創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(565)新刊『これぞ新しい広告だ』(了)


広告図版は、chuukyuu がそれらしいのを選んで補いました。


昨日の、つづき


オーバックスの広告のこと

「オーバックスの初期の広告群ですら、荒涼たる砂漠にも似た小売広告の中のオアシスであった。ほんと、消費者を駆り立てたといえる。まるで、店からじかに話しかけられているように思えたのである。ときには励ますように、ときにはふざけたその広告コピーはしっかり読まれた。そして、ニューヨーク中の女性を、安価でおしゃれに装わせたのである」

パリ、オーバックスを侵略。 (抄訳)


でも、それも3月18日木曜日までのことです。4日間というのは、そう長いあいだではありませんよ。

1965.3.14 ニューヨーク・タイムス

地下鉄駅の壁面ポスター
(ニューヨークの地下鉄は落書きの花ざかりだった時期がありました。駅貼りポスター---ラクガキにみせかけて。)


メンズ・ショップ

ELALの広告のこと


「DDBは、最初の2つ広告は、すべての航空会社の広告を変革したほど、すばらしいものであった。ライターやアートディレクターたちが、いつまでも語りつづけたほど、独創的な表現をとっていた。この最初の広告は、DDBのクリエイターたちにとっても、究極のお手本として語りつづけられている」


12月23日を期して、大西洋が20%縮みます。

12月23日に就航する、ブリストルブリタニア機にご期待ください。大西洋を横断する最初のジェット機です。

4月1日から、ブリタニアだと他のジェット・パワー航空機よりも6%安くてすみます。

大西洋横断ジェット機の特別料金は4月1日から実施されますが、ジェット・プロップ・ブリタニアにはこれは適用されません。ヨーロッパのどの市へでも周遊エコノミー・チケットは30ドル、ファーストあるいはデラックスは40ドルの節約になります(たとえば、ロンドンへだと6%の節約になります)。
しかもジェット・パワーの快適さとスピードをお楽しめになります。ピストン・エンジン機より2時間10分早いのです。大西洋横断は行きも帰りもノン・ストップ飛行で。

リヴィのパンの広告のこと

「ひと口にいえば、製品の特質を表現するフィリス・ロビンソン夫人の能力発露の見本です」… Levyの有名な地下鉄ポスターの最も強烈だったのはこれ、1960年の広告業界で彼女を最も有名な人間のひとりにのしあけたスローガン---「リヴィのパンを好きになるのに、ユダヤ人にならなきゃって法はありません」
...DDBがリヴィのためにしたことは、パンには競争相手との差別化をするほどの特徴がなかったと認めることであった… そして、なにかをつけくわえさせる代わりに、DDBは、競争相手のまったく異なった個性をリヴィに付与したのである。ニューヨーカーは、たちまち、リヴィの銘柄名を、そのおいしい味とともに覚えてしまった。

リヴィのパンを好きになるのに、
ユダヤ人にならなきゃって法はありません。

リヴィのパンを好きになるのに、
ユダヤ人にならなきゃって法はありません。

chuukyuu注】このコピーはフィリス・ロビンソン夫人ではなく、ミズ・ジュディ・プロタスなのだが---

エイビスの広告のこと

「人びとに記憶され、彼らを行動にかりたてるアイデアは、クライアントの本音の中にある---とのDDBの理念に基づき、ヘルムート・クローンとポーラ・グリーン夫人は、1960年で最も話題になったキャンペーンを創った。
キャンペーンにショックを受けた多くの広告代理店は、その挑戦的なメッセージに激怒さえした。とはいえ、誰も業界2位だというような主張が効果をあげるなどとは、それまで考えつきもしなかったのである。しかし、臆面もなくそれを宣言した広告主があった。
なんと、2位以下の企業では、社員の出張時に、エイビスから車を借りることを承認したばかりか、奨励さえするように変わった。

(chuukyuu 注)世間には、業界1位の企業の数より、2位以下の企業の数のほうが圧倒的に多いのである。

エイビスは、業界で2位のレンタカーです。
それなのに、お使いいただきたい、その理由(わけ)は?


私たちは一所懸命にやります。
(だれでも、最高でないときはそうすべきでしょう)。
私たちは、汚れたままの灰皿をがまんできないのです。
満タンにしてない燃料タンクも、いかれたワイパーも、洗車してない車も、山欠けタイヤも、調整できないシート、ヒートしないヒーター、霜がとれないデフロスタ…
そんな車はお渡しできません。
はっきりいって、私たちが一所懸命にやっているのは、すばらしくなるためです。(省略)

この次、私たちの車をお使いください。
すいていることでもありますし、ね。

A/D Helmut Krone
C/W Paula Green



このエイビス・ボタン
大学生の息子さんへ送ってやりたいと
お思いになりませんか?


あるいは、お宅へ皿洗い機を設置にきた人に? または、あなたのシャツのボタンがとれたままで渡したクリーニング屋に?
この「もっと一所懸命にやりますボタン」は、あなたのお知り合いのだれかの目を覚まさせます。
私たちをそうしたように。
このボタンは、私たちをふるい立たせました。レンタカー業界で2位にすぎないということを私たちに思い出させました。あなたに、ぴかぴかのスーパー・トルクのフォードののような新車を新車をお貸しするだけでなく、とてもたくさんしなければならないことがあったのです。
私たちは、あなたに、またいらしていただくようにするために、もっと一所懸命にやらないといけませんでした。
私たちのみんなが、です。
受付カウンターの女姓も、ガソリン・タンクを満タンにする従業員も、技術者も、そして事務所にいる者も。私たちは依然として2位にすぎないのです。けれども、目に見えて向上していています。
どこのエイビスのカウンターでもけっこう、ボタンをお取りください。
もし、スローガンが効力を発揮していなかったら、裏がえししてボタンのピンをお確かめください。