創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(217)[ビートルの広告](118)


印刷メディアでは、音、動き、匂い、味、肌ざわり、痛み---などは正確には伝えられません。TV-CMだと、音、動きが表現できるようになりました。そのようなメディアの持っている制限を工夫によって錯覚させることもできそうと挑戦し、この場合は、静止誌面から「音」を感じさせたのです。50年前のこのころ、TV-CFがようやくものの役に立つことが先覚たちによって認められかけていました(モノクロでしたけどね)。
クリエイターを、「試みる人」といいかえてもいいのかも。


馴らし運転の必要はありません。



新車に対する価格の中には、奇妙なノイズの代金も入っているとお考えになっていますね。
フォルクスワーゲンは違いますよ。
フォルクスワーゲンの新車は、ノイズ別で、1,595ドル。
新しいフォルクスーゲンは、キイキイきしむ音をみごとに取り除いています。それから、何かが洩れるような音も。各部分が実にぴったりと適合しているんです。
実際の話、このような車をひと晩でつくりあげることは誰もできません。
私たちは、15年間<同じ基本形によって仕事をしてきました。現在もそうしています。
私たちは、ワーゲンを完ぺきな車に近づけるために、改良に改良を重ねています。思えば、最初の年からそうでした。
私たちの空冷式エンジンは、例えば、すえつけ前に、回転させたり調整したりします。
ですから、初日からトップ・スピードでドライブできるのです。
エンジンは、摩擦抵抗が少ないようにうまく設計されているので、オイル交換期間前に補給しなくてもすむはずです。馴らし運転とか走っている車の調子が気になるとかいうこともありません。
今こそあなたは、フォルクスワーゲンを買うことが、"インスタント・カー"を買うことだということがおわかりいただけたでしょう。
しかも、水さえ必要なし、なんです。




You don't have to take it on a shakedown cruise.


Maybe you think mysterious noises are part of the price you pay for a new car.
But not for a Volkswagen.
A new VW costs $1,595.Without noises.
It's pretty hard to get a new VW to squeak. Or leak. The parts fit together too well.
Obviously, nobody can just go ahead and build a car like that overnight.
We've been working on the same basic model for 15 years. And we're still at it.
We keep refining our refinements to give you a car that performs the way it's supposed to. Right from the beginning.
Our air-cooled engine, for example, is run and tuned before we install it. You can drive a VW at top speed the first day.
The engine is so beautifully machined for low friction, you'll probably never need oil between changes. To say nothing of a breakin period or a shakedown cruise.
So you can see why buying a VW is like buying an "instant car."
Except you don't even have to add water.