創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(138)レオン・メドウ氏とのインタヴュー(7)

    (Mr. Leon Meadow Vice-President, Administrator Copy Dept. DDB

6分間は5分より長く、10分より短い、1時間の10分の1です、読むのは6分。しかしいつか、この道草について60分考えることになります。あるいは6日間…


レオン・メドウ氏とのインタヴュー
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DDBにおけるコピーライターの採用

chuukyuuDDBで、新しいコピーライターを採用する時のケースを話してください」
メドウ「新しい人を採用する時、経験がある、ないにかかわらず、とにかく一定の要件は同じです。イマジネーションと新鮮なアプローチ、売ることに関してのコンセプトの力を持っていること、殊に、そのコンセプトを実行にうつす場合、これに対する信頼性のあるものをつくるかどうかということですね。そういうことは、経験者が見ればすぐわかります。
また一方、初心者を選ぶ場合には、しっかりと厳選しなければなりません。注意深く採点して、その中から選ばなければなりません。
これはキザっぽく聞こえるかもしれませんが、初心者というのはひとつの投資でもありますから、サラリーははじめは非常に安いんです。
でも、その人たちへはサラリーは安くしか払っていませんが、その上の監督者にとっては、その人たちを監督指導するということで大変なエネルギーを使うわけですから、会社から見れば、やはりひとつの投資ということになります。
そしていちばん初めのトレイニーという段階から、ジュニア・ライター、さらにはシニア・ライターというところまで育っていかなければなりませんね。
現在、スーパバイザーのレベルでは、サラリーは非常に高いんです。
はじめての初心者からジュニア・ライター、シニア---と段々に進んでいく間に、最初見込んだほど伸びがよくない、見込んだほどじゃなかった、にもかかわらず結果的には会社が投資してしまった、というような場合がありますね。
そういうわけですから、初めのトレイニーとして新人を採用する時には、非常に注意を払わなければなりません。そして、その人がどれだけ伸びるかということも慎重に吟味しなければならない、で、おのずから新人採用の数はとても少なくなるということですね」
chuukyuu「よくわかります。経験者を採用する場合は?」
メドウ「それは、経験者のサンプルを見ます。その経験者が以前、どのような仕事をしたかということを見るわけです。そして、こちらが持っている一定のものさし、それに従って経験者のクリエイティブな価値というものを決めるんです。
まれなことですが、経験者を選ぶ場合に、その人があまりにも長いことよそでやってきていると、考え方その他が固定してしまっていて、DDBの方法を学ぶことができない、こちらの要求することを受け入れられない、また、考え方やり方が固くなってしまって弾力性がなくなっている、という場合があるんです。
そういう場合は、やはりその人の採用は避けます」

メドウ氏が監督したフランス政府観光局の雑誌広告の例


(注;この作品には、同一の写真で、ヘッド、ホディ・コピーとも異なったものが2点あります。ここでは掲出のものとは違う方の訳文を添えます。英文のほうは掲出分にあるコピーの方です。訳文のほうに、なぜ、こちらを選んだか、英文と読みくらべてご推察ください)。


次の休暇には、いのちの洗たくを。

魅力たっぷりのパリをあとにしましよう。
そうですね、自転車ごとフランスの列車にお乗り入れになるのも南仏への早道ですよ。
ものういばかりの太陽がいっぱいプロヴァンス地方の中心、アヴィニヨンで降りて、おだやかな陽光に焼けた町や村をドライヴなさるんですな。
このあたりは、フランスの芸術家たちの故郷、音楽がいっぱい。あなたが写す写真は印象派の絵のようです。ここでは、上着もネクタイも無用、自転車にお乗りになってもあなたの品位は保てます。ワインとチーズとブイヤベースについても学べます。恋におちてもいいんですよ。そして永久に住みつきたくなってもね。



5年経ったら、もう見られません。

ヨーロッパでは、まだ手つかずで、洗練されてなく、雰囲気たっぷりのまま残されている場所は数すくなくなっています。フィニステールはその数少ない一つに数えられています。フランスのこの小さな断片はブルターニュの先端にあります。ここでは、婦人は正装するとき必ず白いかぶりものをつけます。高くそびえるウェディングケーキのような帽子で、のりでコチコチにしてあるので、強い潮風にもびくともしません。ここでは全世界がフレンチ・ブルーをしています。海も、空も、カフェも、入江も,帽子と作業服の漁夫たちも。
ここでは、漁村は漁村として存在しています。洗練された観光地ではありません。筋骨たくましい漁夫たちと仲良く朝食のペルノーをチビチビやることもできます。
まぐろのせり売りをブルターニュ語で聞くことができます。世界でもっとも面白い言葉です。小あじなブロンなカキで晩さんを摂り、ムスカデ・ワインをのんびりとあけたり、レースの手袋と木靴の買物をし、白いおもちゃのような家が点在する町をぶらつくことができます。泡立つ海で泳ぎ、巨大な岩の上でいわし網のように躰を干すことができます。本当のフランス人とその家族を知ることができます。ほんのわずかなお金であなたの人生の真実のひとときを持つことができるのです。
フィニステール仏蘭西のもっともエレガント観光ホテルや興奮を呼ぶカジノやビキニのぶらつく海岸からほんの少しはずれたところにあります。パリからほんの短いドライブか列車の旅でさけるところです。フィニステールは、きっと人びとにみつかり、変えられてしまいます。ですから、もしあなたが原始的なものや冒険に飢えているのなら---いまのうちです。


Five years from now it won't be the same.

One of the few remaining spots in Europe that is still un touched, unsophisticated and rich with atmosphere is Finistere,.
You'll find this little piece of France at the top Brittany. Here, a lady isn't dressed without her white lace coiffe---a towering wedding cake of a hat that's so thoroughly starched it can even face a sea gale, unbowed. Here, the whole bword worjd looks French blue: the sea, the sky, the cafes, the tuna fleet, even the fishermen in their caps and blouse.
Here, a fishing village is still a fishing village--- not a chic resort. You can meet the fleet at seven and sip Pernod for break-fast with the friendly, muscled fishermen. You can hear them auction off the tuna in Breton, the most amusing language on earth. You can dine on delicate Belon oysters, idle over a bottle of Muscadet, shop for lace gloves or wooden shoes, and amble through towns dotted with white-washed doll houses. You can swim in foaming sea, then dry, like a sardine net, on the gigantic rocks. You can get to know the real Frenchman and his family. You can have the time of your life---for a sou.
Finistere is just up the coast from some of France's most elegant resort hotels, exciting casinos and bikini beaches. And it's just a short, picturesque drive or train trip northwest from Paris. Finistere is bound to be discovered, bound to change. So if you hunger for originals, for adventure---go now.


つづく