創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

エイビス02



If you find a
cigarette butt in an
Avid car,complain.
It's for our own good.


We need your help to get ahead.
Avis is only No.2 in rent a cars.So we have to try harder.

Even if it's only a marked-up map in the glove compartment or you waited longer than you felt you should,please don't shrug it off.

Bug us.

Our people will understand. They've been briefed.

They know we can't afford to hand you anything less than a new car like a lively,super-torque Ford.And it's got to be immaculate,inside and out.

Otherwise,make a noise.

A Mr.Meadow of New York did.

He searched and came up with a gum wrapper.




もし、エイビスの車の灰皿にタバコの吸殻があったら、
苦情をお寄せください。
それは、私たち自身のためになることですから。


私たちは、前進するためにあなたのご協力を必要としているのです。
エイビスは、この業界で、まだ、2位でしかありません。だから、私たちは一所懸命にやらなくっちゃ。

グラブ・コンパートメントの中の地図がしるしで汚れていたり、お客さまを長くお待たせするとお感じになったら、すぐ、お申し出ください。

肩をすくめて「しょうがないや」でおすましにならないで、私たちを追いまわしてください。

わが社の関係者はちゃんと承知しています。全員に通達してありますから。(少略)

車が中も外も完全に整備されていなかったら、騒ぎたててください。
ニューヨークのメドウさんは、ガムカスの包み紙を見つけて持ってきてくださいました。


エイビスの新任のタウンゼント社長は、車を洗ったり、タイヤの空気圧を点検したりといった、チェック項目を100近くも掲げたチェック・カードを作成させたのです。


(「一所懸命にやってます」のかけ声だけでなく、それを具体的に、ユーザーの目にも見える形のチェック・リストにして、従業員一人々々にも何をすべきかを示したところが、非凡です。
「頑張ろう!」って一斉に腕を突きあげる団体が、バカに見えてきます)。


一方、コピーライターのP・グリーン(女性)から、昨日の広告のコピーを渡されたアートディレクターのH・クローンは、自分の個室へ帰り、


「美しい写真がなくたって…。大きな写真を使わなくたって…。言ってることが真実なら、人は信じてくれるだろう」
とつぶやきながら、広告のスケッチをはじめていました。


そして、スモール・ピクチャー、ビック・コピーの、型破りの表現フォーマットに到達したのです。
キャンペーンの基本は、「We try harder」一所懸命になっていることを、素直に、簡潔に伝えることなのですから。


DDBの社内の人たちに原稿を見せると、みんな、すごいショックをうけた表情。


自分たちよりも強いものがあることを真正面からとりあげた広告なんて、見たこともなかったからです。


ショックから立ち直ったとき、だれかがつぶやきました。
「見ているうちに、この広告が、だんだん、好きになってきたよ」


ショッキングな主張の広告を前に、DDBで会議がつづけられ、賛否は半々でした。


反対派の主な意見は、
1.もし、客がエイビスの車を借りて、灰皿の中にタバコの吸殻を見つけたら、広告がウソになる。
2.あまりに挑戦的なために、穏健派の客が反発しないか。


時間がたつにつれて、賛成派のほうが、じわじわと増えました。
「だんだん、好きになってきた」のです。
判官びいきも作用したでしょうね。
(「判官びいき」って、英語ではなんというのかは知りません。義経静御前の歴史を知っているはずのない国ですから)。


反対派の1.の意見を解消するために、P・グリーンとH・クローンは、第2弾目の上掲の広告を用意しました。


ここに名前を書かれたメドウ氏は、DDBのコピー部のアドミニストレイター(調整役)です。こういう社内あそびも、DDBのコピーライターの特技です。

エイビスの幹部とDDBのアカウント部(お得意先係)は、2枚の広告をもって全国80都市のディーラーをまわり、全従業員に、


「エイビスは、業界で2位すぎません。だから、もっと一所懸命にやります」


と、声をあわせて誓わせにました。

前記のチェック・カードの第1期注文分は、全米から30万枚に達した。


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