創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(98)フォルクスワーゲン・ステーション・ワゴンの広告(24)

米国VW社のアカウントがDDBに入ってきた時、セダンのクリエイティブ・チームはアートディレクターがヘルムート・クローン氏、コピーライターがジュリアン・ケーニグ氏ほか、ステーション・ワゴンのチームのアートディレクターには若手のジョージ・ロイス氏があてられた。セダンの広告は質素な車を暗示するためにモノクロ、ワゴンのほうは特異な外観をしているのでカラー広告。ところが異常がおきた。ロイス氏がクローン氏が決めたビッグ・ピクチャー、スモール・コピー・スペースの記事体風のレイアウト・フォーマットを拒否したのである。ロイス氏とクローン氏のあいだに何度も激論が行き交ったとおもう。クローン氏は、一つの銘柄の外見的印象は一つであるべきだと言い、ロイス氏は訴求するアイデアを到達させるためには異なった誌面レイアウトがあっていいと主張したとおもう。結局、ロイス氏はケーニグ氏とともに退社してパパート・ケーニグ・ロイス(PKL)社を設立した。これから数点、ロイス氏のアートディレクションによるVWステーション・ワゴンの数少ない作品をお目にかける。これはたしかカラーだったと記憶している。黒褐色のインディアン像が目立っていたが、現物は行方不明。

おすすめ】この広告をカラーでご覧になりたい時は[ここをクリック]、現われたサイトの左端のオレンジ枠から[STATION WAGON]→[year]→「1960」をお選びになってください。



現在お乗りなっているステーション・ワゴンで、3mもの背丈のインディアン像が運べますか?
各人が席についたままのカード・テーブルが持っていけますか?
赤ちゃん象は?
フォルクスワーゲン・ステーション・ワゴンなら軽々とやれます。しかも、VWセダンよりもほんの数インチ長いだけでも在来のステーション・ワゴンより、たっぷり120cmも短いのです。その上、数百ドルも節約できます。





Can you take a ten-feet Indian in your present station wagon?
Can you take a playpen?
Can you take a baby elephant?
You can in a Volkswagen Station Wagon. Yet it is only a few inches longer than the VW Sedan, a good four feet shorter than convention station wagon---and costs hundreds of dollar les.


たしかに、他のワゴンは採用していないサン・ルーフが売りだったわけだから、このヴィジュアルで正解なんだが、なにしろヘッドラインもなしなんで、クローン氏としたら、ないがしろにされたような気がしたことでしょうね。


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>>ヘルムート・クローン氏とのインタビュー「レイアウトを語る」(123)