創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(123)ジャック・ディロン氏とのインタヴュー(3)

     (DDB,副社長兼コピー・スーパバイザー)

アメリカン航空の広告で好きなのは---


ディロン「私たちがつくったアメリカン航空の広告でとりわけ気に入っているのは、4,5年前の『ファースト・クラス』を訴求したキャンペーンです。
4,5年前には、ニューヨーク←→カリフォルニア間のファースト・クラスとエコノミー・クラスの料金は45ドル違っていて、ファースト・クラスは法外な値段だと考えられていました。当時は多くの企業や団体が支出を減らすことにつとめており、リプレゼンタティヴ(幹部クラス要員)にエコノミー・クラス(コーチ・シート)で飛ぶように要請して旅費の節約を行なっていました。そこで、私たちは、ファースト・クラスを推進するような広告をつくるべきだと考えたわけです。
45ドルの正当化が、キャンペーンの目標となりました。
で、4年前に出した広告は、『なぜ将軍は、1人用のテントにいるか』といった意味あいのヘッドラインで、1人用のテントを持つ理由は、1人だけになって戦争の作戦を考え、練りあげなければならないからだ、企業にとっては、この会社のリプレゼンタティヴに最高のコンディションで仕事場に向かえるようにすることがもっとも大切なのではないか、何百万ドルというビジネス・チャンスを失うことにに乗ってもいいのか---といったコピーを書きつらねました。
私たちは、こういう広告を4,5種類出し、かなりな注目を集めました。実際のところ、DDBでも、少なくとも副社長クラスはファースト・クラスで飛べるという旅費規程に変えました。そして国内線の場合は、たぶん、みな、ファースト・クラスで飛んでいますよ。
また、このキャンペーンを見た多くの企業は、経営陣や部局の責任者たちがファースト・クラスで飛ぶことを奨励しはじめました」
(chuukyuu注;DDBには、副社長の肩書きの人は少なめに数えても70人はいる)。

ファースト・クラスで飛ぶ必要性を訴求したアメリカン航空のキャンペーンの一つ


Why generals have always had a tent of their own.

将軍たちは、なぜいつも、専用のテントを持っていたのでしよう?

(ファースト・クラス旅行についての考察---アメリカン航空のシリーズ)
それは階級ゆえの特権だったのではありません。実はもっと簡単なことなのです。
作戦をめぐらせることを任務としている人は、それにふさわしい場所が必要なのです。
それは、将軍がうける特別サービスの一つです。彼を、ありがちな雑事から解放して、戦いに勝つことだけに専念させようとの配慮からなのです。
これは、つねに第一級を志すビジネスマンにとっても理にかなったやり方です。
プライバシー、広さ、快適さ、全体の雰囲気などが、重責をになったあなたから旅行の重荷だけを軽減します。
この25年間、ビジネス出張者こそが、わが社の大きなお得意さまでした。空の旅の実に80%が、公務・社用出張者に占められているのですから、わが社の一善サービスというのも、実にこのを受けてできたものなのです。これは、いわゆる輸送事業に携わっているから企画されたのではなく、ぜいたくな投資でもありません。
飛行機をご利用になる人のための企画です。
ビジネス出張の習慣やパターンについてもっとお知りになりたい方は、アメリカン航空旅行相談部あてにお手紙をください。


DDBのみごとなコピーライターたちとの単独インタヴュー(既掲出分)
デビッド・ライダー氏とのインタヴュー
(1)(2)

ロバート・レブンソン氏とのインタヴュー
(1)(2)(3)(追補)
ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
(1)(2)(3)(4)(5)(了)
フィリス・ロビンソン夫人とのインタヴュー
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ジョン・ノブル氏とのインタヴュー
(1)(2)(3)(4)(了)
ポーラ・グリーン夫人とのインタヴュー
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(了)
スタンレイ・リー氏とのインタヴュー
(1)(2)(3)(了)