創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(746)[創造行為の四段階説](1)

 

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1973年に〔ブレーン別冊〕の形で『ヤング&ルビカム』誠文堂新光社を出した。「あとがき」から大要を引く。


私の手になるアメリカの広告代理店シリーズは、これで4冊になった。
最初が「繁栄を確約する広告代理店DDB」(1966)、
2冊目が「アンチ・マジソン街の広告代理店PKL」(1967)、
そして<
「アート派広告代理店」(1968)と、
毎年1冊のベースでまとめてきた。
私自身は上記の3冊でこのシリーズを終わりたかった。
しかし、これまでの3冊が予想以上に好評だったこともあって、多くの方々から4冊目を勧められた。
4冊目を「Y&R」にあてたのは、この代理店が世界第3位の規模と40年以上の歴史を持っているにもかかわらず、そのクリエイティブ・ワークが新進の代理店と肩を並べているからである。


いざ取材してみるとY&Rは大きすぎたし組織が整備されすぎていた。私一人の手にはあまった。
そこで、ありのままのY&Rを呈示したほうがよくわかってもらえるし参考にもなろうと思って、私の目
で選んだ資料を並べることにした。
そうすることで結果的には、既刊3冊とは違った印象の本に仕上げることができた。
Y&Rアート部マネジャーのシュミット氏とミューラー氏からは、膨大な資料を送ってもらった。
その半分も使わなかったことを両氏にお詫びする。
(英文を付したのは全米7万の各種図書館に買い上げられるよう、Y&Rが手配してくれたからである)。


同書の転載はいつか……ということにし、当時、国内Y&Rの社長であったステファン・フランクフルト氏が1962年11月4日に東部地区AAAA年次大会で行った上掲タイトルのスピーチを紹介する。



創造行為の四段階説 (1)


広告のコピーライターとかアーティストは、大体の場合、コマーシャル分野外のライターや
アーティストと似通っています。
制作にもいろいろな段階があります。
劇も人工的なものになる場合があるし、作曲も模倣に終わることもありますし、絵画にしても
深味に欠けてしまうこともありうるわけです。
反対に、深味があり、その制作にあたった人のこれまでの人生に蓄積された全資料、鋭敏な感覚
をもとにして描き出される場合もあるのです。
広告についても同じことがいえます。
時々、私たちは「ヘッドラインをたたき」ださねばならなくなったり、ラフレイアウトを手早く仕
上げねばならなくなったりします。
こういった仕事の仕方で行くと、どうしても人工的になったり、模倣に終わってしまったりします。


すぐれた職人は時計を細工できますが、考えずに早くつくり出してしまうと、めったに「霊感を与え
られた」ふうにはつくれず、ただ単なる「精妙な技術」で終わってしまいがちです。
私は、クリエイテイブには四段階あると思っています。
時には二、三の要素が一度に働く……という場合があります。
これから私がいおうとしている四段階哲学には、はっきりした科学的裏づけがあるわけではないので、
「フランクフルト説」とか「スチーブの四段階説」とでも呼んでいただきましょう。


第一段階は、 「摂取段階」


「摂取」とは辞書を引くと、 「消化するために(何かを)取り入れること」とあります。
私のいう意味は、 「学んだこと、経験したこと、すなわち生きてきたことを全部摂取することです.
それは、あなたが生まれた時に始まり、そしてそれ以来続いているはずです。
あなたが、経験やインフォメーションを摂取する度合いは、あなたの人間の広さ、浅さによって違います
し、あなたの回りで吸収されようと戦っている刺激というコンスタントな流れをどの程度機敏に蓄積で
きるかによっても違います。


聞いても聞こうとしない人、見ても見ようとしない人、経験はするけど学ばない人がいます。
そういう人々が未来に備えて摂取するものには限りがあります。
そして、クリエイティブな作品に乏しいのは限られた経験や、それを目、耳などで知る力に欠けているか
らであると私は思います。


ここで「プライベート生活は、あなたのアイデアに影響しますか?」とか「夜、家に帰ってしまえば、代理店
のことは忘れてしまいますか?」という質問に答えましょう。


私のアイデアは、私のプライベート生活から生まれてきます。
もちろん私のビジネス生活からも。私が行ない、感じ、聞き、思うことはすべて(休暇中や週末も含みます)
吸収されて、無意識に貯蔵庫にたまります。
この貯蔵庫から問題解決の材料が取り出されるのです。
じじつ、私がつくったコマーシャルのアイデアのうち、幾つかは、私の過去の経験や観察によるものです.


バンドエイドのコマーシャルのオープニングにしても全く日常の生業、つまり、私たちすべてがよく知っ
ていることから取り入れました。
バンドエイドのひもをひっぱったり、紙が勢いよくさける音を聞く……といった単純な過程は私たちの
みんながやっていることです。
私はそれとわかるような経験をフィルムと音に入れ移しただけです。
これらが、単純で親しみ深く信じうることなので、観客がこの経験に熱中してくれるのです。


サンフォライズドのコマーシャルの場合も、このコマーシャルを頼まれてから数日たったある日、
イデアが生まれてきたのです・
5番街を歩いていて、あの例の小さな犬を連れて歩いている婦人を見かけました。
「ヤレヤレ、あの犬は縮んでしまったんだな」なんて一人で思っていました。
たぶん意識下で、サンフォライズドの表現方法を捜していたのでしょう。
この「縮んでしまった」という言葉が問題解決の糸口になって、頭の中でこのコマーシャルが形を
取り始めたのです。


明日に、つづく。



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