創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(660)バーンバックさんとDDB(11)

(承前)


バーンバック------私たちは広告の質によって利益を得て繁栄する
のです。
広告をつくったのは自分たちだといった、ちっぽけな自尊心によって
ではありません。


■クリエイターの欲求を育てる


:今でもコピーを書いていますか?


バーンバック ボデー・コピーは、今は書いていません。
アプローチの仕方を見てやったり、ヘッドラインを書いたりはしてい
ます。
たとえば、今度のDDB自身についての広告のへッドは私が書きました。


しかし、私はだいぶ前に一つの教訓を学んでいます。
さきほど、私が昔バートの部屋に立ち寄った話をしましたね。
あのころ、バートのスタッフの中には、私が部屋にはいってくるのを
いやがる人もいたのです。
私がヘッドなどを手直しするからです。
それで私はだいぶ前からこれはやらないようにしています。
ただ質問だけして、あとはスタッフに任せることにしています。


:時によっては、それはむずかしいことでしょうね?


バーンバック 非常にむずかしいことです。
しかし、今、これだけたくさんのすぐれたクリエイターが広告界にいることを
思うと、結果的にはよかったでしょうね。
彼ら自身の欲求に敏感に反応してやったことがよかったのでしょう。
当然のことですがね。
人間とはそういうものですよ。
彼らの欲求を育ててやらねばなりません。
そうしているうちに、彼らが成長し、いい仕事をしてくれて利益になるのです。


以下、明日
このコンテンツ構成には若手コピーライターの安田慎一さんと菊池小百合さん
プロデューサーの転法輪 篤さんのごのご助力をいただいています。


補足DDBは、1949年6月1日、13人のメンバー、ただ1社のクライアントで
独立しました。
その1社のクライアントは、廉価衣料中心だったオーバックス百貨店です。
1949年の年末に加わったのが、破産寸前であったリビィ・パンでした。
この創業の年、正しくビジネスをしていないからとの理由で、断った依頼
主もあったということです。


バーンバックさんがヘッドラインを書いた自社広告というのは、きのうの
「これをやるか、さもなくば死」、あるいはこちらかも。



「私にすばらしいアイディアがある。
それは真実を告げることです」
N.M.オーバック


ドイル・デーン・バーンバックは22年前、最初のクライアントからこの助言をいただき、
現在も服膺しています。
それは夢のような利点をもった秘密兵器です。

まず第一に、うしろめたさがなくなります。
第二には、従ってラルフ・ネイダーも手が出ません。
第三には、生命をもっている製品なら、真実を告げることが最上の広告手段です。

無論、真実を告げることは必ずしも容易ではありません。
DDBが扱ったクライアント問題のいくつかは、容易そうに見えました。
それでも事実を告げるためには、多大の勇気を必要としました。
当社が現在広告をつくっている車を例にとりましょう。
この車は、当初から、デトロイトに馴れた目には、奇妙な小さな生きものに見えた
ようです。
実際、かぶと虫のように見えました。
そこで、かぶと虫と呼びました。
当社は車を売りました。
また私どもが「ナンバー2」と自称しているレンタ・カー会社。これもまことに
アメリカ的でした。
消費者に強く印象づけるには、たいてい、最大の---最高の---といった
形容詞を使わなければ不可と思われていました。
何かそういうものを---。
私どもは真実を告げることにチャンスを求めました。
当社は車を貸しました。
ローン利用の宣伝をしてはどうかと助言してくれた銀行家もいます。
しかし低利率ローンを宣伝する代わりに、当社は、1400語、2400行の広告を
つくり、ローンだと、払い切れなかったときにどんなことになるか、その不利な点を
はっきり書いたのです。
といっても、だれも読んでくれなければ三枚目のコピーでした。
ですよね?
しかし訴える力のあるコピーは読まれるものです。
これを読んでくれた人びとは、銀行ローンをおびやかしただけでなく、ウワサはウワサを呼び、
このコピーを求める人は10万人にも及びました。


情報も真実の言葉になります。
潜在的消費者に情報を提供することは、宣伝の第一歩といえるでしょう。
これは依然として最も重要な仕事にはいります。
信じてもらう、銘記してもらう、時には楽しんでもらう---これが大事です。
それゆえ、ドイル・デーン・バーンバックでは(この広告も含め)広告宣伝には大いに力を入れています。
広告は「ホット」でも「クール」でもなく、誠実一筋を旨としています。
頁の上では、ありのままの姿をごらんいただいています。
あなたの製品であり、広告なのです。
たいていの方は、宣伝・広告といえば一抹の疑惑の目をもって見るのがふつうですが、
それだけに真実を訴えるのはむずかしいといえるでしょう。
事実、広告は長い間にはイメージ・ダウンさえもたらしうるのです。
私どもも正直いいまして、楽園で商売しているとは夢々考えていません。
世間の目は抜けません。
だから真実を申すのです。


この22年間、当社はこの秘密兵器によって勝利に浴してきました。


"LIFE" 1971.11.19



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