創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(366)ボルボの広告(21)

細部にわたる安全設計の配慮を写していると、その実現に携った多数の技術者たち---クリエイターたちの知恵とアイデアの発露がしのばれます。社是の一つ---安全性の実現という大命題にむかっていった情景が目にうかびます。広告のクリエイションが次元が低いとは決していいませんが、安全性は人の命---ひいては企業の風評がかかっているだけに、使命感も大きいでしょう。


>>『ボルボ〜スウェーデンの雪と悪路が生んだ名車』目次


第4章 「世界最高の安全車」といわれるために
主任テスト技師に安全性を聞く


安全性論議の前から

昨日のつづき



自慢は4組の安全ベルト

38.40cmの電動ワイパー
39.2スピードのワイパー
40.容量1.5リットルの電動ウイソドゥ・ワッシャー
41.折れても胸を刺さないような材質の警笛リング
42.ハソドル中心部の凹みとパッド
43.三支点安全ベルト(スリー・ボイント・セーフティ)装備の前座席
44.後座席の両側の乗客用にも三支点安全ベルト
45.中央は腰ベルト
46.旋回支持軸方式で除眩式バック・ミラー
47.前座席の背もたれは前後に位置を固定できる
48.前座席は特別の力が加わったときには、背もたれが後方にしなうように設計
49.非常に強い座席付属品
50.フロント・スクリーンに反射しない計器板(ダッシュボード
51.手ブレーキ用の警告灯
52.後のドアの子どもは開けられないようになっている取手
53.アクセサリーとしての子ども用の遊び取手
54.ペダルの周辺の広い空間


つづく

2週間半ほど前に2点紹介した、非文明的シリーズ---追加



ボルボ164
非文明的な世界のためにつくられた、
文明的な車。


どこかのお伽の国のために設計されたみたいな栄華車と違い、ボルボ164はとくに現実を巧みに処理するように設計されています。
たとえば、シート。3時間渋滞の緊張状態で背中がこるような代物ではありません。スタイリストに設計させる代りに、この仕事にうってつけのエンジニアに依頼したからです。みごとに背中の輪郭になじむだけでなく、調節すれば背中の一部のヶ所に適切なポートを与えることもできるマッシブ・バケット・シート(本物のビニールではなく、本物の皮張りの)をつくり上げてくれます。
もちろん文明車である164のインテリアには、他にも親切丁重な特徴があります。たとえば暑い時用の10ヶの流出口エアコン、寒い時用の暖房運転席、パワー・ステアリング、そして最大の栄華セダン並みのレッグ・ルームとトランク・スペース。
でも、164のインテリアよりもさらに快適なのは、あなたを閉口させかねないドライバーたちからあなたを守る度肝を抜くようなな装置かもしれません。まず私たちは、164に事故を防止するような特徴をたっぷり盛りこみました。たとえばパワー・ラシステッド四輪ディスク・ブレーキ。急停止_の際、後輪がロック・アップする度合を少なくした特殊バルプ。効きの燃料噴射式エンジン。リア・ウィンドドゥ・デフロスター。そして気を散らさせないコントロール装置(たとえばハイ・ビーム・ライトのコントロール装置はハンドルにあるので、暗闇で足さぐりするなんてことはありません)。
しかし、万一事故が起きても、164は非常に頑強な全溶接ワンピース・ボディで、衝撃を最少限にとどめるように設計されています。衝突時のエネルギーを乗客に伝える代りに、吸収してしまうフロント・エンドとリヤ・エン。強化ドア・パネル。
そして何が起きてもドアが開かないよう設計されたドア・ラッチ。
これほど安全で快適な装置が備わった164がすばらしいなんてとても信じられないかもしれません。最小回転半径はフォルクスワーゲンのかぶと虫と同じ。これは大都市の混雑をくぐり抜けてみないとわからないかもしれません。あるいは豪華者が横目に見てゆく駐車スペースにもぐり込むまでは。
でも、164が横目に見てゆくのに豪華車がもぐりこむ場所もないではありません。ガソリン・スタンドがそれ。
政府の最近の統計で164と同じくらいの値段の国産車より164は50%もリッターあたりの走行距離がよいと出ています。
さて、最もかんじんな問題に到達しました。164の値段は?
6,650ドル。
大金です。でもお伽の国に住んでいないかぎり、作り話ではなく、それだけの価値は十二分にあるのです。


ボルボ


媒体:『ハーパース・マガジン』1973年12月号




The Volvo 164


CIVILIZED CAR
BUILT FOR AN
UNCIVILIZED WORLD.


Unlike the luxury cars that seem to have been designed for some never-never land, the Volvo 164 was designed specifically to help you cope with reality.
Its seats, for example, aren't about to let the tension of a three-hour traffic jam reate tension in your back. Because instead of having them designed by a stylist, we called upon an engineer with the perfect background for the job. A badback. What he developed leather instead of genuine vinyl) that not only conform to the contours of the back, but actually adjust to the needs of your spine.
Of course, being a civilized car, the 164's interior provides other civilities. Such as air conditioning for when you are hot, a heated driver's seat for when you are cold, power steering, and about the same legroom as some of the largest luxury sedans made.
But perhaps even more comforting than the 164's interior is its staggering combination of safety features.
To help you avoid an accident,we endowed the 164 with a triangular-circuit braking system with disc brakes on all four wheels. Special valves that reduce the chances of the rear wheels locking up in a panic stop.
An aggressive, 3 liter, fuel-injected engine. And meticulously placed controls so you won't be distracted from the business at hand.
If an accident becomesunavoidable, the 164has been designed tominimize the severity to its occupants with an enormously strong, all-welded one-piece body. Including front and rear ends built to absorb the energy of a collision rather than passing it on to the passenger compartment.
To assist you in your struggle through snarled traffic, the 164 has a turning circle nearly as small as the Volkswagen Beetle's.
Something you'll particularly appreciate when tucKing into one of those tight parking spaces other luxury cars are forced to pass by.
There are some spots, however, other luxury cars will be tucking into that the 164 will be passing by. Gas stations. Latest government figures show the 164 gets about fifty percent more gas mileage than the most popular domestic cars in its price range.
Exactly what is the 164's price range?
$6,695
That's a great deal of money. But unless you're living in a land of make-believe, believe us, lt is worth every last cent.


VOLVO


Harper's Bazaar, December, 1973

以前に掲出した、非文明的世界のためにつくられた、現実的な車。2点 


つづく