1970年3月20日、フォルクスワーゲン・ビートルに関する2冊目の編著書の新書版『かぶと虫の図版100選』をブレーン・ブックスから上梓しました。そのテキスト部分の転載です。
広告している製品を茶化すだけの勇気がユーモアを生む(つづき)
たとえば、「フォルクスワーゲンは不格好でしようか？」という見出しの広告がある。1960年の初めごろ---つまり、DDBによるVWビートルのキャンペーンがはじまったて1年もたたない時期に掲載された。
ボデイ・コピーを読むと、当時、米国でのVWビートルの外観に対する世間一般の表現は「ししっ鼻」であったらしいことがわかる。
DDBのVWチームは、その風評を逆手にとり、自分から「不恰好 homely」と先制攻撃をしかけた。
さして、不恰好に見えるのは最初のうちで、「アバタもエクボ、乗っているうちに好ましく見えてくる」と、やんわり、口説いている。
いや、VWビートル・オーナーにならない人には「不恰好であろうが、醜悪uglyであろうが、ししっ鼻であろうが、かぶと虫であろうが、なんとでも言わせておけ。
話題になるだけ、評判になるだけ、そのうち、好きになってくれよう。無視がいちばん痛い」
そんな気分だったのではないかと推察できるほど、腹をすえた広告である。
フォルクスワーゲンは不格好でしょうか？フォルクスゲンは内部からデザインを始めました。
どの線も機能が生みだした［結果］です。ししっ鼻は風の抵抗を少なくしています。車体も内部の働きを考えてつくられています。出っばるものはなにもありません。
ある英国人はフォルクスワーゲンのことをこういいました「驚くべき簡素なデザイン」。
ある米国のオーナーで、違ったことをいう人もあります。「どうも、だんだん印象が変わってくるんですよ。初めは、いままで見たこともない、ぶざまなヤツだと思う。だがすぐ、その形が好もしくなる。しばらく経つとほかのくるまがみんなおかしく見えてくる」
VWは古さなんて気にしません。1950年と'61年型とをきちんと見分けるのはむずかしいですね。外形を変えるということは、オーナーに対して異端の罪を犯すことになります（だれも卵の完全な形を変えようとはしないでしょう？）。
でも、私たちは目に見えないところでだんだんに変えています。たとえばアンチ・スウエイ・バーはカーブでの揺れをなくしくした。1950年以来、こんな改良は無数にあります。でも基本的デザインには一切なし。
VWは不恰好でしようか？ あなたの見かた次第です（それから、親しんだ期間によりますね）。
Do you think the Volkswagen is homely?
The Volkswagen was designed from the inside out.
Every line is a result of function. The snub nose cut down wind resistance. The bodylines hug the interior workings. Nothing protrudes.
One Briton called the Volkswagen "a marvelous economy of design."
An American owner put it differently. It's funny," he said, "How she grows on you. At first you think she's the homeliest thing you ever saw. But pretty soon you get to love her shape. And after awhile, no other car looks right."
The VW defies obsolescence. You can hardly tell the doughty shape of a 1950 model from a '61. To suggest altering it is heresy to owners. (Would you change the perfect form of an egg?)
But we are continually making changes you cannot see. Example: a new anti-sway bar eliminates sway on curves. Over a hundred such changes since 1950, but never in the basic design.
Is the Volkswagen homely? It depends on how you look at it (and how long).
