創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(200)チャック・コルイ氏とのインタヴュー(5)


チャック・コルイ氏
Doyle Dane Bernbach Inc.
Vice President, Copy Group Supervisor




『劇的なコピーライター』誠文堂新光社 ブレーンシリーズ 1971.3.10 絶版 からそのまま転載)。
公共奉仕広告(public service ad)」から一歩進んだ「抗議広告(protest ad)」の実際を示して、今後のコピーライターのあるべき姿を教えてくれた点で、本書の2番手においた。
オリン企業広告(corporate ad)でも、社会教育的な情報を中心にすえたコピーで、ライターの思想・社会とのかかわりあいといったものを暗示している。



DDBがコピーライターを新しく採用する時


chuukyuu 「コピーライターを採用する際には、DDBのほうから誘うわけですか? それとも、ほかの代理店で働いているライターのほうから希望してくるのですか? どちらのケースが多いでしょうか?」


コルイ 「確かに私たちは、ほかの代理店で働いている人に誘いをかけます。少なくとも、私がここへやってきたばかりのころに、そういうことがありました。
あのころスーパバイザーたちが、雑誌や新聞ですばらしい広告を見つけ出して、その広告を書いた人を見つけ出し、DDBに誘ってみようと言っていたのを思いだします。
けれども、多くの場合、入れてくれといってやってくるんですよ。でも不幸なことに、そういうふうにしてたくさんの人がやってきても、私たちがほんとうに望んでいる人にぶつかるまでに、とても長くかかったり、その時はそれほど必要でもないのにたくさん見つかったりするのです。
しかし、時には、応募してきたライターが格別の才能の持ち主だったりすることがあり、そういう場合には、私たちは彼を受け入れる準備をするのです」


chuukyuuDDBのクリエイティブ・フリーダムに魅かれてやってくると思われるそういう志願者に対して、とくにどんな点を注意して調べるのですか?」


コルイ 「どのスーパパイザーがサンプルを見るかによると思います。ある人はサンプルの冴えたヘッドラインを注意深く調べるでしょうし、別の人はボディ・コピーを、実際、誰もが他人の才能を見抜く能力を持っているわけではありませんしょう。志望者のサンプルを見る場合、その見るのがヘッドラインであろうと、ボディ・コピーであろうと、何であろうと、そのサンプルは人目を引くものでなければなりません。つまり、私が言いたいのは、私の場合、一番重要となるのは、そのライターの考え方です。独創性、新鮮さだけでは十分とは言えません。コピーというものは、良いしっかりした常識の上に立ったものでなくではならないのです。私は、 うまいライターではあっても、貧しい思想の持主である人よりも、むしろ、下手なライターであっても、豊富な思想の持主といっしょに仕事をするはうがいいですね。なぜなら、書き方の上達に手を手を貸すのは、考え方の進歩に手を貸すよりずっと易しいことですから」


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10億人が飢えるかも知れない1976年---
---白人、黒人、黄色人、褐色人は、それぞれどれほどの数? 


統計学者は 10年間で10億、---100万人じゃなく---10億もの人が飢餓で死ぬかもしれないと言っています。
まあ、経験的にいって、食料不足は有色人種の間で起きると盲目的に信じられいます。 しかしですね、それは結局、私たちのすべてに影響することでもあります。
将来、何が来るかを知っていれば、私たちはそれを防ぐためにできるのです。
ほとんどの専門家は、その第一歩は化学肥料を増産することと、それを使う知識を広めることに同意しています。
納得できます。 、第2次世界大戦中、農場生産性を上げる必要があり、オリンは〔アンモ・フォス〕と名づけられた農薬リン酸アンモニウムを開発、小麦、よとうもろこし、大豆など、1エーカーあたりの収穫量を信じられないほど飛躍的に増やすことに成功しまた。
今日の世界規模のより大きな必要性のために、わが社の農事事業部は、〔アンモ・フォス〕と他の高い化学肥料を増産するために、最近、4,500万ドルの拡大計画を完了しました。
もちろん、これが、食糧危機に対処する唯一の方法というものではありません。 しかし、事実はたった今オリンの肥料が、米国の農地1エーカーあたりの生産性を4倍、いやそれ以に高めるのを助けているということです。 さらに、荒地を農地化することも可能なのです。
結局、全世界の平和が危機にひんしているというのに、世界的な飢饉の脅威を無視するのは愚か者のやることでしょう。 そして、いたるところで空腹を満たさなければならない必要があるとき、私たちは、国家的見地から、それを解決しなければならないでしょう。手遅れにならないうちに?


最初のオリン・チーム---ボブ・ゲイジ氏(アートディレクター)とフィリス・ロビンソン夫人(コピーライター)
による別事業部の広告



ズック靴の生徒たちの中から、科学者を発見するのは、だれか?


今日のティーンエイジャーの中にだって、明日の料学者はいるはずです。
しかし、どうやって見つけ出しましょう?


少年たちのひ弱さ、愚鈍さ、悪さ加減をきめつける評論家のお話を聞けば、まさにお手上げというところです。しかし、私たちが年々彼らを育てていることも事実です。もし、私たちのティーンエイジヤーの多くが、もって生まれた頭脳の使い方を知らないのだとしたら、それこそ、私たちが少年たちに挑戦しそこない、発奮させそこなっているからだといえましょう。


これは、私たちみんなが担うべき責任です。オリンは、自分のかくれた力を自覚していない優秀な高校生に、当社のプラント・コミュニティの一つで、独特の実験を受けるようにすすめました。


この計画は、教育委員会とともに予備実験されたものです。格別有能な化学の教師が、ルイジアナ州のモンロ一高校へ派遣されました。この、平凡な高校の生徒の中から、彼は30名を選んでんで強制的にではあるけれども興奮的なやり方で、カレッジ程度の化学を教えこみました。


輝き始めた星を見つめるような感じでした。ひとりの生徒に灯がつくと、それが、ひとり、またひとりひろがりました。生徒たちは面倒な化学の教科書をじっくりと進めました。彼らは実験室での魅力ある実験に、もう夢中でした。彼らは生長することのスリルを実感しました。ある生徒は「勉強の仕方がやっとわかった」といい、地方学校の監督は「われわれはレンガを磨いてダイヤモンドをダメにしていたのだ」といいました。


ほかの教師たちもこの結果を見て、自分のクラスにもっと教えはじめ、生徒たちのほうでもそれを希望するようになったのです。突然、学園に新しいヒーローが現われたのです。それは、頭脳です。


翌年、別の30人がこのコースをとりました。今では、60中55人が科学を専攻しようとしています。一流のカレッジや大学が、彼らに門を開いています。すでに彼らは、8万ドルの奨学金を受けています。


つづいて、すぐれた教師たちがさがされました。この計画は化学から物理へひろげられ、モンローからほかのオリンのプラント・コミュニティへひろげられました。どこの地区でもこの計画は成功し、興奮は持続されました。生徒たちは育ち、いかに考えるべきかを体得し、目標はより高められました。400人近くもの生徒がすでにこの計画に参加してきました400人のアインシュタインではなく、本来の学習熱に花を開かせる機会を与えられたすばらしい子供たちです。これが悲観論者に対する、私たちにできる最良の回答です。しかも、オリンはこの考えにパテントをとっていません。


これは、40年前に訳したので、スニーカーなんてしゃれた日本語はまだなかったので、ズック靴のままにしておきました。(笑)


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