創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(367)ボルボの広告(22)

3日にわたって、40年前に発売された〔ボルボ144〕の安全設計の80項目を列記しました。ここでちょっと広告業界の内輪話になりますが、クリエイティブ・チームに渡されるデータがこれだと、最高クラス---。しかし、業界用語では〔製品特質リスト〕です。これから、〔消費者利便〕に転換できるものを取り出し、その順位をつけ、訴求期間をきめるのがクリエイティブ・チームの作業です。仕事はそれから。つまり、どう表現すれば、読み手の注意を捉え、共感させ、購買までもっていくか---です。つまり、手腕の発揮!


>>『ボルボ〜スウェーデンの雪と悪路が生んだ名車』目次


第4章 「世界最高の安全車」といわれるために
主任テスト技師に安全性を聞く


安全性論議の前から

昨日のつづき

・暖房と換気装置

55.急速に暖まる高能力のヒーター・システム
56.霜取用送風口(デフロスター・ノズル)はフロント・スクリーソに3個、リア・ウイYドゥに2個あり、どんな気候状況下でも、つねにすぐれた視野が保てる
57.前、後座席はヒーター通風口があり、霜取装置導管(デフロスター・ダクト)から出る特別な熱のせいで床はいつも乾燥状態を保つ

・ブレーキ

58.4輪ディスク・プレーキ
59.ツイン・サーキット・ブレーキ・システム
60.前車輪にも後車輪にもツイン・サーキットー・システムが作動
61.急ブレーキ時に起こる前車輪よりも後車輪のほうが先にロックしてしまう状態を解決した調圧弁
62.真空(バキューム)ブレーキ倍力装置(プースタ)
63.自動調整(セルフ・アジャスティング)ブレーキ
64.電気メッキされた鋼鉄製ブレーキ管系統
65.ドラム形の手ブレーキ
66.不意にゆるんでしまわないようにシールドがついた手ブレーキ・レバー

・ロードホルディング、ステアリングほか

67.フロント、リア間の横ゆれ防止性能のための非常にすぐれた配分
68.ボルボ144は、かすかにアンダ・ステアするだけである。だから、コーナリングの際、リア・エンドが勝手にジャズる危険性は非常に少ない            
69.軽くて正確なハンドル
70.非常に小さな最少回転半径
71.2つの部分から成っているステアリング・シャフト。衝突時には即時に分解するようになっている

・エンジンと動力変速機

72.85もしくは115実馬力(b・h・p)の出力をもったB18エンジン。敏速に安全に追い越しができる性能を備えている
73.たいへんスムーズなギヤ・チェンジ。高性能のシンクロ

・その他

74.35.5cmの車輪
75.重い荷重、高速に耐えるSタイプのタイヤ。すぐれた接地性を保証
76.安全タイプの車輪
77.9つの回路に分かれている別個のヒューズをもった電気系統。つまり、1ヶ所が故障しても系統のほんのわずかの部分にしか影響がないわけ
78.電気系統の中の丈夫な計器ケーブルが、最少の電圧降下を保証
79.よくまとめられた電気系統
80.ドアの縁に取りつけられた反射鏡

これを読んで感じることは、ボルボが、設計以前から安全性の確保に気を配っているということである。車をつくってしまってから安全設計と呼べる箇所を数えあげているのではない。
つづく


非文明的な世界のためつくられた、
文明的な車。


何千年という進歩をとげてきたというのに、今だにかなりの時間を立ったままの姿勢で過ごす人類。
長々と続く交通渋滞にとじこめられて一日が始まる前からもうくたくた。
だから私たちはできるだけ渋滞を楽にやりすごせるようにボルボを設計しました。
たとえば、164のシート。どんなに長時間道路をはい回っていても、背中の方はムズムズしません。
スタイリストに設計させないで、この仕事に正にピッタリのエンジニアに依頼したからです。背中の悪い人。彼の開発したのはがっちりしたパケット・シート(ビニールではなく、本物の皮張り)。背中の形に順応するだけでなく、腰の部分に必要な適度の支えを与えるよう調節することもできます。
これと同じ細かい配慮が164のインテリアにもなされています。
10ヶ所も流風口のあるエア・コンだけでなく、温まるドライバー・シートもあるわけ。そして大人5人がゆったりと乗れるだけでなく、身長2mのドライバーでも楽なレッグ・ルームのあることもこれで説明できます。
もちろん、164には固定的な部分と同じくらい感動的な動きの部分があります。
攻撃的な燃料噴射式3000ccエンジンと安全対策装置のかずかず。たとえば、4輪ディスク・ブレーキ。衝激をパッセンジャー・コンパートメントに伝えないで吸収してしまうように設計されたフロント&リア・エンド。
非常に頑丈なシングルユニットのボディ。その数千カ所にわたるスポット溶接はひとつで車の全重量を支えるほどしっかりしています。
こんなにたくましく快適でも、164はびっくりするほど機敏です。最小回転半径はフォルクスワーゲンのかぶと虫よりも小さいくらい。
不体裁なほど豪華な車をしり目に、せまい駐車スペースにもぐり込む時は、特に嬉しくなってしまいます。
164のもうひとつの美点---時を経るに従い、より輝いてくる---はガソリン消費量の少なさ。最新の政府の調査で、164は同価格クラスの国産車のほとんどより50%も燃費がすぐれているという結果が出ています。
つまり、ガソリンスタンドで列をなさない分だけ、先に控えているすし詰め道路用にイライラが回せるという次第。


ボルボ


掲載媒体:『ビジネス・ウィーク』1974年3月23日号




Volvo164

A CIVILIZED CAR BUILT FOR AN UNCIVILIZED WORLD.


After thousands of years of progress, man continues to spend a great deal of his time standing still.
Trapped in endless traffic jams that can wear him out before his day even begings.
So when we designed the Volvo 164, we did all we could to make entrapment as painless as possible.
The 164's seats, for example, can keep you from crawling out of your skin no matter how long you've been crawling in traffic. Because instead of having them designed by a stylist, we
called upon an engineer with the perfect background for the job. A bad back.What he developed were massive bucket seats (faced in genuine leather instead of genuine vinyl) that not only conform to the contours of the back, but can be adjusted to give the small of your back the exact support it requires.
This same precise thinking was also applied to the 164's interior. Which explains why it doesn't simply have ten-outlet air conditioning and heating, but a heated driver's seat as well. And why it doesn't simply have ample legroom for five adults, but enough for even a 6'6" driver.
Of course, the 164 is just as impressive going somewhere as it is going nowhere.
With an aggressive, three liter fuel-injected engine and a thoughtful combination of safety features.
Including disc brakes onf all four wheels. Front and rear ends designed to help absorb the
impact of a collision rather than passing it on to the passenger compartment. And a single-unit body so strong, anyone of its thousands of spot welds is capable of supporting the weight of the entire body. '
Yet with all this strength and comfort, the 164 is surprisingly nimble. Its turning circle is actually smaller than the Volkswagen Beetle's. A virtue you'll be particularly grateful for when tucking into tight parking spaces more ungainly luxury cars are forced to pass by.
Another 164 virtue ---one that seems to grow more virtuous all the time---is its relatively
meager need for gasoline. Latest government figures show the 164 gets about fifty percent gas mileage than the most popular domestic cars in its price range.
So when you're not waiting on lines at gas stations, you can conserve your frustrations for the jammed-up roads ahead.


VOLVO


BusinessWeek, March 23, 1974