創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(625)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(17)


話題は多く提供してこそ---


鉄のカーテン」と呼ばれた目には見えない壁が、政治と経済の形態が異なる地域を2分していました。
そのカーテンは、ゴルバチョフ氏の出現で幕引きされました。


鉄のカーテン」が厚く不透明であったころ、誰がモスクワの「赤の広場」のそばにアメリカ資本によるレンタカーの営業所を開こうなどと考えましょう。


この広告は、ぶっちぎりの1位・ハーツの裏をかいた---といいますか、作戦勝ちですね。
だって、いまは交渉中であって、開けるとか、オープンしたとは言っていません。


「そんなこと、できっこないよ」と読み手につぶやかせただけ、「効果あり」なんです。
「ひょっとしたら、ひょっとするかも。わが社も試みるか」と、企業幹部を誘ったかもしれません。
話題は多く提供してみるものです。





モスクワには、
エイビスの営業所は、まだ、ありません。
けれど、やってみようとしているところです。


私たちは、モスクワの中心地、バジル宮殿とトウム廟との間にいい場所を見つけたんです。いま、運輸大臣からの「Da(0.K)」を待っているところです。
世界中のほとんどの都市には店を出しましたから、もうソビエトに開店してもいいころでしょう?
ここに店を開く権利がとれたら、喜んでフォードをお貸しします。
あるいは、ジルでも、ボルガでも、モスクピッチでも結構。
灰皿は空っぽ、ガソリンは満タン、そして受付の女性も親しみをこめた微笑を送るでしょう。(アメリカのエイビスと同じように)。
電話一本で0.Kです。ヨーロッパ、カリブ海地方、北アフリカ、極東でのエイビスが今やっているように。
こういったことは、もう何年来やってきているのです。
ロシヤ人は、「俺たちが発明したんだ」と強弁するでしょうがね。


写真の赤い× 印の下のキャプション「ここが希望の場所(赤の広場前?)


C/W エド・ヴァレンティ Ed Valenti
A/D ヘルムート・クローン Helmut Krone
"The NEWYORKER" 1965.01.30