創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(201)チャック・コルイ氏とのインタヴュー(6)


チャック・コルイ氏
Doyle Dane Bernbach Inc.
Vice President, Copy Group Supervisor


『劇的なコピーライター』誠文堂新光社 1971.3.10 絶版 からそのまま転載)。


[6分間の道草]というタイトルは、5分よりもほんのちょっぴりだけ長く、10分もの長時間を要しないで、1日に瞬時、日常から離れた目で別の人の人生を覗いてみる---それが、自分の人生観や仕事観、あるいは世界観に思いもかけず資することもあのではないか---おのが越し方をふりかえってみて、おこがましくも、つけたタイトルです。道草は、幾つになっても楽しいもの。実は、道草ばかりやってきました。



創造哲学---事実をつかみ相手の立場に身を置いて


chuukyuu 「あなたのコピーの方法論とか、クリエイティブ・フィロソフィについて」


コルイ「あるかどうかわかりませんよ。たぶんあるでしょうけど、それを明らかにしてくれる人が必要のようです。
自分以外の人間の仕事ぶりや間違いを指摘するほうが簡単ですからね。それが本人ですと、自分自身の問題であまり目につかない点でも、それを初めて見た人にははっきりとわかるのですから---。欠点があるとしても、それが身についてしまっているご当人には見えないことが多く、ほかの人から見れば明らかに欠点は欠点ですからね。
割り当てられた仕事がどんなものであろうとも、私がいつも注意しているのは、事実をしっかりととらえ、話し相手である人びとにとって大切なものをとり出し、自分をその相手の立場におき、扱っている商品をどんな場合に必要とするかを考えてみて、それをどうやって提示したらいちばんよいかを知ることです。


また、競争商品に比べていくらか長所を持った商品の広告をつくるような場合がよくありますね。ほかの商品が持っていないこっちの長所だけを押せば十分だとお考えになるかもしせませんが、それは間違いだと思います。
私はいつも考えるのですが、そういった時には手を加えてやらなくてはならないこともあるのです。つまり、それが人びとにとって大切なものであることと示してあげなければならないのです。デカデカとそれをまくし立てるばかりがいいというのじゃなくって、時にはこっそりと耳打ちにするように、時には小さな刺激を与えるといったように---。
ここがむずかしいのです。その商品にたいして感情を持たなければならないのです」


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くしゅっ。 Squoosh.


パンの新鮮さ、柔らかさを5割も長持ちさせるオリンの新しいコーティングされたセロファンにご注目。


クーシュッです(軽く押してみて---と、商品名とかけてるのな?)。出来立ての柔らかさと新鮮さでしょ? その新鮮さのほとんどは水気(みずけ)がもたらしているものです。でも、その自然さのもとである水気は、お店へ配達されている途中に逃げだす用意をしています。そうはさせるものですか。
あなたが乾燥のひどい土地に住んでいらしゃったら? あるいは、まとめ買いなさってしばらくは食卓へ出さないとしたら? 新鮮さは早ばやと失われるかもしれませんね。「かもしれない」と言いました。要は包装次第なんです。
とりわけ、新鮮さをそのまま保存したい食パン、ケーキ、そしてその他の食品に関して、オリンは、これまでのセロハンにとってかわる〔まったく新しい〕ラッビング・フィルムを創りだしました。このフィルムは両面にごくごく薄くプラスチックを塗って、水気を逃がさないようにしたのです。
水気がこっそり抜け出すことができないなら、新鮮さも逃げることはできないのです。
「くしゅっ Squoosh」は、水気を閉じ込めたままにします。食料品店からやパン屋さんで。そこを出てからも。


"LIFE" 1963.06.21Google Books


前のオリン・チーム---ロバート・ゲイジ氏(アート担当)とフィリス・ロビンソン夫人(コピー担当)による作品の一例です。



猫を箱から出したのは、だれか?


今までの段ボール箱の内面は、磨き砂のようなものでした。無数の小さなツメが、入れたものをひっかきました。冷蔵庫や家具は、ときとして擦り傷をつけられて届けられ、お客さまを困らせたものです。
・オリンは、内容物に傷をつけないコンテナーをつくりまし。運搬中にガタガタゆれても決して傷がつきません。「スカッフマスター」と呼ばれます。冷蔵庫の塗装面をいためず、家具の表面を守ります。ホイール・キャップも傷なしで送れます。ついに猫を箱から追い出したのです。この箱は何にでも使えます。
・オリンのパッケージ事業部からのもうひとつのクリエイティブな問題解決です。


"LIFE" 1961.05.05


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