創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(71)『かぶと虫の図版100選』テキスト(16)


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広告している製品を茶化すだけの勇気がユーモアを生む

長いコピーがいいか、あるいは短いほうがいいかの論議木下藤吉郎へでもまかせて、ジュリアン・ケーニグ氏のもう一つの功績とも思えるのは、ユーモラスな広告文体の開発であろう。
VWの広告を米国人たちが待ち望み、趣味のよいユーモラスな文章に思わずニヤリとしている事例を、ぼくは幾つも耳にした。
ぼくの文字どおりの拙訳では、その楽しさ、おかしみ、くすぐりは十分には伝わらないが、それでも、ある程度は汲みとっていただけよう。
VWのユーモラスな文体について、かつてVWのアカウント・マネジャーであったエドワード・マクネイリー氏が手紙で、
「人は読まなければ信用しません。信用しなければ買いません。そこで、読ますために、ユーモアの力を借りることもあるのです」
と教えてくれた。


また、ロバート・ファイン副社長との問答で、
問い「印刷媒体の表現とテレビのそれとは、そうとう違うように思いました。テレビのほうがいわゆるエンターテインメンタルな要素が多く使われていると思うのですが---」
ファイン「もちろん、メディア自体、ぜんぜん性質が違うものですから---。たとえば、ユーモラスなものも、印刷媒体だと、テレビに比べれば時間をかけて見ることができるわけですから、直接的に行くテレビに反して、より内在的な表現ができます」
まあ、説明の言葉は違っても、どちらも、ユーモラスなものの言い方の必要性を強調していることには変わりはない。
ユーモラスなものの言い方---といっても、単なるジョークやウィットを広告の中にちりばめればよい---というのではない。自分が今広告している製品を茶化したり、皮肉ったりするだけの勇気がなければできない。

●これは、『オートモティブ』誌に掲載されたB to B広告の1例です。

前の1台がもたらす利潤は、後ろの2台と同じです。

とても簡単な計算です。
並みの国産車は、ほぼ$3,073、並みのVWは$1,803で売られています。
けれども、並みの国産車ディーラーは並みのVWディーラーが得る利潤の半分しか得ていません。
もちろん、VWはビック3の中の1社の年間販売台数の足元にも及ばない---という反論も成り立ちます。
そのとおりです。
けれども、平均して、私たちのディーラーは、他のどの車のディーラーよりも多くの車を売っているのです。
そして、あなたに関するかぎり、それが現実のソロバン勘定になるわけ。
そこのところをもつと詳しくお知りになりたければ、ニュージャージー州、イングルウッド・クリフスにある私たちのディーラー開発部へお電話ください。番号は201(567)7600です。物事を正しく始めるために、電話料金は私どもにつけてください。




The profit on the one in front is the same as the profit on the two in back.

It's all very simple.
The average domestic car sell for around $3,073 and the average VW sells around $1,808.
But the average domestic dealer makes only half as much profit as the average VW dealer.
Now, of course, you could argue that VW doesn't sell nearly as much cars a year as any of
the Big Three.
But our dealers do sell, on the average, more cars than anybody else's dealers.
And that's what really count as far as y6ou're concerned.
If all this sounds like you should find out more, call our Dealer Development Department in Englewood Cliffs, New Jersey at 201-567-7600. And to start things off right, please re-verse the charges.


>>(17)に続く。