創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(712)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(12)

坂本 登さん訳『科学的広告法』(1966.10.05 誠文堂新光社)より


クロード・ホプキンズの名言(6)


第8章 ストーリーを十分に伝える――から



「読者の注意を引こうという陳述は、どんな内容であれ、そのストーリ
ーをできるだけ完全に伝えるべきである」


「反響の返信ハガキをよく検討してみると、ある種の陳述が他の陳述より
もはるかにアピールしたという事実を発見するだろう」


「かなり多くの人びとにアピールした陳述をどの広告にも用いて、これら
の人びとに与える効果を高めるようにすることである」


「ひとたびある人の注意を引いたら、この人に寄せる期待のすべてを達
成する必要がある。そのためには、これも言いたい、あれも言いたいと、
言いたいことが山ほどあるはずだ。それらを、相手が耐えられる程度に
全部吐き出すことである」


「興味を覚える対象は、人によってそれぞれ違う。どれかを省略したり、
間引きしたりすると、それだけ読者を確信にみちびく事実を失うことに
なる」


「人びとは、どんな商品でも、一つの商品をめぐる連続的な広告は読み
たがらないものだ。それはちょうど、ニュースや小説を2度読み返さな
いのと同じことである。人は広告を1回読むことによって、その広告の
提言に賛成か反対かを決める。賛成か反対かが決まってしまうから、2
度と読まないのである。だから、ひとたび読者をつかんだら、伝えなけ
ればならない重要な事がらは全部伝えるようにすることだ」
chuukyuu註ホプキンズの法則は、その後、DDBによって破られた。
VWビートルのシリーズがそれであった。
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「優秀な広告主は、みなこれを実行している。彼らはどんな陳述が読者
にアピールするかをテストによって――つまり、さまざまなヘッドライ
ンの調査結果を比較検討することによって学んでいる。そして、使用す
べき大切な陳述のリストをじょじょに積み上げている。これらの陳述が
その後の広告に現われてくるのである」


「広告というものは、それを全部読む人にとっては退屈なものかもしれ
ない。完全なストーリーというものはいつも同じだからだ」


「広告主によっては、絶対に広告を変えないという徹底したものもいる。
信販売広告などがそれで、一つの広告を何年も繰り返している。それ
でも反響はいっこうに減らない。一般広告の中にも、これに似た広告が
ある。そういう広告は、言わねばならぬことのすべてを最善の方法で陳
述した完全な広告である場合が多い。広告主は、二度読んでもらえると
は期待していない。それでいて反響が後を絶たないのは、次々と新しい
読者を獲得しているからである」



「どんな広告でも、常に対象として考えねばならぬのは新しい読者だけ
である。すでに諸君の製品を使用している読者は、だいたいにおいて諸
君の広告を読もうとはしないだろう」


「広告を読んでくれる人は、すでに興味を覚えた人たちである。興味が
わかなければ読んでくれるはずがないからだ。したがって諸君は、喜ん
で耳を貸そうという人たちを相手にしていると思えばよい」


「広告に関してよく耳にすることは、人びとはあまり読まない、という
ことだった。しかし、成功した優秀な広告は、人びとによく読まれてい
る。その上、これらの読者はもっと詳しく知りたいといって、パンフレ
ットまで請求している」


「ある人が、自分専用の自動車を一台買いたいと思った。値段はどんな
に高くてもいいから、その車を所有し、乗り回すことに誇りが持てるよ
うなものを希望した。しかし彼もビジネスマンである。金を払うからに
は、それだけの価値があるものを欲した。
 最初、彼はロールス・ロイスに傾いた。さもなければピアス・アロー
か、ロコ・モービル、あるいはその他でもいいと考えた。ところが、これ
らの有名車の広告を見ても、何一つ車に関する知識が得られなかった。
コピーがあまりにも短かすぎるのだ。メーカーたちは、他車と特長を比
較するのはコケンにかかわるとでも思っているようだった。
 これに反してマーモンは、ストーリーを完璧に伝えていた。彼は広告
はもちろん、案内書も読んだ。そしてマーモンを購入したが、決して後
悔はしていない。それのみか、あとになってわかったことだが、ロール
ス・ロイスやピアス・アロー、ロコ・モービルなどの良さに関する予備知識
を持っていたら、マーモンの3倍の金を払わされるところだった」
chuukyuu註】1958年、ロールスの広告はダヴィッド・オグルビーにより、劇的に変えられた。
オグルビーの名声も、さらに高めた。



「時速100kmで走行中に新しいロールス・ロイスの運転席で聞くのは電気時計の音だけ」


――こんな世界最高のロールス・ロイスをつくっているものは? 「手品なんか、まったく、なし---精妙で特許まみれの設計の成果です」と技術部の最高幹部は語る。――


1. 「時速100kmで走行中、聞こえるのは電気時計の音だけ」と『ザ・モーター』誌の技術担当記者が報告しています。エンジンの静かさは不思議なほどです。 3本のマフラーが健全な状態を証明しています。


2. すべてのロールス・ロイス・エンジンは、搭載前に全速力でぶっつづけ7時間作動させています。エンジン搭載後の車は、異なった路面で2000km近くも試し運転します。


3. ロールス・ロイスはオーナーが自分で運転する車として設計しています。 だから米国車の同クラスのものより車長が30cmも短いのです。---以上、chuukyuu訳


4. パワー・ステアリング、パワー・ブレーキ、自動変速レバー付きです。運転・駐車はとても簡単です。おかかえ運転手なんて必要ありません。---atsushi訳


5.速度計以外、胴体とフレームは金属部品で接していません。車内は完全に絶縁され、密閉されています。---fuku33訳


6. 組み立てられた車は、さらに一週間かけて最高の状態に仕上げられます。98もの厳しい仕上げ項目のなかでは、車軸の異音をとらえるために聴診器も登場します。---phimerdin訳


7.ロールス・ロイスは3年保証。新らしい通信網でディーラー間が東海岸から西海岸へも部品を融通しあうので、ご不自由はおかけしません。---渡辺訳


8.皆さん周知のロールス・ロイスラジエーター・グリルのモノグラムRRは、唯一の例外のほかはまったく変更されていません。唯一の例外とは、1933年に逝ったロイス卿への弔意を表して、赤色から黒色に変えたときです。----kayo訳


9. ボディへは5回の下塗り塗装を施し、14回におよぶ上塗り塗装面は、その都度手作業でポリッシングされ(磨かれ)ます。--- 以下、cao


10. ステアリング・コラムのスイッチを入れると、路面のコンディションに合うようにショック・アブソーバーを調節することができます。(この車の運転中の疲労の少なさは、注目に値します)


11. もうひとつのスイッチは、リアガラスの1,360本におよぶ熱線を持つリアデフロスター(後部窓)のスイッチ。この車は2系統のベンチレーション・システムを持ち、すべてのウィンドウを閉じていても曇ることなく快適なドライブができることをお約束します。なお、エアコンはオプション装備となります。


12. シートは、履きやすい革靴を128足も造ることができる、英国製の牛革8枚で覆われています。


13. ダッシュボードの下には、フランス産クルミの合材を使用したスライド式ピクニック・テーブルが収納されています。さらに、フロント・シートの背面には、折りたたみ式テーブルが2枚取り付けられています。---cao+phimerdin訳


14. あなたはエスプレッソ・コーヒー・マシンのような特別なオプションを手に入れることができます。口述レコーダー、ベッド、温水・冷水が選べる手洗い、そして、電気カミソリなどです。



15. あなたは運転席からペダルを踏むだけで、車体全体に注油することができます。 ダッシュ・ボード上にはクランク・ケース内の油量が一目でわかるインジケータもございます。


16. 燃費がとても良く、しかもプレミアム・ガソリンを使う必要もありません。とても経済的です。


17. 油圧式・機械式、2系統のブレーキ・システムを持っています。ロールス・ロイスはまさしく安全で余裕のパワーを持つ車。あなたに永く褪せることのない快適な走行をお約束します。それでいて最高速度は時速100マイルを超えるのです。

※at eighty-live.の部分がわからなかったので想像で意訳しています。


18. ロールス・ロイスの技術者は、車の点検とアドバイスのために、サービスで定期的にオーナーの元を訪れます。


19. ベントレーはロールス・ロイス社がお届けしています。 ラジエータ以外はまったく同じ技術者の手による、同じ作業によって製造されているのです。

ラジエターがよりシンプルな構造を持つためにベントレーはもう300ドル安いのです。 「ロールス・ロイスを運転するのはちょっと気が引ける…」という方でも、ベントレーならお乗りいただけます。


プライス:この車の世界観は、この広告によって実証されたと思います。関税込み13,550ドル。もしあなたがロールス・ロイスとベントレーでの価値あるドライビング体験をお望みなら、この紙面の一番下にあるディーラーにご連絡ください。


ロールス・ロイス株式会社 ニューヨーク州 ニューヨーク ロックフェラービル10階


「ご婦人方に現在愛用している朝食用食品を別のブランドに変えさせよ
うとしたり、歯ミガキや石鹸もそのとおり、簡単にブランドを変えさせ
ようとしておられるかもしれない。だが彼女たちは、現在使用中の商品
とは結婚したほどの強い結びつきを持っている」


「信じられないというのであれば、自ら家庭を訪問して彼女たちに変心
を説得してみるとよい。一箱だけを買ってもらうのではなくて、今後ず
っと愛用してもらうように変心させるのである。一度でもこのような体
験をしたことのある人なら、広告は簡潔をもって尊しとする、などとは
言わないだろう。また「一行の文章で十分だ」とも、名前だけでいいと
も、大ブロシキをひろげとけばいいのだとも、言わないだろう」


「どんなことがあっても、反響の少ない広告を手本にしてはならない。
実情に精通していない広告主の言うことは、当人が正しいと自称しても
これを採用してはならない」


 



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