創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(150)レン・シローイッツ氏のスピーチ(10)

当時---DDBクリエイティブ・マネージメント・スーパバイザー兼副社長
(1969年退社し、ハーパー・ローゼンフェルド・シローイッツ社の共同経営者)


"My Graphic Concept" Lecture by Leonard Sirowitz in Zurich 1967 Spring
1967年春、チューリッヒでの「マイ・グラフィック・コンセプト」と題するスピーチ。氏の快諾を得てDDBドキュメント』誠文堂新光社 ブレーンブックス 1970.11.10)に翻訳掲載したものの転載。

レン・シローイッツ氏のスピーチ (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)



Mobil のキャンペーン作品例  (5)


追い越しの6つの方法。


他の車を追い越すのは簡単に見えます (病院のベッドの上で考えたのでは、手遅れかも)。
お願いですから、今、考えてください。 そして、以下の、馬鹿みたいなものの一つでもしているなら、二度としないでください。あなたの運を使いきることのないように。


1. 丘とカーブでは、どんなことがあっても追い越しをしてはいけない。 スポーツ感覚だなんてとんでもない。 1マイル先まで見通す能力なんて、持ってるわけはないんだから。
2. いったん追い抜くときめたら、抜くまで止めない。 まるで鉄砲玉みたい。代わりに安全への気遣いなんてゼロ。 対向車線にはみ出していても、図々しく押し通す。
3. 同乗者が2人か3人いると、加速には25%から40%余計に負担がかかるものと見ておく。 まあ、同乗者にショック気分を味あわせるつもりなら、アクセル・ペダルに一撃を加えてみるのもスリル満点かも。
4. あなたが空振りの三振でアウトになろうと、前車はあなたのことなんか知っちゃいない。前車があなたに追い越しさせるのは、あちらさんの都合なんでしょ?
5. よくやる内側追い越し。抜かれた前車のドライバーの恐怖の表情を見る。笑いながら死ぬことができそう。
6. 追い抜かれた車の状態を、揺れ動くバック・ミラーで確かめようなんて思わない。カット・バックは一瞬。 彼のほうが正しい。


もちろん、前車を追い越す馬鹿な方法は、上記の6つにかぎりません。 なにしろ、新しいのが毎日、発明されているんですからね。 だからこそ、この広告を出しているわけです。
あなたが馬鹿な追い越しなんかなさらないで、将来ともに、私たちのガソリンとオイルを試していただきたいのです。
私たちは、私たちの給油所へお立ち寄りになる時のほかは、スムースに走行するスベを習得なさって欲しいと思います。

Mobil  私たちはあなたに生きていていただきたいのです。


現代の標識です。
まさに、混迷の時代へようこそ、です。
高速道路サインって、視力テスト・チャートほどにも有用じゃなく、むしろ罪つくりって感じ。
正しい道からそれないように走るのは、それこそ狂気の沙汰ってもんです。
とにかく、どう見て、どう判断して行きゃといんだか。
時速30マイルまで落として読み取れ、とでもいうんですかね。冗談じゃないですよ。
こんなひどい標識のせいで、何百件の交通事故がおきているか、知れたものじゃあないですよ。
しかも、運転下手をつくっています。

1. 不満をしまっておかないで、白痴的なサインを見たら記録にとって、まず手始めに、州ハイウェイ・コミッショナーへ手紙を送りつけることから始めましょう。理解しやすい英語とはどういうものか、はっきりいってやりましょう。
2. 彼らの裏をかいてやるんです。旅行に出かける前に地図を調べて、ルートをしっかり把握しましょう。標識が「北ルート22」とあったら、南へ行くべきであるかどうかなんて迷わないように。
3. 道の真ん中で停車しないでください、他の車が混乱をきたします。逆行なんてしないでください。進路を間違えたと気づいても、修正できるところまで走りつづけましょう。そう、モービルのガソリン・スタンドまで。
私たちは、ほとんどの都市やその周辺に、合計で2万6500のカゾリン・スタンドを置いてます。そこへの指示標識は簡単明瞭、すぐにたどれます。道をお尋ねになるなら、どうぞ。毎年、とても多くの人たちがそうなさっているんですよ。ついでにガソリンとオイルをお求めになれますしね。

Mobil  私たちはあなたに生きていていただきたいのです。


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