(213) ボブ・ゲイジについて。そしてボブ・ゲイジとの会話(5)
『CA(Communication Arts)』誌 1966年 Vol.2より
今日の主役の漫画家サクソン氏といえば、作品には『ニューヨーカー』誌で毎号のようにお目にかかり、人生のおかしな瞬間を捉えた絵で微苦笑させてくれていました。そのサクソン氏をアメリカン航空のサービスぶりを告知するために起用したなんて、さすが、ゲイジ氏の慧眼です。もちろん、その前に、コピーライターのジャック・ディロン氏とのセッションがあってのこと。ディロン氏は趣味で小説を書いていたという人なので、こういうぴりっと皮肉を効かせた(?)コピーもさらっと書くんですね。
ゲイジのイラスト観
「イラストレーションと写真のせめぎあいには、どちらの味方もしたくありません。広告は信じ得るものでなければなりません。そして読み手にそれが伝わらなければなりません。これを成し遂げることは、イラストでも写真でもできます。最近のサクソンのイラストを使ったアメリカン航空のキャンペーンがいい例です」
「私たちは、一つにまとめたい個々の要素をたくさん持っていました。サクソンがそれを見事にやってのけてくれました。
ジャック・ディロン(写真)のコピーに、サクソンはコンセプトの発展に莫大な力となっています。そしてジャックには、サクソンの絵にまさにぴったりのキャプションをつくる余裕があります」
「サクソンは、一緒に仕事をするのにとても刺激になる人だと思います。チャックは、私たちが彼を最高な仕事ができるように扱ってくれる---アイデアが設定され、作り始めると、もう肩ごしにのぞくようなことはしない---と言っています」
「サクソンの仕事ぶりは、よくハンディにもなります。サクソンは夜仕事をして、昼は寝ているのがすきなのです。ですから、私たちが急な仕事をしなければならない時でも、夕方に呼びだしてベッドから出すのです。そうすると、一ト晩中やって、翌朝寝る前に仕上がった絵を渡してくれのす」
サクソンの語るゲイジ
夕方6時15分にゲイジの部屋で見つけたサクソンに会話に加わってもらった。
「ポブ・ゲイジを正しく評価するのに2、3日かかりましたよ。ゲイジは、たへんにくつろいだ、気のおけない、シンプルな人なので、その即時理解力と計算器のように正確な選択が、仕事をやり易く、最高の仕事ができるようにしているのだということが、当初、ぼくにはのみ込めなかったものですから。まあ、当座は、何も問題がなかったので、物事は順調にいくように思っていましたしね。でも、しばらくして、彼のすばらしさが、十分にのみ込めてきました」
サクソン氏のイラストレーションを使ったアメリカン航空のシリーズ
わが社のスチュワーデスは盗まれっぱなしです。
わが社のほとんどのスチュワーデスは、2年とたたないうちに、辞めて、ほかの男性のもとに走って行ってしまうのです。
驚くほうがどうかしているんですね、きっと。だって、5時間半もほほえみを浮かべていられる若い女性なんて、そうザラにはいませんからね。
申し上げるまでもないことですが、124人もの人たちが夕食に何を食べたがっているかを覚えていられる細君をみつけることもね(その上、お望みとあれば、気象現況やジェット機のことについてもお話しできるんですよ、彼女は---)。
でも、私たちが問題にしているのは、 こういったことではありません。問題はどういう女性を私たちが雇っているか、です。美人というだけではダメなんです。いいえ、それが重要じゃないと申し上げるわけじゃありませんよ。ただ美人というだけでは十分じゃないってことなんです。
つまり、私たちが求めているのは、そう、親しみのある女性です。
あなたが、彼女たちはすべての乗客に親しくしすぎるとおっしゃるのはムリといものです。
ご自分だけ---をお望みなら、スチュワーデス養成所時代の彼女をおさらいになるんですね。
People keep stealing our stewardesses.
Within 2 years, most of our stewardesses will leave us for other men.
This isn't surprising. A girl who can smile for 5 hours and half is hard to find.
Not to mention a wife who can remember what 124 people want for dinner. (And tell you all about meteorology and jets, if that's what you're looking for in a woman.)
But these things aren't what brought on our problem. It's the kind of girl we hire. Being beautiful isn't enough. We don't mean it isn't important. We iust mean it isn't enough.
So if there's one thing we look for, it's girls who like people.
And you can't do that and then tell them not to like people too much.
All you can do is put a new wing on your stewardess college to keep up with the demand.
「アリスじゃないじゃないか!」
そう、彼女はアリスじゃありません。アリスは辞めたんです。
彼女が同乗する路線の〔ご常連の方々に〕とって、彼女がいないことが、どんなに悲しいことか---ご同情申し上げます。
アリスときたら、一度ご同乗なさったあなたのお顔を、次にお乗りなるまで覚えていたんですからね。三度目はお名前までも---。
こうなれば、サッカリン入りのコーヒーを出されても、あなたはご満足なさったわけです。
アリスはどうしたのか、ですって?
お知りになりたい? 彼女は、お客さまのひとりと結婚したんです。
じつのところ、私たちが養成したスチュワーデスのほとんどが、お客さまと結婚してしまうのですよ。
(わが社のスチュワーデスときたら、2年ともたないんですからね)。
アリス嬢がいないとしても、私たちをそんなふうに見ないでください。
(ドリーか、ノーラか「可愛い赤毛のナントカちゃん」がいなかったとしても)。
彼女たちをどんどん引っこ抜いておいて、一方では飛行機の中で出会いたいなんて、ちょっと---ね。
"You're not Alice."
No, that isn't Alice.
Alice isn't with us anymore.
And we understand the "regulars" on her night aren't very happy about it.
After you flew with Alice once, she remembered your face the next time.
And your name the next time.
And that you liked your coffee with saceharin after that.
And what happened to Alice?
Well, if you must know, one of you married her.
In fact, one or another of you has married practically every stewardess we've ever had.
(It' got to the point now where we can't keep girls more than 2 years.)
So don't look at us that way if you happen to miss Alice.
(Or Doreen or Nora or "that little Miss Whoozis with the red hair.")
You can't go on removing these girls from the premises and still expect tofind them on the airplane.
【chuukyuu付言】コピーを担当したジャック・ディロン氏とのインタヴュー
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