしました。『ニュース』と広告とどっちが先なんでしょう? atsushi さん?

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きのう の、つづき



サラ・リー(食品)、モービルもボブの代表作である。


死が2人を引き裂くまで


詩の中でなら、愛のために死ぬのは美しいことかも知れません。
しかし、車の中で愛のために死ぬのは、醜く愚かしいことなのです。
それなのに、車に乗ること自体にではなく、車の中での恋に夢中になっているカップルを、あなたはど
けだけ多く見てきたことか? あるいはあなたと自身が恋を楽しんできたことか? 死と肩を並べている生活に馴れっこになってしまったからでしょうか?
私たちは、若者を鋼鉄の山の中に埋葬することを暗黙のうちに認めている国民なのです。しかも、向こう見ずな若者だけでなく、純粋無垢な子どもたちまで。
だれもがこの事実に驚くばかりで、どうしていいか分からないでいるのです、しかも信じる信じないはともかく、15歳から25歳までの若者の死の筆頭は、自動車事故だというのに。
親たちは心配して、強に車のキーを採り上げます。保険会社も警戒し、高い保険料率を設定します。運転者のだれひとりとして思い止どませることができないのです。
(冷静な心をもった)統計学者でさえ、1970年には、毎年14,450人の若者が車の中で死んでいくいう数字を明らかにして警告を発しています。
もし、 毎年14,450人にのぼる若者が交通事故で死んでいくとしたら、これはベトナムでの若い犠牲者数をはるかに上回ることになるのです。
私たちが国に納めている税金は、小児マヒ一掃のためだけにしか使われていないということなのでしょう?
あるいはジフテリア天然痘を根絶するための医学のためだけに?
ハイウェイでの若い犠牲者を出さない社会とは、いったいどんなものなのでしょうか?
これこそ現在の米国がかかえている大きな問題なのです。
信じられないことですが。
若者はベスト・ドライバーであるべきです。悪質ドライバーではなく。
彼らは、鋭い視覚、すばやい反射神経をもち、細かく神経を配れるのです。多分、車の性能にも、より精通してるはずです。
だからなんだというのです。
彼らは大パカ者で勉強できないというのですか? 利口すぎて、分かりきったルールに従うことなどできないというのですか? 自信過剰になるのでしょうか? なさすぎるのでしょうか? あるいは、単に未熟な若者だからなのでしらょうか?
手遅れの事態を招く前に、思慮分別をわきまえた若者になってもらうにはどうすればいいのでしょうか?
よりよい運転者になってもらうために、学校に講座を設けてみっちりと教育するというのも一つの方法です。放課後でも、作業が終わってからでも、夏休みでもいいのです。
免許交付をきびしくする。悪質な運転者を罰するかわりに優良な運転者を表彰する。交通法規を全国統一する(現在は州によって異なっています)、ラジオ、テレビ、新聞を通じて交通問題をとりあげさる。独りよがりを少なくする。
以上は、私たちが提案するさほど厳しくない解決策の一例です。
若者に運転を止めさせることはできませんし、そうすべきでもありません。
安全運転技術を身につけた運転者という仮定の上に立って彼らを教えれば、それだけで彼らはそうなろうとするのです(この教え方は医学や法学に用いられているのに、なぜ、運転者教育には適用しないのでしょうか)。
私たちモービルは、宣教師でも教師でもありません。私たちは生活に必要なガソリンとオイルを売っていまのです。私たちは、あなたに可能性あるお客さまになっていただきたいのです。
今日のお客さまではなく、あすのお客さまに---。
私たちは、若者からお年寄りまですべての方々に、万人平等に与えられた明日を自分のものにしていただきたいだけなのです。

モービルは、あにたに生きていていただきたいのです。



私たちは、ガソリンとオイルを売るのが商売で、恋に反対しているのではありませんが、ドライブのときには同時になさらないでください。


ビル あなたに生きていていただきたい。

クリエイティブ・ディレクターへの就任に加えて、ボブはDDBの執行役員会のメンバーにも選ばれ、今年の株主総会では、真っ先に登場して以下のようなスピーチを行った:


「広告代理店で大切な仕事は、すばらしい作品を創ることだということは、いうまでもありません。


「ご存知のように、私たちは、すこぶるつきの、すばらしい作品を創ってきていました。 それらはベストでした。

「受賞作にかぎりません。受賞しないものでも、大きな成果をあげています。

「いうまでもなく、賞が広告代理店の評価を決めはしません。決め手は、結果(販売)です。

「ほとんどのクライアントがおつぶやきになっています。『やれやれ、売り上げの1〜2パーセントを投じて、広告代理店の壁に受賞の額をふやしただけとはね』と。

「真実は、正反対の側にあります。

「幸いなことに、私たちの場合、受賞と販売は歩調がそろっていました。

「いえ、強弁しているのではありません。真実を申し上げています。

「私たちは、販売を伸ばすから、そうしているのです。決して、はずしません。そう、結果がよくなければ、やりませんよ。

「賞は、たくまずして私たちの手元へやってきています。壁には、まだ、余裕があることでもりありますしね。

「したがいまして、クリエイティブ・ディレクターとして、これから先、私がやることは、新しさの最先端の座をどこにも渡さないための困難なディレクティング仕事です。まったく新鮮な見てくれ、独創的、きわだっている、クライアントに名声と成果をもたらす感動的な出来栄え---期して、見守っていてください。

「過ぎ去ったことには見向きもしません。昨日までのDDBは封印しましょう。

「代わりに、これからしなければならないことを話しあいましょう。

「これだけを、これから、言いつづけるつもりです。

ロバート・レブンソン氏とのインタビュー

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