創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(675)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるソニーのシリーズ(1)


拙編著『繁栄を確約する広告代理店DDB』(誠文堂新光社『ブレーン』別冊 1966.10.01)は本文第1章を[ソニーとDDB]にあてています。
適当に引用しながら、シリーズを構成します。




■1966年5月10日



1966年5月10日午後、東京大手町にある日経ホールにたくさんの広告関係者が集まりました。


予定の時刻よりも少し遅れて、ひとりの老紳士が「ソニー株式会社の盛田昭夫副社長」と紹介されて
壇上にあがりました。
バーンバックさんについて、私がここで喋々と申し上げるべきではないと思いますので、
できるだけ早く退場したいと思います。
私がいろいろなご縁で、数年前にバーンバックさんと知りあってみますと、
バーンバックさんも私どもソニーに、以前から非常に興味をもっておられたといったようなことから、
私どものアメリカにおきます広告、現在はアメリカ以外におきます広告までもお世話になっております」
バーンバックさんを日本へ招待することになったいききつを説明しました。
聴衆の目は、バーンバックさんをさがしていました。


ウィリアム・バーンバック(William Bernbach)--- わずか17年間のうちにゼロから始めた
自分自身の広告代理店を世界10位(1965年末)の代理店にまでのしあげた男。
そして、自らはその代理店、 ドイル・デーン・バーンバック(Doyle Dane Bernbach)社の
社長兼クリエイティブ・ディレクター。このとき52歳。アメリカの広告業界の代名詞マジソン街で
「広告弾丸」の名で呼ばれる白髪のその人は、小柄な体を地味なス一ツで包み、体にマイクやら
何やらをつけ、もの慣れた足どりで人びとの前に現われました。



日経ホールでスピーチするバーンバックさん(壇上・左)


DDBが作った広告キャンペーンを紹介・解説したなかで、ソニーについては、次の5点を映写し、
説明をくわえました。(『日経広告手帖』1966.6月号から転載)



小さいものをつくる


DDBとしては、ソニーと取引きするのは非常にうれしかった。
なぜなら、よい製品だからです。
いくつかの作例をお目にかけましょう。


まず、テレビにひっかけたテレフィッシング。


この広告はなんのためにやったかというと、ソニーはつねに偉大な新しいものを開発しつつあることを人びとに知らせるためです。
人びとはきのうつくったものに対してはあまり関心をもちません。
しかし、一歩すすんでいるものだということを報せれば関心をみせます。
ソニーが問題意識をもってつねに意識的にやっている会社だということを報せるために、
「現在ソニーにこの製品はありませんが、この腕テレビはいま研究中です」という広告をやったわけです。


このバッハ・アンド・ロールとなっています。
いま米国で人気のあるロック・アンド・ロールをもじったものです。
バッハ・アンド・ロールということで、老いも若きもこれを楽しんでいるというふうに見せる。
そしてソニーは音の世界においてあらゆる趣味の人を満足させるのだということをみせたわけです。


ソニーは小さなテレビをつくることを専門としています。
そして(当時)一番小さいテレビはこれですが、これを「ウォーキーウォッチー」すなわち、歩きながら眺めるとやったわけです。
ニューヨークで非常に有名になった広告です。
この広告はニューヨークで非常に人気があり、こういう小さなものをつくっている専門会社ソニーのパーソナリティを表したわけです。


【chuukyuu補】「ウォークマン」のネーミングは、これがヒントとなったのかも。「ウォークマン」は、この広告の数年後(1979年)に登場しました


これもニューヨークで非常に有名になった広告です。
ソニーが造っている5インチのテレビを見せて、5インチのテレビが、大きなテレビよりいかに便利かを訴えました。
「ぽんぽんテレビ」と呼ばせて、非常に有名になった。
盛田氏ならびにソニーのみなさんにこのことをご報告することを非常にうれしくおもうのですが、『エンサイクロピーディア』の年度版のなかの、最近のテレビその他の電子工学の発達の傾向というところで、ただ一つ、広告としてしてイラストされています。
それと同時に、ニューヨークのその年の最高の広告に与えられる<黄金の鍵賞>も受賞しました。





すべてのテレビ・セットが
このサイズなら、
TV弁当(ディナー)で
我慢させられることもなくなるでしょう?


テレビってほんとうは、もっと楽しんでしかるべきものですよね。
でもね、わたくしたちは蛾じゃないんですから、夜な夜な、画面の
灯に寄りそうのもどんなものでしょう。
そういえば、昼間っからリビング・ルームの椅子に座りづめって
方もいらっしゃいます。夕食の準備をないがしろにしてまで。
せめてコマーシャルの間の1分間だけでもテレビを消し、反省して
みませんか? もう、おわかりになったでしょう?
テレビが大きすぎるためです。生活空間の中で大きすぎなんです。
無視できないほど、生活に入りこみすぎているんです。
いつだってそこにいて、大きくのさばっています。
無視できないほどのさばさっていませんか?
でも、点(つ)いていないスクリーンが視界に入るのも苦痛でしょう。
5インチのポータブル・ソニーなら解決します。夕食をマッシュ・ポ
テトですますなんてこともなし。
ソニーは把手つきコンソールではありません。重さも8ポンドきり。
オール・トランジスタですから振動にも切れません。非歪性のブラウ
ン管使用。


C/W ボブ・レブンソン Bob Levenson
A/D レン・シローイッツ Len Sirowitz
"The NEWYORKER" 1964.05.02




If all television sets
were this portable,
who'd have to
gulp down TV dinners?


Most of us might enjoy television more if we enjoyed
it a little less.
But night after night we seem to get drawn to the tube
like moths.
Every chair in the living room rs aimed at it. We even
plan dinner around it.
If you stop and think about it for a minute (say, during
a commercial), you'll realize why.
Because its there. Larger than life. Too big to ignore
And always on.
Because it's simply less painful to watch television
than have a blank TV screen watching you・
The Sony 5″ portable finally puts television in its
proper perspective.


It doesn't command your attention until you turn it on.
Even then it doesn't turn your living room into a theatre.
If you must have it in for dinner, you can lust plop it
right next to the mashed potatoes.
The Sony isn't a console with a handle. It weighs only
eight pounds.
All transistors. All installed by hand. No tubes to fall,
no distortion or spasms.


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