創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(379)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(76)


はるか42年前、原宿のアパートの一室で、この写真を見たときの驚愕は、いまでも覚えています。
というのは、1年間、Tカー社の担当コピー・チーフを勤めたあとでしたから、車の姿はできるだけ美しく見せるのが常識となって身にしみついていたからです。
新車でドロ道---広いアメリカの農場なら、写真のような道も現実にありえましょう。

それを堂々と、しかも力強く(美しく?)表現しています。
ドイツの工場のテスト・ロードの一つまでフォトグラファーを派遣したのでしょうか?
マンハッタン島の郊外の農場にテスト・ロードを撮影用につくったのでしょうか?







どの新車も、少し使われて出てきます。


フォルクスワーゲンにぴったりの道路は、でこぼこ道です。障害がいっぱいの道です。
それをうまく乗り越えるものもあれば、失敗してしまうものもあります。
うまく乗り越えた車は、8,397人の検査員の手で綿密に点検されます(このうち807人が気むずかしい女性検査員です)。
16,000もの異なった点検を受けます。
特別につくられてテスト台の上で、5kmの走行テストを受けます。
すべてのエンジンが使いならされます。
すべてのトランスミッションも。
製造ラインから引き抜かれて行くかぶと虫もたくさんあります。それらの使命は、売られることでなく、テストを受けることです。
漏れないかどうかを確かめるため、水の中を通します。
サビないかどうかを確かめるため、ぬかるみの中、塩の中を通します。
手動ブレーキ、クラッチのテストのため、山を登らせます。
乗り心地のテストのため、強風トンネルを通し、6種類の道路状況の上を走らせます。
トーション・バーがうまくねじれるかどうかを確かめるため、100,000回もねじります。
鍵穴からこわれてこないかどうかを確かめるために、鍵を25,000回も回します。
そういったことが次々に行われるのです。
毎日、200台のフォルクスワーゲンがハネられています。
きびしい検査です。


C/W 
A/D 

"The NEWYORKER" 1968.07.20

The beetle's ads series with "New Yorker's archive (65)




Every new car comes slightly used.


The road to becoming a Volkswagen is a rough one.
The obstacles are many.
Some make it.
some crack.
Those who make it are scrutinized by 8,397 inspectors.(807 of whom are finicky women.)
They're subjected to 16,000 different inspections.
They're driven the equivalent of 3 miles on a special test stand.
Every engine broken in.
Every transmission.
Many bugs are then pluced from the production line. Their sole function in life is to be tested and not to be sold.
We put them through water to make sure they don't leak.
We put them through mud and salt to make sure they wonrust.
They climb hills to test handbrakes and cluches.
Then comes the dreaded wind tunnel and a trip over 8 different road surfaces to check out the ride.
Torsion bars are twisted 100,000 times to make sure they torsion properly.
Keys are turned on 25,000 times to make sure they don't break off in keylocks.


C/W
A/D
"The NEWYORKER" 1968.07.20