創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(229)『メリー・ウェルズ物語』(日本経済新聞社 1972年刊)(4)

第2章 積み木とジェット機--- 

1966年4月、ゴーサム・ホテル---。

マンハッタンの中心---五番街に面したゴーサム・ホテルの4部屋に「ウェルズ・リッチ・グリーン(WRG)広告代理店」という標札がかかった。
この代理店は、その社名が示すように3人の共同設立者の存在を暗示するとともに「新鮮なアイデアの泉」という意味にもとれた。
そう、たしかに「新鮮なアイデアの泉」であった。この代理店からはすばらしいアイデアの広告が、つぎつぎと湧きでたのだから(しかし、それはもっと後の話だ)。
開業の日---。まず、ホテルの電話交換嬢たちが悲鳴をあげた。かかってくる電話、かかってくる電話に対して「お気の毒ですがWRGの電話は全部ふさがっております」と断らなければならなかったからである。それでも電話ととどまることなくかかってきた。
ホテルのベル・ボーイも大変だった。「WRGは何号室かね?」と聞く客があとを絶たなかったからである。
ブラニフ航空は、開業した翌日---5日にWRGの最初のクライアントとなった。
その翌日、WRGを訪問してきた男女があった。
男のほうはチャールズ・モスという名の、好きな演劇をあきらめて広告のコピーライターになった青年であった。彼はぼくにこう語った。
「私は一生の仕事として芝居をやりたかったんですが、いわゆる生計を立ていくということになると、その仕事はいささか危険が大きすぎると感じていたのです。そこで私は、芝居以外のものに自己を表現するという満足感を私に与えてくれるものを探そうと決意したのです。そして、広告がそれだと思ったのです。これが、私がコピーライターとしての仕事を探し始めるきっかけでした」
>>チャールズ・モス氏とのインタヴュー(1)


彼は、メリーたちがいたジャック・ティンカー&パートナーズ社で働いていたが、メリーたちが自分たちの広告代理店を開いたと聞いてかけつけてきたのである(もっとも、かけつけたといっても、ジャック・ティンカー社からWRG社が陣取るホテルまでし1ブロックしか離れていず、ゆっくり歩いても2,3分であった)。
メリーは、モス青年の才能を評価していたので、即座に採用した。こうしてモスは、設立者3人を除くとWRGの最初の社員になった。なぜメリーがモスを買っていたかというと、メリーも少女期を演劇をやってすごしたからである。
彼女は、広告制作という表現技術をうまくやりこなすには、演劇の素養が大きくものをいうと信じていた。メリーを5歳の時から演劇学校へ通わせたのは、母親のウォルドマー・バイオレット・バーグであった(この姓からもわかるように、メリーはスカンジナビア系の米国人である)。
もう一人の訪問者は、グレイス・フェルドマン夫人であった。
メリーは、モスの時以上に喜んだ。グレイスは、ジャック・ティンカー社でのメリーの秘書だった。
ビジネスマンにとって、有能な秘書を持っているといないとでは、仕事の効率が大きく異なる。
そして、グレイスは有能な秘書であった。どんな時にも感情をたかぶらにせないで冷静にことを処理することができる女性であった。しかも、黒い大きな目にほほえみを絶やさない。ときどき興奮するメリーにとってはこの上ない仕事上の伴侶であった。彼女も即座に決まった。
チャールズとグレイスにつづいて、ジャック・ティンカー社を逃げ出してきた人たちのうちから結局11人もの男女が採用された。

ニュースをつくれ

転職してきたチャールズ・モスは、さっそくブラニフ航空の仕事にとりかかった。
それは単に広告をつくるということを意味しなかった。
スチュワーデスの制服のデザイン再変更からはじまり、またもやエミリオ・プッチが起用された。
プッチはそのころようやく流行しはじめていたカラフルな模様のついたパンティ・ホースを主軸にしたシステムを考えだした。
右下の写真がそれである。
広告はこういっている。

空中ストリップ第2景

ブラニフ航空が「空中ストリップ第1景をご紹介したとき、直感的な理解力のある方々は、 これこそ長距離飛行の退屈しのぎの名案とお認めくださいました。
私たちの路線はどんどん伸びており、グリーンランドサイゴンほど気候が違う土地へ飛んでいることに気づきました。
ということは、私たちのモデルは、もっと脱ぐ必要があったというわけ---。
そこで私たちは、エミリオ・プッチを再起用して、いままでにないものをつくってほしいと依頼しました。
彼はうまくやりました。
「空中ストリップ第2景」には、おなじみのお気に入りのと一緒に、最新のものも登場します。毛皮のコート、プリントの下着、タイツ、そしてダービー帽。
「第1景」がお好きだった方なら、 これもお気に召しますよ。

chuukyuuお断り】模様入りの目もくらむような色彩タイツとダービー帽は、TV−CMでご覧ください。雑誌広告の現物がどこかへ行ってしまったのです。

→上掲の写真は、Glyph.の柳本浩市氏にご協力いただき「BRANIFF AIRLINE EXPO VISUAL BOOK」より転載させていただきました。ありがとうございます。


1年前に、大金をかけて奇妙な制服を採用したばかりなのに、なぜ、またもや新デザインを追加したのであろう?
航空会社には話題が少なすぎる。路線が延びたとか、増便されたとかいったことがニュースでしかない。もちろん、飛行機事故とかハイジャックなどもニュースになるが、航空会社にとってはマイナスしかもたらさない。ニュースのない企業は大衆からわすれられてしまう。スチュワーデスの制服の変更ぐらいのことでニュースがつくれたら、そのも費用はたいしたことはない---と。
ブラニフ航空が中規模の航空会社で、スチュワーデス全員の制服をとりかえても、パン・アメリカン航空ほど費用がかからないことも幸いした。同時に、メリーの会社も話題をつくりつづけなければならなかった。


続く >>


次の旅行地

1平方フィート当りの秘宝物の埋蔵量は、ペルーが世界で一番です。
リマ周辺の山を発掘してみると、文字どおり昔の純粋なインディアンの生活がそのまま姿を現わすのです。
ここには、モチカ族をチム族が、チム族をインカ族が、そしてインカ族をスペインが征服した歴史があるのです。
大きな美術館や金持ちの収集家の邸宅をいっぱいにするほど、彼らの美術的な手工品が次つぎと掘り出されているのです。
町の小さな店の飾り棚にしても同様です。
こうして姿を現わした骨董品には、きわめて高価なものから、値投などどうでもいいようなものまでいろいろあります。また、しば
しば正札のつけ違いから掘り出しもののチャンスにも恵まれます。
ですから、金のふちどりのついた植民地時代の鏡(約40ドル)や手づくりのリャマの毛で織った敷物(約60ドル)や、すてきな銀の針(約120ドル)などをおみやげに買って帰らざるをえないのです。
ただし、ペルーでこういうバーゲンをさがし出すのはなかなか骨です。
まだ素朴な姿を残しているうちに行っていただくよう計画をたて、どこを見たらいいかご案内いたしましょう。
詳細は、テキサス州ダラス、イクスチェンジ・パーク、ブラニフ・インターナショナルにご一報くださるか、お近くの旅行代理店までお越しください。




The next place.

Peru has more buried treasure per square foot than any other country in the world.
Entire Indian villages literally scratch out a living by digging the past out of the mountains around Lima.
Here, the Spanish conquered the Incas, who conquered the Chimu, who conqluered the Mochicas.
Etc., etc., etc.
Their artistic handiwork turns up at a staggering rate, filling the great museums, and the mansions of wealthy private collectors.
As well as the shelves of the little shops downtown.
Antiques range from the priceless to "priced-for-a-quick-sale". And there's always an outside chance that someone might mix up the price tags by mistake.
But even discounting such a juicy possibility, you're bound to come home with a gold framed Colonial mirror (about $40) or a handmade llama rug (about $60) or a magnificent silver bowl (about $120).
The search for a bargain is sti!! one of the highest art forms in Peru.
Providing you go before things get too organized. And you know where to look.
Since we fly to Peru more than any other airline, we'll be only too happy to give you directions. lust write for our free booklet. Braniff International, Exchange Park,.Dalas, Texas 75235.
Or see your travel agent.

Braniff
International's
Peru.